古い靴を履き続けると「膝を壊す」? 知っておきたい靴底の摩耗と不調の症状【医師監修】

古い靴を履き続けると「膝を壊す」? 知っておきたい靴底の摩耗と不調の症状【医師監修】

「サイズ表記の数字だけで選ぶ」「試し履きをしない」「古い靴を使い続ける」——こうした習慣が、足や膝の不調の一因となっている可能性があります。また、市販のインソールへの過信も注意が必要です。靴選びで避けたいポイントと、適切なフィット感を確認するための具体的な方法について、整理してお伝えします。

松繁 治

監修医師:
松繁 治(医師)

経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医

絶対に避けたいNGな靴の選び方——知っておくべき注意点

靴を選ぶ際に、多くの方が無意識のうちにNGな選び方をしていることがあります。このセクションでは、足や膝の健康を守るために避けるべき靴の選び方と、その理由を詳しく解説します。

サイズだけで選ぶ・数字だけを信じるNG習慣

靴を選ぶとき、「自分のサイズは25cmだから25cmを選べばよい」と考える方は少なくありません。しかし、実際には靴のサイズ表記はメーカーや国によって異なるため、表記上の数字だけで選ぶことは避けることが大切です。同じ25cmでも、メーカーによって実際の内寸が数mm単位で異なります。

また、人の足は一日を通じてサイズが変化します。朝よりも夕方のほうが、歩行や立ち仕事による血流の増加でむくみが生じやすく、足のサイズが大きくなることがあります。そのため、朝に靴を試し履きしてちょうどよかった靴が、夕方には窮屈に感じることもあります。靴の試し履きは、夕方や活動後に行うほうが実際の使用状況に近いサイズ感を確認できます。

さらに、左右の足のサイズが同じとは限りません。多くの方に左右差があり、大きいほうの足に合わせて靴を選ぶことが基本とされています。小さいほうの足にはインソールや厚めの靴下で調整する方法も有効です。

ファッション優先・試し履きなしで選ぶNGな購入習慣

見た目のデザインや流行を優先して、実際に履いた感覚を確かめずに靴を購入することは、NGな選び方の代表例です。特にオンラインショッピングで靴を購入する場合、試し履きができないため注意が必要です。

また、デザイン優先で選びがちな靴のなかには、足の形状に合わないものが含まれることがあります。先端が細く尖ったポインテッドトゥの靴は、指の付け根部分を圧迫するため、外反母趾や内反小趾のリスクが高まります。ヒールが極端に高い靴は、前述のとおり膝や腰への負担が増大します。靴を選ぶ際は、デザインの好みと機能性のバランスを意識することが大切です。

試し履きのポイントとして、靴を履いた状態で立ち上がり、少し歩いてみることが挙げられます。座った状態と立った状態では足のアーチの高さや幅が変わるため、立って歩いたときの感触を必ず確認することが望まれます。また、靴の中で最も長い指(親指とは限らず、人差し指が長い方もいます)とつま先の間に5〜10mm程度の余裕があることが、適切なサイズの目安とされています。

古くなった靴を履き続けるNGな習慣

靴は見た目がきれいでも、内部のクッションや構造が劣化していることがあります。インソールや靴底のクッション材は、一般的に使用状況によって異なりますが、歩行用の靴であれば数百〜数千km分の使用でクッション性が低下するとされています。クッション性が失われた靴を履き続けることは、地面からの衝撃が直接足や膝に伝わる状態で歩き続けることを意味します。

また、靴底の偏った摩耗も重要なチェックポイントです。靴底が均一に減っているうちはまだよいですが、特定の部分だけが極端に減っている場合は、歩行バランスが崩れているサインである可能性があります。このような靴を履き続けることは、偏った荷重をさらに助長するため、足や膝の状態を悪化させることが懸念されます。

かかとの偏った摩耗や靴の傾きが目立つ場合は、交換や見直しを検討する目安になります。靴を定期的に点検し、適切な時期に交換することが、長期的な足と膝の健康を守るうえで重要な習慣です。

自己判断でのインソール選択・市販品への過信もNG

足の痛みや疲れを感じたとき、市販のインソールを購入して自己判断で対処しようとする方もいます。市販のインソールにはさまざまな種類があり、一定の効果が期待できるものもありますが、すべての方に適しているわけではありません。足の形状や歩行パターン、症状の原因によって、必要なサポートの種類は異なります。

特に、すでに外反母趾や偏平足、O脚・X脚が進行している方が市販の汎用インソールを使用すると、症状を改善するどころか悪化させてしまう場合もあります。適切なインソールを選ぶためには、整形外科や足の専門外来、理学療法士による足の評価を受けたうえで、必要に応じてオーダーメイドのインソール(足底挿板)を検討することが望まれます。

市販のインソールが悪いというわけではありませんが、「とりあえず入れればよい」という過信は禁物です。自分の足の状態を正しく把握することが、インソール選びの出発点になります。足の痛みや歩行の変化が続く場合は、自己判断で対処を続けるのではなく、医療機関への相談を優先することが大切です。

まとめ

サイズの合わない靴による影響は、足の痛みや変形だけでなく、歩行バランスの乱れや膝関節への負担増加、さらには全身の姿勢や動作にも影響を及ぼす可能性があります。毎日の靴選びは、健康な歩行を長く続けるための重要な習慣です。靴のサイズが合っているかどうか、靴底の摩耗状態はどうか、試し履きをせずに購入していないかなど、今一度見直してみることをおすすめします。足や膝に痛みや違和感を感じている方は、自己判断で対処を続けるのではなく、整形外科や整形外科内の足・膝外来への相談を検討してみてください。靴は毎日使う“健康器具”ともいえる存在です。足に合った一足を選ぶことが、足・膝・腰の健康を守る第一歩になるでしょう。

参考文献

日本整形外科学会「変形性膝関節症」

日本整形外科学会「外反母趾」

国立長寿医療研究センター「ロコモティブシンドローム(ロコモ)をご存知ですか」

厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」

配信元: Medical DOC

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