手のひらや足の裏にたくさん汗をかく・汗の量が多く生活する上で困っていることがあるなど、汗に関する悩みを抱えている人はもしかしたら多汗症かもしれません。
今回は多汗症について特徴や原因を詳しくご紹介します。治療法についても詳しくみていきましょう。
※この記事はメディカルドックにて『「多汗症」とは?治療やチェック方法についても解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
多汗症の原因と治療法

多汗症の原因はなんですか?
交感神経が敏感で神経節が過度な働きをすることにより、異常な発汗をしてしまうことが原因とされています。しかしはっきりと断定した原因は解明されておらず、この働きが起こる要因としては精神的な緊張や脳細胞による異常伝達の可能性が高いです。また、身内に同じ症状がみられるという人が多く、遺伝の可能性もありますが詳しくはいまだわかっていません。
このような原因がわからない生まれつきのものを原発性多汗症といいます。しかし多汗症は原発性のものだけではありません。事故・ケガなど外傷によって手や足の末端神経が損傷した際に発症することもあり、他疾患や薬の副作用によって引き起こされることもあります。
肥満
糖尿病
更年期障害
結核
敗血症
甲状腺機能亢進症
パーキンソン病
他疾患とは上記のようなものが挙げられ、外傷や他の病気によって引き起こされたものを二次性多汗症または続発性多汗症といいます。原発性は幼少期に発症しやすく、継続した症状がみられる人が多いです。二次性は更年期障害などがきっかけになるため、年を重ねてから発症することも稀ではありません。
多汗症が疑われる場合、何科を受診すればよいのでしょうか?
基本的には皮膚科を受診しましょう。手のひら・足の裏・頭・顔など、汗をかきやすいのがどの部位であっても皮膚科で診断してもらえます。
しかし多汗症の発症が他疾患によるものだと分かっている場合は、通院している内科などで相談してください。
更年期障害で汗をかきやすくなったという場合は、婦人科を受診してみましょう。
多汗症の診断方法を教えてください。
まずは問診を行い患者さんにどのような状況で汗をかきやすいのか・どの部分にどの程度汗をかくのかなどを医師が確認していきます。
問診では症状の度合いを確認するHDSS(自覚症状)スコアチェックを使用することが多いです。
1.発汗が気にならない
2.発汗が気になるが我慢できる
3.発汗が気になり生活に支障が出る
4.発汗がかなり気になり生活に常に支障が出る
日常生活でも困るほど汗が出てくるという人は4番にあたり、数字が大きいほど重度といえます。
また、ヨード紙法という手のひらの汗の量を確認する診断方法もあります。紙に開いた手を乗せて色が変わった部分を確認し、色が変わっている部分が多いほど重症という判定です。機器を使用して汗の量を測ることもあり、一定数値より高ければ多汗症という診断になります。糖尿病などの他の疾患によって発症している可能性がある場合は、血液検査を行い診断していきます。
治療法にはどのようなものがありますか?
軽症の場合まずは塩化アルミニウムという塗り薬が処方されます。汗が出やすい部分に塗ると発汗を抑えられますが、効果は薬の濃度にもより個人差も大きいです。濃度が高ければ効果も期待できますが、皮膚の炎症など副作用が出る可能性も高まります。
脇のみの多汗が気になる場合はエクロックゲルという塗り薬での治療法も可能です。外用薬以外の治療として、水の中に手をつけて微電流を流す方法もあります。この方法はイオントフォレーシスといい、15〜20分の通電を行うため週に1回ほどの通院が必要です。また、自律神経を調整する薬を服用することで、改善が見られる場合もあります。その他には神経遮断手術という治療法もあり、手術を行い交感神経が過度に反応しすぎないように施し発汗を抑えます。脇汗が気になる方は、外用薬以外にボトックス注射も1つの治療法です。脇にボトックスを注射しアセチルコリンという成分の活動を抑制します。
また、もう1つの治療法がボツリヌス療法です。発汗がひどくみられる部分にボツリヌス菌が作る毒素を注射することで、神経から出る発汗作用への信号を遮断します。注射量は微量で毒性は非常に弱いため、全身に影響することはありません。簡単で有効的治療法に感じられますが、効果は半年ほどと短く短期間しか得られないため、一時的な発汗を抑える治療法になります。
多汗症の治療に保険は適用されますか?
多汗症に処方される塗り薬エクロックゲルやボトックス注射は保険が適用されます。しかし塩化アルミニウム外用薬の処方は保険が適用されません。塗り薬で軽度の多汗症でも処方してもらえますが自費治療になります。
イオントフォレーシス治療や神経遮断手術も基本的に保険が適用されないため自費での治療になります。ですが重度の多汗症には保険が適用されるため、保険適用になるかどうかは医師に相談してみましょう。
ボツリヌス療法は自費治療で保険適用ではありません。
編集部まとめ

症状や原因について詳しくみてきましたが、生まれつきである人も多く幼少期から汗の悩みを抱えているという人も少なくありません。ご自身が多汗症だと知らない人も多く、隠れ多汗症は数多く存在しているといわれています。ご紹介したセルフチェックを行い、当てはまるようであれば早めに病院を受診しましょう。
予防する方法は今すぐに始められることばかりなので、悪化を防ぐためにも毎日の生活を見直し予防に努めましょう。
参考文献
汗の病気ー多汗症と無汗症ーQ6|皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
質疑応答|公益社団法人 福岡県薬剤師会
汗の病気ー多汗症と無汗症ーQ7|皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)

