
プロフィギュアスケーターとして活躍し、現在はタレントとして幅広く活動する村上佳菜子さん。そんな村上さんが向き合っているのが、多嚢胞性卵巣症候群です。月経不順は体質やストレスのせいだと思われ、深く気にされないことがある一方で、その背景に病気が隠れているケースもあります。そこで今回は、村上さんご自身の体験をもとに診断までの経緯や治療への向き合い方、妊娠への不安などについてお話を伺い、日本産科婦人科学会 産婦人科専門医の稲葉可奈子先生に多嚢胞性卵巣症候群の症状と治療、受診の目安などを一般的な知見から解説していただきます。
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インタビュー:
村上佳菜子(タレント)
1994年11月7日生まれ、愛知県名古屋市出身のプロフィギュアスケーター、タレント。2014年ソチ五輪代表、2010年世界ジュニア選手権優勝などの実績を持つ。2017年の現役引退後は、テレビ番組のMCやコメンテーターなど幅広く活動。現役時代から培った表現力と率直な語り口で、多くの視聴者に親しまれている。

監修医師:
稲葉可奈子(日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医)
京都大学医学部卒業。東京大学大学院にて医学博士号を取得。双子を含む4児の母。産婦人科診療に従事する傍ら、小中学生から大人まで、女性の健康について幅広く相談しやすい環境づくりに取り組んでいる。病気の予防啓発を行うプロジェクトの代表を務めるなど、診療だけでなく、医療情報を分かりやすく伝える活動にも力を入れている。


稲葉先生
村上さんはフィギュアスケート現役時代に何か月経(生理)のことで困ったことはありましたか?
村上さん
当時はそれが普通だと思っていましたが、生理周期が不規則で、1〜2カ月以上空くことや、練習がハードな時期には3カ月〜半年ほど生理が止まることもありました。
稲葉先生
いつごろから症状がありましたか?
村上さん
私は高校2年生の終わりに生理が始まって、それからです。
稲葉先生
当時はすでに練習はハードでしたか?
村上さん
当時はオリンピックを2年後に控えた大切な時期だったので、ハードでした。
稲葉先生
生理不順に加えて、生理前の食欲増加やむくみなどの症状もありましたか?
村上さん
ありました。生理前は食欲が増して、体が少し重くなるだけでもジャンプや演技に影響が出るため、競技生活において大きな負担になっていました。
稲葉先生
生理が不規則だと、いつ来るか予測しづらかったり、大会や練習と重なってしまうかも…とストレスを感じることはありましたか?
村上さん
大会前には生理がいつ来るか来ないかで不安になることもありましたね。
稲葉先生
婦人科で相談し、生理をコントロールするようなことはしていましたか?
村上さん
していませんでした。現役時代は年に一度、強化選手向けの健康診断で産婦人科を受診する機会があり、生理が遅れた際にはホルモン治療やピルの使用について説明を受けることもありました。ただ、私自身は生理が来ないほうが競技しやすいと感じていたこともあり、生理不順についてあまり深く気にしていなかったと思います。
稲葉先生
現役時代は、生理をコントロールせず過ごされていたのですね。
村上さん
生理がいつ来るか分からない不安を抱えながらも、深く向き合わないまま競技生活を送っていました。実際にソチオリンピック代表選考となった全日本選手権では、フリースケーティング直前に生理が来たことに気づきましたが、気にしないように自分に言い聞かせながら滑り切った経験もあります。
稲葉先生
村上さんが多嚢胞性卵巣症候群(以下PCOS)と診断されたのは、いつごろでしたか?
村上さん
検査を受けてPCOSと診断されたのは、競技を引退してからでしたね。PCOSとは、どういった状態なのでしょうか?
稲葉先生
まず、生理とはなにか、からお話すると、排卵(卵巣から卵子がでること)すると、その卵子が受精卵になるかもしれないので、子宮は受精卵が着床しやすいように内膜を厚くふかふかのベッドのように整えます。妊娠が成立しなかった場合には、その内膜がはがれ落ちて体外へ排出されます。これが生理です。
村上さん
ふかふかのベッドと聞くと、分かりやすいですね。
稲葉先生
本来は毎月排卵が起こり、その後に生理が来るサイクルが繰り返されています。しかし、排卵が起こりにくかったり不規則だったりすると、それに伴って生理周期も乱れやすくなります。PCOSは、排卵しにくい体質によって生理不順を起こしやすく、婦人科を受診する原因としてよくみられる疾患のひとつです。
村上さん
最初に診断を受けたときは、とても不安で何か大変な病気なのかと思ってびっくりしました。
稲葉先生
多嚢胞性卵巣症候群という名称は少し怖い印象を与えるものの、決して珍しい病気ではありません。生理のある年代では、女性の約5〜10%に発症する可能性があり、はっきりとは解明されていませんが、体質や環境などさまざまな原因があると考えられています。
村上さん
診断を受け最初に母に相談すると、母もPCOSだったことを知りました。PCOSには遺伝的な要素もあるのでしょうか?
稲葉先生
遺伝的な要因も指摘されていますが、必ず遺伝するわけではなく、遺伝以外にもさまざまな要因が関与していると考えられています。
村上さん
PCOSの診断方法について教えていただけますか?
稲葉先生
PCOSは生理不順に加え、エコー検査で卵巣に小さな卵胞が多くみられること、血液検査でのホルモン異常など、複数の所見を踏まえ、総合的に判断して診断されます。
村上さん
自分では判断しきれませんね。生理不順以外に、何か症状はありますか?
稲葉先生
男性ホルモンの分泌が増えることでニキビができやすくなったり、体毛が濃くなったりすることがあります。また、肥満傾向や血糖値の上昇がみられる場合もありますが、いずれもPCOSの方みなさんにみられるわけではありません。
村上さん
人それぞれ症状は異なるのですね。
稲葉先生
生理周期の乱れ方にも個人差があり、少し不規則になりやすい程度の人もいれば、数カ月単位で生理が来なくなる人もいます。中には、自然にはほとんど生理が来ないケースもあります。また、頻繁にきてしまったりするケースもあります。
村上さん
受診の目安はありますか?
稲葉先生
生理が数日ずれる程度であれば問題ないことも多いです。一方で、生理周期の乱れが大きい場合は、PCOSを含め何らかの原因が関係している可能性があります。生理が頻繁に来るケースも含め、生理不順がある場合は一度婦人科で相談することが大切です。
村上さん
初潮を迎えたばかりのころは、生理周期が不安定になりやすく、自分の状態が正常なのか分かりづらいことも多いですよね。
稲葉先生
そうですね。初潮を迎えたばかりの時期は、生理周期が安定しないことも多く、1〜2カ月ほど間隔が空く場合も珍しくありません。生理不順や生理痛、経血量の多さ、月経前症候群(以下PMS)の症状などによって日常生活に支障がある場合は、我慢せず婦人科に相談することが大切です。
村上さん
PCOSを放置した場合、どのようなリスクがありますか?
稲葉先生
生理が長期間来ない状態が続くことと、将来的な子宮体がんのリスクとの関連が指摘されています。過度に不安になる必要はありませんが、生理が来ない期間が長く続くと、ホルモン状態を整えるまでに時間を要することもあります。
村上さん
頻繁に来る場合はいかがですか?
稲葉先生
不正出血が続く場合は日常生活で困るだけでなく、子宮頸がんなど、ほかの病気が関係している可能性もあります。不正出血が続く場合は放置せずに受診することが大切です。
村上さん
私も自分の体の状態をきちんと把握しておきたいという思いから、定期的に婦人科を受診しています。検査結果を医師に説明してもらうだけでも、安心感につながっていますね。
稲葉先生
そのとおりだと思います。
村上さん
PCOSを公表して以降、同じ悩みを抱える人から多くの声をいただくようになりました。不安を抱える人がいる一方で、治療に向き合いながら妊娠と出産を経験したという前向きな話を聞く機会もあります。大切なのは、自分に合った治療やケアと向き合うことだと実感しました。

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