
出産・育児や仕事など、自分の経験を赤裸々に漫画にしてきた“テレ東の漫画家”こと真船佳奈さん。3月26日に発売された最新作「さよなら!行き当たりばったり人生! お金管理も家事も全部ニガテな主婦の生まれ変わり奮闘記」では、これまでの育児漫画から一転、本作は同世代が抱える「お金」や「家事」の悩みに直結する実用コミックエッセイとなっている。同書では真船さんが直面した「1億3000万円の負債」という衝撃的な将来予測をきっかけに、そこから抜け出すための泥臭い奮闘があった。“人生観が変わる考え方”とそのきっかけについて、真船さんにたっぷりと語ってもらった。
■「1億3000万円の負債」予測から始まった実用書化への道
――今回の作品は、これまでのエピソード主体の漫画とは異なり、情報が主体となった実用書的な内容になっています。このテーマを描こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
真船佳奈(以下、真船):これまで育児漫画を2冊連続で出させていただいて、その前はお仕事漫画を描いてきました。ずっと身の回りのエピソードを描いていたのですが、妊娠出産からイヤイヤ期、そして「正しいお母さんって何ですか」というお母さんとしてのあり方まで描けました。そこである程度、「書き切ったな」という思いもあったんです。
次のテーマをどうしようかと考えたとき、私の読者さんはお母さん世代が多いことに思い至りました。私自身も現在36歳で同世代の読者さんが多い中、その方たちが笑いながら読めて、かつ悩んでいることの役に立つ「実用書系の本」を描いてみたいと思ったんです。
――「同世代に向けて、共通の悩みに関する発信を」と思った形だったのでしょうか。
真船:いえいえそんな高尚な気持ちではなく、もう本当に「人生どうにかしなきゃいけないな」と思って動き始めたのが先ですね。就職してから漫画家としてデビューして、ずっと忙しい日々を送っていて…生活を立て直すことができないままでいました。でも子どもができてから「このままじゃいけないな」というモヤモヤがずっと心のなかにあったんです。
そこで一念発起してファイナンシャルプランナーさんへ相談してみたところ、「このままだと将来的に1億3000万円の負債を抱えるかもしれません」というトンデモないことを言われまして(笑)。あまりのショックで目が覚めまして、そこから家を買うまでにいろいろと行動を起こしていったんです。
なので最初は本にしようと思っていたわけではなく「とにかくこの生活をどうにかしなきゃ」「探し物ばかりしている日々や、将来への不安から解放されたい」という、“とりあえず動いてみた”という日々がありました。
■第三者の介入と“整理の経験値”で変わった発想
――本作ではお金の問題について、ファイナンシャルプランナーの方とのやり取りが印象的です。第三者に介入してもらうことの重要性についてどうお考えですか。
真船:この漫画を読んで「早速ファイナンシャルプランナーさんを予約しました!」という声をいただくことがすごく多くて。「うちもマイナス何億円って言われました」という声も聞きました。やっぱり、お金の問題って第三者が介入した方が圧倒的に解決が早いなという気持ちがあります。
家族間だとどうしてもお金の話って少し遠慮してしまったり、嫌なところにメスを入れなきゃいけなかったりしますよね。「じゃあそっちが管理してよ」となると、お互いが困る部分も出てきます。
だからこそ第三者が客観的な目線で「いくら使っているんですか」と…裁判官じゃないですけどバシバシ“事業仕分け”をしてくれることによって、私たちは夫婦で初めて“ドライに”お金の話ができたという感覚でした。「なんとなくフワッとここまで来ちゃった」という人は、1回プロに話を聞いちゃう方が早いかなと思いますね。
――片付けに関しても、片付け上手だという真船さんのお母さんのアドバイスで家を片付けつつ、書籍を作るにあたって、整理収納コンサルタントの本多さおりさんにも取材されました。片付けも、自分だけでなく第三者の視点は大事なのでしょうか。
真船:大事だと思います。片付けも、本当に1人でやろうとすると「全出し(すべて物を出す)」した段階で力尽きちゃうんですよ。「出したはいいけど、またそのまましまう」みたいな「何やってんだ状態」になってしまう。そこもやっぱり第三者がいると「やらなきゃ」という気持ちになります。あとは、人を家に招くこと自体が「片付けなきゃ」というスイッチを入れやすくしてくれます。
本多さんのお話を聞いてすごく「目から鱗」だったのは、片付けが上手くいかなくなった時こそチャンスだということ。「いつもリビングのソファに洗濯物やバッグを置いちゃう」という悩みがあったら、そのソファの場所は物が置きやすい「一等地」と考える。「そこに棚を置いたら生活しやすさが変わるかもしれないよ」と…プロの発想ってすごいなと思いました。
家のことやお金のことって、なかなか第三者に見せたくないという気持ちがあるかもしれません。でも人が入ることによって一気に解決することはあるので、マッチングサービスなどで整理収納アドバイザーさんやファイナンシャルプランナーさんと出会って、一歩踏み出してみるのはすごく大きな前進になると思います。
――ご自身でも収納の情報をたくさん集められたと思いますが、ネットの情報だけで解決するのは難しかったでしょうか。
真船:最初は「#シンデレラフィット」という言葉で検索して、動画を見まくって情報収集をしていました。でも人によって流儀が違ったり、棚のメーカーが違うと同じ商品でもサイズがぴったりは合わなかったりと、自分には当てはまらない情報もたくさんあったんです。それこそ永遠に動画を見すぎて、情報の迷子になってしまう時期もありました。
たとえば最初は小さな箱をいっぱい買ってきて分類しようとしたんですが、箱ばかり揃ってしまって失敗して。そこからサイズを測って買うようにしたんですが、それでも機能しないものが出てくる。だから最終的には、ネットの情報より整理整頓上手な“母の知恵”が助けてくれたんです。収納は“しっかり測る”ことから、計画性を持つこと…という。
ネットでアイテムを探すにしても、家具や部屋のサイズを図って寸法表をノートにまとめておく。絵にして「ここに棚があるといいな」と収納計画を立ててから動く。そして一気にやろうとせず、「じゃあ今週はキッチン下をやってみよう」と少しずつ見直す…などなど、進化してきました。
だからバチッと思考が「正解」に切り替わったというより、失敗を繰り返しながら“整理の経験値”が上がっていったという方が近いかもしれません。母の知恵を実践して理解していくうちに、少しずつ生活が整っていったんだと思います。
■“隠れ完璧主義”からの脱却と、読者に伝えたいメッセージ
――作中でお母さまから「あなたは完璧主義だから」と言われてショックを受けるシーンがありました。ご自身では気づいていなかった「隠れ完璧主義」について、どのように考えましたか。
真船:そうですね。今まで片付けが1カ所でも上手くいかなくなると、「ああもう嫌だ!全部うまくいかない!全部やり直しだ!」ってなってしまって、結局すべて投げ出してしまうことが多かったんです。それはまさに完璧主義だったからなんですよね。
でも、母のアドバイスで、「きっちり仕分ける場所」と「ゆるっと収納できる場所」の両方を取り入れることで、変わっていくことができました。さらに本多さんに「片付けが上手くいかないと思った時こそチャンスだ」と言われてからは、大きく意識が変わったんです。例えばソファが「一等地」ならそこに物を収納できる棚を置けばいい、という風に発想を転換できるようになりました。
――「本来ここに置くべきじゃないもの」をつい置いてしまう読者へ、ご自身の経験からアドバイスするとしたら何でしょうか。
真船:今まで私も、出窓を収納にしてトイレットペーパーのストックを並べまくって、「遠くから見てもすぐ真船の家だってわかったよ」と指摘されたりしていました。でも今だって出窓ではなくなりましたが、実はまだ靴箱の中にコストコのトイレットペーパーが入っていたりします(笑)。“本来そこに入るべきじゃない場所”に物を置かなければいけない状態というのは、やっぱり「買いすぎ」なんだと思います。
さまざま世間の情勢が変わるので、お得に買ってストックすることもありますよね。でも「物を置くスペースに家賃を払っている状態」「物に囲まれることで本当に必要なものが見つからなくなる状況」に陥ってしまっているのなら、「本当にお得か?」という視点を持ってみてほしいですね。置き場所がなくて別の場所に突っ込んで忘れちゃうというのが、一番もったいない使い方だと思いますから。
――その悪循環から抜け出すためには、どうすればいいのでしょうか。
真船:1回物量を減らして、自分が管理できる量だけにすることです。「私はこれだけの量しか買うことができない・管理できないんだな」というところまで物を減らしてみると、不思議とすごく上手くいくんですよ。
これまでの私は、必要なものが見つからないからまた買うとか、買い忘れるのが面倒だからと買いすぎて賞味期限を切らしてしまうとか、とにかく物を買い込むことによって不安を解消しようとしていました。でもすべての物が多すぎて管理できなくなっていたせいで、「お金」も「家のスペース」も失っていたし、探し物で「時間」も「体力」も失っていたんです。買い物で解決したつもりでいて、逆に苦労を背負い込んでいた状態でした。
でも「自分はこれだけの分量しか管理できないんだ」と自覚して自分の中の「箱」の基準を持った瞬間に、生活がめちゃくちゃ楽になったんです。この基準を持つと、すごく人生が生きやすくなるんだなということを学びました。ぜひ、同じ悩みを持つ方にもオススメしたいです。
――読者に向けて、この本を通して一番伝えたいメッセージをお願いします。
真船:今回、すごく難しい話や真面目な話もしていますが、漫画自体は本当にギャグテイストで描いています。なので、「ハハハ!」と笑いながら読んでいただいて、その中でこの考え方を自分の中に落とし込んでもらうことで、少しでも読者の方の「生きるのが楽になる」お手伝いができればいいなと思っています。

