
【ストーリー】
荒木村重(本木雅弘さん)は暴虐な織田信長のやり方に反発し、籠城作戦を決行する。城は織田軍に囲まれ孤立無援に。城内の血気盛んな家臣たちを抑えながら、村重は妻・千代保(吉高由里子さん)を心の支えに、城と人々を守ろうと苦心していた。
そんなとき、城内である少年が殺される事件が発生。その後も怪事件が次々と起こる。容疑者は、密室と化した城内に居る家臣や身内の誰か。城外は敵軍。城内は裏切り者。
誰もが疑心暗鬼になっていくなか、村重は牢屋に囚われた危険な天才軍師・黒田官兵衛(菅田将暉さん)とともに謎の解決に挑むのだった…。

■黒沢清監督が時代劇に初挑戦!本木雅弘&菅田将暉&吉高由里子ら豪華キャストが集結
監督を務めるのは、役所広司さん主演の『CURE』(1997年)で世界から注目を集め、以後、日本映画界を牽引し続ける巨匠・黒沢清監督。黒沢監督は、第77回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)に輝いた『スパイの妻<劇場版>』(2020年)や、『クリーピー 偽りの隣人』(2016年)など数々の傑作を世に送り出し、世界三大映画祭の常連でもある。
黒沢監督初となる“時代劇”の本作は、第79回カンヌ国際映画祭カンヌ・プレミア部門にも正式出品され、ワールドプレミア(世界初上映)を兼ねた公式上映エンドロールが流れ始めると同時に、場内の観客が総立ちとなり、スタンディングオベーションが巻き起こったという。
そんな黒沢監督と初めてタッグを組んだのは、主演映画『海の沈黙』(2024年)、アイスランド映画『TOUCH/タッチ』(2025年)など幅広い作品で活躍中の本木雅弘さん。本作では、籠城中の有岡城の城主であり、城内で起こる事件の謎に挑む荒木村重を演じている。

織田軍の使者として、謀反を起こした村重を説得しに現れるも、地下牢に幽閉されてしまう危険な天才軍師・黒田官兵衛を演じるのは、菅田将暉さん。
菅田さんは、主演を務めた映画『Cloud クラウド』(2024年)で黒沢監督と初タッグを組んでおり、「前回は、銃撃戦に巻き込まれていく転売屋。次は、どんな役か楽しみにしていたら、黒沢清×時代劇という刺激に、心躍りました」とコメントしている。
個人的に『Cloud クラウド』は大好きな作品で、黒沢監督のダークで美しい世界観に飛び込み、次々と恐ろしい出来事に巻き込まれていく主人公を見事に演じ切った菅田さんがとても素晴らしかった。そして本作では黒田官兵衛役ということで、期待値は爆上がり。本作の村重と官兵衛がどんなふうに絡むのかは、のちほど紹介したいと思う。

村重のよき理解者であり、彼の支えとなる妻・千代保を演じたのは、大河ドラマ『光る君へ』(2024年)で紫式部役を演じ、主演舞台『シャイニングな女たち』(2025年)では⽣きづらい⼥性たちの今を描いた物語に挑戦するなど、幅広い作品で活躍する吉高由里子さん。城内で殺人事件が起きたあと、城と人々を守ろうと奮闘する村重を気遣う千代保を、凛とした佇まいと静かな演技で好演していた。

ほかキャストは、村重の腹心として家臣たちを束ねる荒木久左衛門役に青木崇高さん、若き家臣として村重に忠義を尽くす乾助三郎役に宮舘涼太さん(Snow Man)、事件の目撃者であり狙撃の名手・雑賀下針役に柄本佑さん、村重の家臣で北河原与作役に坂東龍汰さん、村重の隠し刀として陰で暗躍する郡十右衛門役にオダギリジョーさんなど、豪華キャストが集結し物語に深みを与えている。
■村重と官兵衛が4つの事件の謎に迫る展開にワクワクが止まらない!
本作は、織田信長に反旗を翻し、有岡城に籠城した村重が、地下牢に幽閉した織田方の軍師・官兵衛の知恵を借り、城内で次々と起こる怪事件の謎を解いていく物語で、ミステリーとしても心理サスペンスとしても楽しめるところが大きな魅力だ。
季節は冬、人質の少年が誰もいないはずの部屋で殺害された事件から始まった。春には、討ち取った4つの首のどれが敵方の大将か判明しないうちに、そのひとつがおぞましい形相の別の首にすげかえられ、夏には村重から至宝を託された僧侶が何者かによって殺害、至宝は行方知れずに。さらに、秋にも不思議な事件が起きる。
「無駄に人を殺さない」という村重の信念はかっこいいが、怪事件が起きるたびに頼られ、知恵を貸せと言われる官兵衛(地下牢につながれた状態のまま)がちょっと気の毒にも思えた。そんな二人が探偵や刑事のように推理して謎を解明していく展開は、まるでミステリー作品を観ているかのようにおもしろく、緊迫感のある村重と官兵衛のやり取りにワクワクした。
本木さんと菅田さんの演技バトルにも痺れたが、布が少し揺れているだけなのに背筋がゾクッとするようなシーンがあり、黒沢作品らしい独特な怖さが感じられるのも本作の魅力の一つといえる。

■脇を固める宮舘涼太とオダギリジョーの魅力的な芝居に釘付け!
大勢の豪華キャストの中で、個人的に楽しみにしていたのが、“舘様”こと宮舘涼太さんとオダギリジョーさん。Snow Manとしてパフォーマンスする姿や、バラエティ番組などでユニークな一面を見せている印象の強い宮舘さんが、黒沢作品でどんなお芝居をするのか全く想像がつかなかった。
いざ鑑賞してみると、家臣・乾助三郎がいかに村重に忠義を尽くし、彼のことを信頼して敬っているのかが痛いほど伝わり、宮舘さんの細やかな芝居に圧倒された。今後、彼が俳優としてどんな作品にチャレンジするのか楽しみだ。

そしてオダギリさんは、『アカルイミライ』(2003年)でも黒沢監督とタッグを組んでおり、『アカルイミライ』が大好きな筆者は『黒牢城』のキャストにオダギリさんの名前を見つけたとき飛び上がるほどうれしかった。
村重の指示を確実に実行し、絶大な信頼を得ている優秀な郡十右衛門はとてもかっこよく、登場するだけで画面が引き締まるように感じた。久々に時代劇に出演するオダギリさんを見られたこと、そしてそれが大好きな黒沢監督の作品であることがとても幸せで、『黒牢城』は筆者にとって大切な作品となった。
史実を背景に、本格的な謎解きを融合させた傑作ミステリーの本作。ぜひ劇場のスクリーンで鑑賞してもらいたい。



文=奥村百恵
(C)米澤穂信/KADOKAWA (C)2026映画「黒牢城」製作委員会
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