認知症の患者さんが抱える食事の課題と食べ方の工夫、食生活の注意点を解説

認知症の患者さんが抱える食事の課題と食べ方の工夫、食生活の注意点を解説

認知症の患者さんにおすすめのレシピ

認知症の患者さんにおすすめのレシピ

では実際に、認知症の患者さんが栄養をバランスよく摂るためには、どのような料理がよいのでしょうか。
認知機能の維持には、炭水化物、タンパク質、脂質をバランスよく組み合わせ、野菜や果物、豆類、魚、ナッツ、海藻などを取り入れることがよいとされています。あわせて、とろみをつけたりやわらかく調理したりするなど、嚥下機能や体調に応じた調整を意識しておくとよいでしょう。
1日の摂取カロリーは朝昼夕でそれぞれおよそ20%ずつを目安にし、残りは間食や補助食品で補うとバランスがとりやすいとされています。
ここでは、それらを踏まえて、朝食、昼食、夕食、おやつに分けておすすめのレシピを紹介します。

朝食

朝の1日のスタートとして、血糖を安定させ、適度なエネルギーを補給できる内容が適しています。熱すぎず適温の雑炊に鮭や豆腐を加えると、魚のDHAやEPA、大豆のタンパク質をやわらかい形で摂取できます。ベリー類を添えたヨーグルトは、カルシウムと抗酸化物質を同時に補給でき、彩りも豊かです。全粒粉のトーストとゆで卵を組み合わせるのもよいでしょう。やわらかく煮た野菜のスープやフレッシュジュースを添えると、バランスが整いやすくなります。

昼食

活動量の多い時間帯には、タンパク質と炭水化物をしっかり補給できる献立が望まれます。野菜や豆類をたっぷり使ったミネストローネと全粒パンの組み合わせは、ビタミンや食物繊維を効率よく摂取できます。葉物野菜やきのこを加えた煮込みうどんも、やわらかく食べやすい一品です。鶏むね肉のグリルや白身魚のソテーに温野菜を添えれば、良質なたんぱく質とミネラルをバランスよく摂れます。さらに、アーモンドやくるみなどのナッツを副菜やサラダに加えると、不飽和脂肪酸やビタミンEも補給できます。

夕食

夕食は消化のよさと満足感の両立を意識するとよいでしょう。白身魚の蒸し煮や、さばの味噌煮などの青魚料理、豆腐ハンバーグの野菜あんかけなどは、やわらかく栄養価も高い主菜です。副菜には海藻や豆類を使った小鉢を添えると、食物繊維やカルシウムの補給につながります。野菜スープや具だくさんのみそ汁を合わせれば、水分補給と身体を温める効果も期待できます。

おやつ

間食は不足しがちな栄養を補い、食べる楽しみを広げる大切な機会です。フルーツ入りヨーグルトゼリーは、口当たりがよく水分補給にもつながります。豆乳プリンにきな粉を添えると、大豆由来のたんぱく質と香ばしい風味を楽しめます。野菜や果物を使ったフレッシュジュースは、ビタミンや抗酸化成分を手軽に摂れる点で有用です。クラッカーにツナをのせた軽食も、つまみやすく高タンパクで便利です。間食は1日2回に分けてもよく、就寝前に温かいミルクなどを取り入れるのもよいでしょう。小袋入りのナッツを少量添えると、携帯しやすく間食として栄養価を高める工夫の一つです。

参照:
『認知症診療ガイドライン2017』(日本神経学会)
『認知症予防のための食事とは』(公益財団法人長寿科学振興財団健康長寿ネット)
『地中海食の特徴』(公益財団法人長寿科学振興財団健康長寿ネット)
『Dementia and Nutrition』(VA Health Care)
『Eating well: supporting older people with dementia Practical guide』(Caroline Walker Trust)

認知症の方との食事での注意点

認知症の方との食事での注意点

認知症の患者さんと食事をともにするときには、いくつか心がけたい点があります。
本人の意思を尊重しつつ、栄養面にも配慮することで、食事の質を高めることができます。その際に特に意識したいのは、食べることへの促し方、本人の嗜好やニーズへの対応、そして1日の食事量をどう確保するかという点です。ここでは、この3つの視点から押さえておきたいポイントを解説します。

食べることを無理強いしない

認知症の患者さんに強く食事を促すことは、かえって拒否感を強め、心理的な負担にもつながります。無理に食べさせようとするのではなく、いったん切りあげて時間を置き、あらためて提供するほうが受け入れられやすいこともあります。
一食程度であれば抜いても大きな問題はなく、間食や次の食事で補えば十分です。
ただし、複数回続けて摂取量が極端に減る場合は、かかりつけ医や介護スタッフに相談し、身体的な不調が隠れていないか確認することがすすめられます。

ニーズに応えすぎない

認知症では食へのこだわりが強くなることがあり、特定の食品ばかりを求める場合もあります。しかし、過剰な塩分や糖分を含むような偏った食事は糖尿病や心疾患など生活習慣病のリスクを高めることにもつながります。
本人の嗜好や意思を尊重しつつも、野菜・果物・タンパク質源を組み合わせて、できるだけバランスよく摂取できるよう工夫しましょう。

1日の食事量を減らさない

1回の食事で多く食べられなくても、1日全体で必要なエネルギーと栄養を確保できれば問題ありません。むしろ、少量をこまめにとる少量頻回食は認知症の方にも適しており、4〜6回程度に分けて食事や間食を摂る方法が推奨されています。
ヨーグルトや果物、クラッカー、栄養補助食品など食べやすい軽食を取り入れると、無理なくエネルギーを補うことができます。

配信元: Medical DOC

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