
日々、膨大なお客が利用する鉄道の駅。そこは、理不尽な要求や怒りをぶつけてくる「クレーマー」との戦いの場でもある。駅員としての勤務経験を持つ漫画家のザバック(@theback_blog)さんが描いた『先輩駅員の理不尽文句への対処法』が、SNSやブログを中心に、接客業や現場で働く人々から「この手があったか!」「スカッとした」と大きな注目を集めている。
2026年7月現在も、公共交通機関におけるカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が社会的な課題となるなか、今回は駅の窓口で繰り広げられるリアルなトラブル対応を紹介。現場の駅員を精神的な疲弊から守るための意外なライフハックについて、作者のザバックさんへのインタビューを交えてお届けする。
■「特急を停車させろ、新車両を毎年入れろ」 窓口に居座る高齢クレーマーと、先輩駅員が差し出した“切り札”



主人公の駅員・ペン助は、日々の業務のなかでお客から寄せられるさまざまなクレームに頭を悩ませていた。特に多いのが高齢のクレーマーで、「この駅に特急を停車させろ!」「毎年新車両を導入することが顧客の満足度につながるんだ」といった、一駅員の裁量では到底どうにもできない理不尽な要望を持ち込んでくる。
こうしたクレーマーへの対策は、基本的に「相手にしない」「深入りしない」ことが鉄則とされるが、どれだけ聞き流そうとしても、真正面から文句をぶつけられ続ける現場の人間は心身ともに疲れ果ててしまう。
そんなある日、ペン助は先輩のヒツジロウ先輩が窓口で熱心にクレーマー対応をしている場面に遭遇する。先輩は相手の話をじっくりと聞いた後、怒るクレーマーに対して「それではお客様、こちらをどうぞ」と、静かに一枚の紙を差し出した。これを受け取ったクレーマーは、それ以上文句を言うことなくその場を立ち去っていった。
不審に思ったペン助が、先ほど渡した紙の正体について先輩に尋ねると、驚くべき答えが返ってきた。その紙に書かれていたのは、なんと「鉄道会社本社の電話番号」だったのだ。驚くペン助に対し、ヒツジロウ先輩はニヤリと笑いながらこう言い放った。
「直接上層部に伝えたほうが納得するだろうが!駅員に文句言っても会社は変わらんしな」
■本社に直接クレームが入ったら現場の運用は変わる? 元駅員の著者が明かす「全く変わらない」というシビアな現実
一見すると、クレーマーの要望を真摯に受け止めて上層部へ繋いだかのようなヒツジロウ先輩の行動。しかし、この対応によって実際に事態が好転することはあるのだろうか。
著者であるザバックさんに、「お客さんが直接本社に電話したことで、実際に運用の仕組みや事態が変わった経験はあるか」と尋ねると、元駅員ならではの非常にシビアな現実を赤裸々に語ってくれた。
「いえ、全く変わりません。お客様からのクレームがなくなるわけではないです。何よりそういった個人的なクレームで、鉄道会社が電車の運用方法や特急の停車駅を変更するなんて、あり得ないです」
つまり、先輩が本社の番号を渡した本当の狙いは、会社を変えるためではなく、現場の駅員がこれ以上不毛な対応で時間を奪われ、すり減ってしまうのを防ぐための「防衛策」だったのだ。文句の矛先をしかるべき場所に受け流すことで、窓口の業務は円滑に回り、お客側も「上層部に意見を届ける窓口を教えてもらった」と一定の納得感を得ることができる。
取材協力:ザバック(@theback_blog)
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