近年、日本の夏はかつてないほどの猛暑に見舞われ、熱中症は誰にとっても身近な脅威となっています。近年では熱中症による救急搬送者数は全国で9万人に達して年々増えています。これは決して他人事ではなく、正しい知識を持つことが、ご自身や大切なご家族の命を守る第一歩となります。本記事では、熱中症になりやすい人の予防する方法をQ&A形式でわかりやすく解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「熱中症になりやすい人」の特徴はご存知ですか?なりやすい室内の環境も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
高宮 新之介(信州大学医学部附属病院 呼吸器外科)
昭和大学(現・昭和医科大学)卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、日本外科学会専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事する中、医学博士を取得。昭和大学横浜市北部病院(現・昭和医科大学横浜市北部病院)呼吸器センターを経て、現在は信州大学医学部附属病院 呼吸器外科に勤務。肺がんを中心とした呼吸器外科診療、低侵襲手術、肺がん術後QOL、術前心理状態と術後疼痛に関する研究に取り組む。日本外科学会専門医、日本呼吸器外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。
熱中症になりやすい人が予防する方法

熱中症のリスクが高い方が熱中症を予防する方法はありますか?
対策は、大きく分けて4つの柱で考えることができます。第一に、暑さを避けるという基本的な行動です。環境省が公表している暑さ指数(WBGT)を確認し、指数が28以上を示すような厳重警戒レベルの日や時間帯には、不要不急の外出や屋外での激しい運動を中止または延期する判断が求められます。室内においても、ためらわずにエアコンを使用し、室温を28度以下に保つことが命を守る行動につながります。
第二に、こまめな水分・塩分補給です。のどが渇いたと感じる前に、意識的に水分を摂取することが基本です。特に大量の汗をかいた際には、水分だけでなく塩分も同時に失われてしまいます。日本スポーツ協会などは、このような状況下で0.1~0.2%の食塩を含む飲料の摂取を推奨しており、これは水1リットルあたり食塩1~2gに相当します。
市販のスポーツドリンクや経口補水液は、このバランスを考慮して作られているため、効果的に利用するとよいでしょう。
第三に、身体を効率的に冷やす工夫です。外出時には、水で濡らしたタオルや市販の冷却シート、携帯扇風機などを活用し、特に太い血管が通っている首筋や脇の下、足の付け根などを冷やすと体温を下げやすくなります。
第四に、夏本番を迎える前からの暑熱順化です。ウォーキングや入浴などで日常的に軽く汗をかく習慣をつけ、身体を徐々に暑さに慣らしておくことで、本格的な暑さに対する抵抗力を高めることができます。
熱中症を予防するために日々の生活で注意することを教えてください
熱中症の予防は、特別な対策だけでなく、日々の生活習慣のなかに組み込むことで、より効果的になります。具体的には以下のようなことを意識してください。
室温が28度を超えたら迷わずエアコンを使う
通気性が高い薄い長袖や吸汗速乾素材の衣服を選ぶ
寝不足や朝食抜きは避ける(体温調節に必要なエネルギーと水分が不足するため)
アルコールやカフェインの摂り過ぎに注意し、日中はこまめに水分を口にする
熱中症リスクが高い日をあらかじめ把握することはできますか?
環境省の熱中症予防情報サイトや熱中症警戒アラートを利用すると、WBGTの実況値と翌日の予測値をスマートフォンに通知できます。外出・作業の予定を立てる前に確認し、予定の変更や装備の準備を行うとよいでしょう。
編集部まとめ

熱中症は、そのメカニズムを正しく理解し、適切な予防策を講じることで、その多くを防ぐことが可能な災害です。救急搬送者数は増加しておりその脅威は年々深刻化しています。特に、搬送者の半数以上を占める高齢者の方々や、体温調節機能が未熟な子どもは、周囲の注意深いサポートが不可欠です。また、熱中症は炎天下の屋外だけでなく、全体の約4割が発生している住居など、室内でのリスクも高いことを忘れてはなりません。
日々の対策としては、気温だけでなく湿度や輻射熱を考慮した暑さ指数(WBGT)を常に意識し、指数が28を超えるような日は特に警戒が必要です。
のどが渇く前のこまめな水分・塩分補給、ためらわずにエアコンを使用すること、そして夏本番前からウォーキングや入浴で身体を暑さに慣らす暑熱順化を計画的に行うことが、自分と大切な方の命を守るための鍵となります。環境省の熱中症予防情報サイトやLINEのアラートなどを活用し、日々の生活に予防の視点を取り入れ、厳しい夏を乗り切りましょう。
参考文献
日本救急医学会・厚生労働行政推進調査班『熱中症診療ガイドライン2024』
環境省『熱中症環境保健マニュアル2022』
厚生労働省「熱中症を防ぎましょう」リーフレット・関連資料
- 「日射病」を発症するとどんな「症状」が現れる?初期症状や受診の目安となる症状も解説
──────────── - 熱中症は薬で治せない―救急車を呼ぶ「3つの目安」と治療の主役“冷却”:熱中症特集第3回「治療編」
──────────── - 「渇いてから」では遅い―熱中症予防に必須“戦略的補水”のカギは「先回り」:熱中症特集第2回「予防編」
────────────

