「サラセミア」の初期症状をご存じですか? 早期発見のポイントを併せて医師が解説

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サラセミアの治療

サラセミアの治療法は、その重症度によって異なります。軽症型では、特別な治療は必要ありません 。輸血依存性サラセミア(TDT)の患者さんには、定期的な輸血が不可欠です 。輸血の目的は、体内のヘモグロビンレベルを正常に保ち、骨髄の過剰な働きを抑えることで、合併症の予防や成長の促進を図ることです 。定期的な輸血は鉄過剰症を引き起こすため、過剰な鉄分を体外に排出するための「鉄キレート療法」が同時に行われます 。鉄キレート剤には、注射薬のデフェロキサミン、経口薬のデフェラシロクスがあります 。近年、赤血球の成熟を促し輸血量を減らす新規治療薬としてルスパテルセプト(2025年8月現在、本邦において保険適用外)の有効性が報告されています。また、根治を目指す治療法として、同種造血幹細胞移植も行われています 。

サラセミアになりやすい人・予防の方法

サラセミアは遺伝性の疾患であるため、「なりやすい人」という概念はありません 。しかし、地中海沿岸、中東、東南アジア、インド亜大陸などの地域にルーツを持つ人々は、遺伝子変異を持つ保因者(キャリア)の割合が高いことが知られています 。日本でも、在日外国人を含め、これらの地域にルーツを持つ人々が増えており、サラセミア患者数も増加傾向にあります 。予防策ですが、重度のサラセミアの子どもが生まれるのを防ぐため、日本以外の地域では、妊娠を考えているカップルが出産前に遺伝子検査を受けることがあります。これは、カップルがサラセミアの遺伝子を持っているか(保因者であるか)を調べ、子どもに重い病気が遺伝するリスクを事前に知るためのものです。特に、両親ともにサラセミアの保因者である場合、重症型が生まれる可能性があるため、遺伝カウンセリングを受けることが重要です 。これにより、リスクを理解し、適切な家族計画を立てることができます 。



参考文献

Guidelines for the management of non-transfusion-dependent thalassaemia 2nd edition. Published by THALASSAEMIA INTERNATIONAL FEDERATION

Guidelines for the management of transfusion-dependent thalassaemia (NTDT) 5th edition. Published by THALASSAEMIA INTERNATIONAL FEDERATION

Saliba AN, et al: How I treat non-transfusion-dependent β-thalassemia. Blood 2023; 142(11): 949-960

Cappellini MD, et al: Long-term efficacy and safety of luspatercept for the treatment of anaemia in patients with transfusion-dependent β-thalassaemia (BELIEVE): final results from a phase 3 randomised trial. Lancet Haematol 2025; 12(3): e180-e189

和田秀穂「日本におけるサラセミア」臨床血液2021; 62(8): 914-921

配信元: Medical DOC

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