真夏の厳しい暑さのなか、屋外での活動や蒸し暑い室内で過ごしているときに、突然の下痢に襲われた経験はありませんか。多くの方は冷たいものを飲みすぎたかなと軽く考えがちですが、それは単なる体調不良ではなく、身体が発している危険なサイン、すなわち熱中症の症状の一つかもしれません。
この記事では、医療専門家の監修のもと、熱中症で下痢になったときの受診サインと病院での治療法をわかりやすく解説します。ご自身や大切な家族を守るため、正しい知識を身につけ万が一の事態に備えましょう。
※この記事はメディカルドックにて『「熱中症で下痢」になる原因はご存知ですか?下痢が何日程度続くかも解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
高宮 新之介(信州大学医学部附属病院 呼吸器外科)
昭和大学(現・昭和医科大学)卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、日本外科学会専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事する中、医学博士を取得。昭和大学横浜市北部病院(現・昭和医科大学横浜市北部病院)呼吸器センターを経て、現在は信州大学医学部附属病院 呼吸器外科に勤務。肺がんを中心とした呼吸器外科診療、低侵襲手術、肺がん術後QOL、術前心理状態と術後疼痛に関する研究に取り組む。日本外科学会専門医、日本呼吸器外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。
熱中症で下痢になったときの受診サインと病院での治療法

熱中症の下痢がどの程度続いたら受診すべきですか?
ほとんどの熱中症による下痢は自宅での適切な療養で改善しますが、なかには一刻を争う緊急の対応を要する危険な状態もあります。以下のレッドフラッグ・サインが見られた場合は、ためらわずに救急車を呼ぶか、夜間・休日であっても救急外来を受診してください。
意識がおかしい
けいれん
血便や黒色便が出る
嘔吐が止まらず、水分がまったく摂れない
尿が半日以上出ていない、または色が濃い
38.5度以上の高熱が続き、身体を冷やしても下がらない
熱中症による下痢の病院での治療法を教えてください
病院での治療は、体内で起きているダメージの悪循環を断ち切るため、身体を冷やすこと(冷却)と体液を補うこと(輸液)を二本柱として、迅速かつ集中的に行われます。
病院を受診しても熱中症の下痢が治らないときはどうすればよいですか?
適切な初期治療を受けても下痢が改善しない場合、医師はいくつかの可能性を考え、追加の検査や治療方針の変更を検討します。
第一に、熱中症と細菌性腸炎(食中毒)の合併です。高温多湿の環境は、カンピロバクターやサルモネラ、O-157といった食中毒菌の増殖にも最適な条件です。熱中症の症状だと思っていたものが、実は食中毒であったり、両者が偶然合併していたりすることも少なくありません。この場合、医師は便の培養検査を行い、原因菌を特定したうえで適切な抗菌薬(抗生物質)による治療を開始します。
第二に、電解質異常の遷延です。点滴治療を行っても、低ナトリウム血症や低カリウム血症がなかなか補正されないことがあります。特に腎機能が低下している場合や、もともと利尿薬を服用している方などでは、電解質の管理が複雑になることがあります。この場合は、点滴の内容や投与速度を再評価し、より精密な調整が行われます。
第三に、熱中症が引き金となった新たな消化管機能不全の可能性です。重度の腸虚血を起こした場合、そのダメージから回復する過程で腸の機能が完全にもとに戻らず、後遺症が残ることがあります。代表的なものに、特定の食品(特に乳製品に含まれる乳糖)を消化できなくなる二次性乳糖不耐症や、腸が過敏な状態が続き、腹痛や下痢・便秘を繰り返す感染後過敏性腸症候群(IBS)があります。これらの状態が疑われる場合は、消化器内科の専門医による食事指導や内服治療といった、継続的なフォローアップが必要になることがあります。
編集部まとめ

熱中症による下痢は、単なるお腹の不調ではなく、体内で起きている深刻な機能不全のサインです。軽視することなく、迅速かつ適切な対応が重症化を防ぎ、命を守る鍵となります。無理をせず涼しい環境で過ごすことを心がけ、厳しい夏を健康に乗り切りましょう。
参考文献
熱中症診療ガイドライン2024(日本救急医学会)
熱中症環境保健マニュアル(環境省)
- 「膵臓がん」を疑う「危険な尿の色」はご存知ですか?膵臓がんの初期症状も医師が解説!
──────────── - 「日射病」を発症するとどんな「症状」が現れる?初期症状や受診の目安となる症状も解説
──────────── - 熱中症は薬で治せない―救急車を呼ぶ「3つの目安」と治療の主役“冷却”:熱中症特集第3回「治療編」
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