せっかく就職決まったのに…うつ病の25歳長女を襲った“障害年金ストップ”の不安 心を救った社労士の“一手”

せっかく就職決まったのに…うつ病の25歳長女を襲った“障害年金ストップ”の不安 心を救った社労士の“一手”


障害年金を受給している人が就労が決まり、障害年金の支給を止められる可能性が出てきた場合はどうする?(画像はイメージ)

【画像】「えっ…!?」これが“うつ病”の可能性がある「症状」です(14枚)

 筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気などで就労が困難なひきこもりの人を対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。

 浜田さんによると、精神障害で障害年金を受給されている人の中には「働けるようになったら、障害年金は停止してしまうのではないか」といった不安を口にする人も多くいるといいます。実際に、厚生労働省はどのような見解を示しているのでしょうか。また、もし障害年金が支給停止されてしまった場合、その後どのような対策が取れるのでしょうか。浜田さんが20代の娘がいる家族をモデルに紹介します。

就労が決まった後に主治医から思いもよらぬ発言が

 25歳の山畑香菜(仮名)さんは、うつ病で20歳から障害基礎年金を受給しています。現在は両親と3人で暮らしており、生活費は父親が負担しているため、日々のお金の心配はそこまで大きくはありません。

 それでも香菜さんは「いずれは自分のお金だけで生活できるようになりたい」という気持ちがありました。そこで、まずは就労移行支援を受けて、働くための足掛かりとすることにしました。

 最初の頃は緊張で体調を崩してしまうこともありましたが、それでも支援所のスタッフはいつも笑顔で優しく対応してくれたので、何とか通い続けることができました。その甲斐もあり、香菜さんは晴れて障害者雇用で働くことが決まりました。

 しかし、ここで思いもよらないことが起こったのです。それは心療内科の主治医から「働けるようになると、障害基礎年金の支給が停止されてしまうのではないでしょうか」と言われてしまったからです。

 これに香菜さんは大きなショックを受けてしまいました。

「せっかく就職が決まったのに、働くことを諦めなければならないのだろうか…」

 困った香菜さんは母親に相談。母親もどうすればよいのかまったく分かりません。そこで母親は、社会保険労務士である私に相談を持ち掛けました。

 面談の席で母親は言いました。

「働けるようになったら、やはり長女の障害基礎年金の支給が停止されてしまうのでしょうか」

「働いているからといって、すべてのケースで障害年金(障害基礎年金または障害厚生年金)が停止してしまうわけではありません。まずは精神障害による障害年金について、厚生労働省の主な見解を確認してみましょう」

【障害年金に関する厚労省の見解】
就労に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に就労に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認した上で日常生活能力を判断する。(中略)相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する(厚生労働省 国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン 2016年9月より)

 見解を伝えた後、私は説明を加えました。

「相当程度の援助を受けて就労している場合とは、障害者雇用で働くことを含んでいます。実際には、障害者雇用で働きながら障害年金を受給している人は多くいます。ただし、主治医には必ず次のような内容を伝えておきましょう」

・就労形態(一般雇用なのか障害者雇用なのか)
・職場での支援の状況
・仕事の内容
・1日の労働時間
・月に何日くらいの勤務なのか
・月給
・仕事が終わったあとの体や心の様子

 説明を受けた母親の表情は晴れません。

「それでも、もし長女の障害基礎年金が停止してしまったら。長女はもう二度と障害基礎年金はもらえなくなってしまうものなのでしょうか」

 母親は胸の内にある不安を口にしました。

支給停止されてしまった場合はどのような対策が取れるのか

「子どもの障害年金が支給停止されてしまわないか。もし支給停止になったら、二度ともらうことはできないのか」

 そのような不安を口にされる親御さんは多くいます。香菜さんの母親もその一人でした。

 そもそも障害年金が支給停止されてしまう状況には、一体どのようなものがあるのでしょうか。私は母親に次のような話をしました。

「障害年金では、原則1~5年ごとに更新の手続きがあります。誕生月の3カ月前に更新用の診断書(障害状態確認届)が郵送されてきます。医師に診断書を書いてもらい、誕生月の末日までに日本年金機構へ返信することで手続きは完了します。ここまではよろしいでしょうか」

 母親は大丈夫というように軽くうなずいたので、私は話を続けました。

「精神障害用の診断書では、日常生活の困難さや就労状況を記載する欄があります。それらの記載内容を踏まえ、障害年金が支給継続または支給停止されることになります。以上のことから、主治医には先ほどご説明した就労に関する事柄をできるだけ詳しく伝えておく必要があるのです」

「もしそれらをしても更新がうまくいかず、障害基礎年金が停止してしまったら。二度ともらうことはできないのでしょうか」

「そのようなことはありません。仮に支給停止されてしまった場合でも、その後、再び障害状態が重くなったと判断されれば、そこから支給停止が解除されて障害基礎年金が支給されるようになるからです。具体的には次のような流れになります」

(1)支給停止になった後、再び障害状態が重くなったら医師に診断書を作成してもらう

(2)次の書類を住所地の年金事務所へ提出する
・老齢・障害給付 受給権者支給停止事由消滅届
・年金生活者支援給付金請求書
・診断書

 面談の最後に私は言いました。

「せっかく娘さんが希望される仕事に就けたのに、それを諦めてしまうのは忍びないことでしょう。繰り返しになりますが、就労したからといって、全員が全員、障害年金が支給停止されるわけではありません。主治医には、先ほど述べた就労に関する事柄をしっかりと伝えておくようにしましょう」

 続けてこう付け加えました。

「もちろん、初回の請求時と同じように、日常生活の困難さを伝えておくこともお忘れなく。それでも、もし更新がうまくいかなかったら、そのときは私にご相談ください。支給再開に向けて、できる限りのご協力はいたします」

「それは心強いです。あまり考えたくはありませんが、もし支給停止になってしまったら、その時はお声掛けするようにします。障害基礎年金と就労の関係については、私から話を長女に伝えておきます。それを聞けば長女も安心すると思います。本日はいろいろとお話しいただき、どうもありがとうございました」

 母親はやっとほっとした表情になりました。

配信元: オトナンサー

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