「片耳だけ聞こえにくい…」その“症状”は聴神経腫瘍? 治療費の目安を医師が解説

「片耳だけ聞こえにくい…」その“症状”は聴神経腫瘍? 治療費の目安を医師が解説

聴神経腫瘍の治療には、経過観察・放射線治療・手術の3つの選択肢があります。いずれも基本的に保険診療の範囲内で対応できますが、治療法によって入院期間や費用の目安は異なります。高額療養費制度の活用方法も含め、治療の選択肢と費用の全体像を理解しておくことが、治療に向けた準備をスムーズに進めるうえで役立ちます。

大津 和弥

監修医師:
大津 和弥(医師)

三重大学医学部卒業。三重大学附属病院で研修。市立四日市病院、三重大学附属病院などに勤務後、国立がんセンター東病院研修。三重大学附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 講師を務め、小松病院で一色信彦、田邊正博の音声外科医師の指導の下音声外科手術を研鑽。市立ひらかた病院耳鼻咽喉科部長、市立ひらかた病院耳鼻咽喉科主任部長、音声外科センター長などを歴任。大阪医科薬科大学臨床教授。現在は大津耳鼻咽喉科・ボイスクリニック 院長。

聴神経腫瘍の治療費①:治療法の種類と保険適用の仕組み

このセクションでは、聴神経腫瘍の主な治療法と、それぞれの治療に対する保険適用の考え方について解説します。治療費の全体像を理解するためには、まず治療の選択肢を知ることが大切です。

治療法の3つの選択肢:経過観察・放射線治療・手術

聴神経腫瘍の治療法は大きく3つに分けられます。

経過観察(けいかかんさつ):腫瘍が小さく、症状が軽微な場合に選択されることがあります。定期的なMRI検査で腫瘍の変化を追いながら、増大が確認されたり症状が悪化した場合に治療方針を切り替えます。この方針は特に高齢の方や全身状態によって積極的な治療が難しい場合に検討されます。

放射線治療(ほうしゃせんちりょう):「ガンマナイフ」や「サイバーナイフ」と呼ばれる定位放射線手術(ていいほうしゃせんしゅじゅつ)が代表的な方法です。開頭手術を行わずに腫瘍に集中的な放射線を照射する治療で、入院期間が短い点が特徴です。腫瘍を完全に消失させるというよりも、成長を抑制することを目的とした治療として位置付けられています。

手術(外科的切除):腫瘍を外科的に摘出する治療法です。腫瘍の大きさや位置、患者さんの年齢・全身状態などを考慮して適応が判断されます。手術の方法は複数あり、「後頭蓋窩(こうとうがいか)アプローチ」「経迷路(けいめいろ)アプローチ」「中頭蓋窩(ちゅうとうがいか)アプローチ」などが腫瘍の状態に応じて使い分けられます。

保険適用と自由診療の区別

聴神経腫瘍の治療は、基本的に保険診療の範囲内で行われる部分が多くあります。MRI検査による診断、経過観察のための定期検査、手術、放射線治療(ガンマナイフを含む)はいずれも健康保険の適用が認められています。保険診療で行われる場合、患者さんの自己負担は医療費の1〜3割となります(年齢や所得に応じて異なります)。

一方で、使用する医療機器や施設によっては保険適用外の部分が発生するケースもあります。また、入院中の個室利用や食事代の自己負担分、術後のリハビリテーション費用などは別途かかる場合があります。治療前に主治医や医療機関の窓口に費用の内訳を確認することが大切です。

高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)を活用することで、1ヶ月間の医療費の自己負担に上限が設定されます。所得区分に応じた上限額が定められており、大きな手術や長期入院を伴う治療でも一定の自己負担軽減が期待できます。事前に加入している健康保険の窓口や市区町村に問い合わせることで、手続きの準備を整えることができます。

主な治療に伴う入院期間の目安

治療法によって入院期間の目安は異なります。

経過観察:入院は不要で、外来での定期検査が中心です
放射線治療(ガンマナイフ):施設によって異なりますが、数日程度の入院で行われることが多い傾向があります
手術(外科的切除):腫瘍の大きさや手術の難易度によって異なりますが、数週間程度の入院が必要になるケースがあります

入院期間が長くなるほど入院費用の総額も増加するため、事前に担当医から入院期間の見通しを確認しておくことが家計の準備として重要です。

まとめ

聴神経腫瘍は、耳鳴りや片側の難聴、めまいといった日常的な症状のなかに潜んでいることがあります。良性腫瘍ではありますが、発見が遅れると治療の選択肢が限られることもあるため、症状が続く場合は早めに耳鼻咽喉科や神経内科へ相談することが大切です。治療法には経過観察・放射線治療・手術の3種類があり、いずれも基本的に保険診療の範囲で対応できます。また、高額療養費制度など公的支援を活用することで、費用面の不安も軽減できます。まずは専門機関への受診を検討してみてください。

参考文献

国立がん研究センターがん情報サービス「脳腫瘍(成人)」

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の病気」

難病情報センター「神経線維腫症Ⅱ型(指定難病34)」

厚生労働省「34 神経線維腫症 」

配信元: Medical DOC

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