加工肉と大腸がんとの関連が指摘される背景には、N-ニトロソ化合物やヘム鉄、調理時に生成される物質など、複数のメカニズムが考えられています。ただし、これらの要因がどの程度影響しているかは、現在も研究が続いています。加工肉を食べると直ちにがんになるわけではなく、摂取量や食生活全体のバランスが重要です。ここでは、関連が指摘されている仕組みについて詳しく見ていきます。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
加工肉(ハム・ソーセージ)の発がん性リスクに影響する食べ方と量の関係
発がん性リスクがあるとされる加工肉ですが、食べる量や頻度によってリスクの考え方は変わります。「まったく食べてはいけない」ということではなく、どのくらいの量をどのような頻度で食べるかが重要です。このセクションでは、摂取量とリスクの関係、そして食べ方の工夫について解説します。
1日の摂取量とリスクの目安はどのくらいか
IARCの報告では、加工肉を毎日50g摂取した場合、大腸がんのリスクが約18%上昇すると報告されています。50gとは、ウインナーソーセージであれば約3〜4本、ハムであれば約3〜4枚程度に相当します。
ただし、この18%という数値は相対リスクを示したものです。相対リスクとは、もともとの発症リスクに対してどの程度増加するかを示す指標であり、「18%の人ががんになる」という意味ではありません。
日本人の大腸がんの生涯罹患リスクは、男性で約9%、女性で約7%程度(おおよそ10〜14人に1人)とされており、リスク評価を行う際には「相対リスク」だけでなく、「絶対リスク」もあわせて理解することが重要です。
また、IARCの評価は「発がん性の有無」に関するものであり、日常生活における「個人の発症リスク」を直接示すものではありません。実際には、喫煙や飲酒、肥満、運動不足、食物繊維の摂取量、家族歴など、さまざまな要因が大腸がんの発症に関与すると考えられています。
加工肉を毎日大量に食べる習慣がある場合には注意が必要ですが、たまに朝食でハムやソーセージを食べる程度であれば、過度に不安になる必要はないという見解もあります。重要なのは、一度の摂取量よりも「長期間にわたる食習慣全体」です。
世界がん研究基金(WCRF)や米国がん研究協会(AICR)は、加工肉の摂取をできるだけ控えることを推奨しています。一方で、具体的な禁止量を定めているわけではなく、日常的な摂取頻度や量を意識しながら、食生活全体のバランスを整えることが重視されています。
例えば、毎日の朝食で加工肉を食べる習慣がある場合には、週に数回は魚や卵、大豆製品などに置き換えるだけでも摂取量を減らすことにつながります。無理に完全排除を目指すのではなく、現実的に継続できる方法を取り入れることが大切です。
発がん性リスクを下げるための食べ方の工夫
加工肉を完全に避けることが難しい場合には、食べ方を工夫することで健康への影響を考慮することができます。
まず、野菜や海藻、きのこ類など食物繊維を豊富に含む食品を一緒に摂ることが勧められています。食物繊維は腸内環境の維持に役立つほか、便通を整える働きがあることが知られています。そのため、加工肉だけを単独で食べるよりも、野菜を組み合わせた食事のほうが栄養バランスを整えやすくなります。
また、ビタミンCを多く含む野菜や果物を取り入れることも一つの方法です。パプリカやブロッコリー、キウイフルーツ、柑橘類などにはビタミンCが豊富に含まれています。一部の研究では、ビタミンCには、発がん性が疑われるN-ニトロソ化合物の生成を抑える働きがあることがわかっています。そのため、ビタミンCを含む野菜と一緒に食べたり、製造工程ですでにビタミンC(酸化防止剤)が添加されている製品を選ぶのも一つの方法です。
合わせて、調理方法にも注意が必要です。前述の通り、加工肉に限らず肉類を高温で長時間加熱したり焦がしたりすると、ヘテロサイクリックアミン(HCA)や多環芳香族炭化水素(PAH)といった物質が生成される可能性があります。そのため、必要以上に焦がさないことや、焼き過ぎを避けることが望ましいとされています。
さらに、加工肉だけに偏らず、魚介類や鶏肉、大豆製品などさまざまなたんぱく源を取り入れることも重要です。特に魚にはEPAやDHAなどのオメガ3系脂肪酸が含まれており、健康的な食生活を支える栄養素として注目されています。
加えて近年では、地中海食のように野菜や果物、全粒穀物、魚を多く取り入れ、加工食品を控えめにする食事パターンが健康維持との関連で研究されています。特定の食品だけに注目するのではなく、「食事全体の質を高める」ことが大切です。
また、加工肉を食べる際には、サンドイッチやホットドッグだけなど「単品」で済ませるのではなく、サラダやスープ、果物などの副菜を組み合わせることで栄養バランスを改善しやすくなります。日々の小さな工夫の積み重ねが、健康的な食習慣につながるでしょう。
発がん性リスクを考えるうえで大切なのは、「食べるか食べないか」の二択ではありません。摂取量や頻度を意識しながら、さまざまな食品をバランスよく取り入れることが、長期的な健康維持につながると考えられています。
まとめ
加工肉(ハム・ソーセージ)には発がん性リスクと関連する物質が含まれており、IARCによってグループ1に分類されていることは事実です。しかし、少量を時々食べる程度であれば過度に心配する必要はなく、大切なのは「食べ過ぎないこと」と「食べ方を工夫すること」です。添加物については、食品表示ラベルを活用して選ぶことで、摂取量を抑えることができます。また、身体にはもともと解毒の仕組みが備わっており、食事・運動・睡眠といった日常の生活習慣を整えることでサポートすることが可能です。加工肉に関して血便や便潜血陽性、排便習慣の変化、原因不明の体重減少、貧血などの症状がある方や、40歳以上で大腸がん検診を一度も受けたことがない、家族に大腸がんの既住がある方は消化器内科などの医療機関に相談されることをおすすめします。
参考文献
消費者庁「食品表示基準について」
国立がん研究センター「赤肉・加工肉のがんリスクについて」
国立がん研究センター「最新がん統計」
- 『大腸ポリープ』ができやすい人の特徴 「がん」のリスクや治療の流れも医師が解説
──────────── - 便潜血検査は「陰性」なのに見つかった『大腸がん』… 医師が語る“見逃し”の現実
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