脊椎カリエスの治療
治療の中心は「抗結核薬」による薬物療法です。標準的には6〜9か月間の治療が推奨され、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、ピラジナミドといった薬剤を組み合わせて使います。
抗菌薬治療でも十分な効果が得られない場合や、脊柱管狭窄による神経症状が強い場合、変形が著しい場合には手術が検討されます (参考文献1) 。
脊椎カリエスになりやすい人・予防の方法
脊椎カリエスは、結核菌が肺以外の臓器に広がって起こる「結核の一形態」です。したがって次のような結核菌への暴露歴・感染歴が考えられる人や、免疫抑制状態にある人では発症リスクが高くなります。
結核の多い地域からの移住者:結核が日常的に流行している地域から来た人は、過去に感染している可能性が高く、再発のリスクがあります。
高齢者:加齢に伴い免疫力が低下するため、体内で眠っていた結核菌が再び活動を始めやすくなります。
HIV感染者や透析を受けている人:免疫が抑えられているため、肺結核だけでなく骨や関節への結核菌の波及も起こりやすくなります。
免疫抑制剤を使用している人:ステロイドや抗がん剤、臓器移植後の免疫抑制剤などを使っている人は、結核菌を抑え込む力が弱くなります。
結核の感染予防・発症予防の他には、脊椎カリエスの早期発見で重症化予防をすることができます。
BCGワクチン接種:乳児期に接種することで、結核の発症や重症化を予防することができます。
結核の早期発見・早期治療:結核は早く見つけて治療を始めれば、骨や関節に広がるのを防げます。咳や微熱、体重減少が続く場合は近くの内科を受診してください。
長引く腰痛や背中の痛みを軽視しない:単なる腰痛と思って放置せず、数週間以上続く痛みや背中の変形があるときは、早めに整形外科を受診しましょう。
結核は「過去の病気」と思われがちですが、日本では依然として年間1万人前後の新規患者が報告されています。高齢者を中心に発症例が多く、若い世代でも海外からの持ち込みや免疫低下をきっかけに発症することがあります。骨や関節に広がる例は全体からみれば少数ですが、脊椎カリエスのように重い後遺症を残すことがあるため、注意してください。
参考文献
Stout J. Bone and joint tuberculosis. UpToDate. Last updated Feb 27, 2024. Literature review current through Jul 2025.

