
「退職届を提出してきたやつがいる!」
職場の飲み会でそう怒鳴り散らし、全社員の前で退職届を晒し上げる上司。人手不足を理由に非難の目を向ける同僚たちを前に、2年目の社員は「辞めません!」と叫ばざるを得なかったーー。漫画家の古河コビー(@furuCoby)さんが描く『退職代行切金さん 〜社畜の非常口はこちらです〜』は、過酷な労働環境とハラスメントによって「自力では逃げ出せない」ループに陥った労働者たちの絶望と、そこからの解放を描くスカッと社会派ドラマだ。
2026年7月現在も、マンガボックスでの連載が話題を呼び、職場におけるハラスメントや退職の権利、カスタマーハラスメントなどの労働問題に関心が集まるなか、今回は理不尽な企業体質に追い詰められた青年の葛藤と、彼を救う弁護士の鮮やかな手腕を紹介。リアルな労働トラブルの描写と爽快な解決劇の裏側について、作者の古河コビーさんへのインタビューを交えてお届けする。
■雑用押し付け、セクハラ黙認のブラック職場。自力で逃げ出せない「真面目な人」を襲う退職拒否の恐怖



主人公の幸田は、大手広告代理店の営業部に所属して2年目の社員。しかし、未だ営業成績はゼロ。本来の営業業務ではなく、上司からの雑用や「おにぎりを買ってこい」といった使いっ走りのような扱いを受け、日々の業務外の雑務に追われていた。
部長からの度重なるパワハラに耐えながら何とか食らいつこうとしていた幸田だったが、職場内で横行する女性社員へのセクハラさえも意に介さない上司の態度に、ついに心が折れ、意を決して退職届を提出する。
「退職届さえ出せば、これで辞められるはずだ」ーーそう信じていた幸田を待ち受けていたのは、さらなる地獄だった。
部長は社員を集めた飲み会で「退職届を提出してきた不届き者がいる」と晒し上げ、「人手が足りないのに」「誰だよ」と周囲を煽動。逃げ場を失った幸田は、自らの意に反して「辞めません!」と言わされる羽目になり、退職すら許されない深い罠にはまってしまうのだった。
■なぜ業者ではなく「弁護士」なのか?徹底した取材と実戦的な法律知識で描く、圧倒的スカッと感
絶望する幸田の前に現れたのが、退職代行を請け負う弁護士・切金(きりかね)だ。本作の大きな特徴は、民間の退職代行サービス業者ではなく、非弁行為のリスクを越えて直接交渉・対処ができる「弁護士」を主人公に据えている点にある。
作者の古河コビーさんは、制作の経緯についてこう明かす。
「弁護士さんと業者さんそれぞれに取材した上で『弁護士』に決めました。決め手になったのは、直接敵と対峙できるか、そして法的に対処できる幅の広さです。企画のために5つ以上の職業の方に取材させていただきストーリー案を練りました」
さらに、過酷な職場から逃げ出せない人々を描くにあたって、「退職代行を使う人は逃げ癖があると思われがちですが、実態は『真面目で逃げられないから困っている』人が多いということを伝えたかった」と語る古河コビーさん。弁護士による監修のもと、法的な違法性を正確に突きながら相手を論破していく展開は、読者に大きな爽快感を与える。
最後に、今まさに職場で苦しんでいる読者へ向けて、古河コビーさんは温かいメッセージを寄せてくれた。
「『最悪、退職代行があるから、今仕事でどれだけつらくても絶対なんとかなる』ということを知っていただけたら、心が軽くなるんじゃないかと思います。明るく『絶対大丈夫!』と言い切ってくれる切金さんの存在が、誰かの手助けになれば嬉しいです」
古河コビーさんは他誌でもドラマ原作『ビリオン×スクール』のキャラクターデザインや、ホラー小説『6』のコミカライズ作画を手がけるなど幅広く活躍中。追い詰められた心をそっと救ってくれる『退職代行切金さん』の鮮やかな解決劇を、ぜひチェックしてみてほしい。
取材協力:古河コビー(@furuCoby)
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