「乳がんの術後」は身体にどんな変化が現れるかご存知ですか?注意点も医師が解説!

「乳がんの術後」は身体にどんな変化が現れるかご存知ですか?注意点も医師が解説!

乳がんの手術は早期治療が中心であり、多くの患者さんが術後に日常生活へ戻ります。本記事では、乳がん手術後の経過や身体の変化、その後に行われる追加治療、そして術後の生活上の注意点について解説します。術後の不安や疑問を解消し、安心して日常生活を送るための情報をまとめました。

武田 美貴

監修医師:
武田 美貴(医師)

平成6年札幌医科大学を卒業し、札幌医科大学放射線科に入局。画像診断専門医となり、読影業務に従事。その後、新たな進路を模索するため、老年医療や訪問医療、リハビリテーションなどを学ぶ。現在は、一周回って画像診断で母校に恩返しをする傍ら、医療事故の裁判では、患者に寄り添う代理人を、画像診断と医学知識の両面でサポートすることをライフワークとしている。

乳がん手術後の様子

乳がん手術後の様子

乳がんの手術後、入院中から退院後にかけて体調は徐々に回復していきます。以下では、手術直後から退院まで、そして退院後の一般的な経過について解説します。

手術後

手術直後は全身麻酔の影響から覚め、病室で安静に過ごします。痛み止めの投与や点滴が行われ、胸には手術創を保護する包帯やドレーンが挿入されていることがあります。術後当日は安静が基本ですが、医師や看護師の指示に従い、可能な範囲で身体を少し動かす練習を始める場合もあります。

手術の翌日

術後翌日になると、体調が安定していればベッドの上で座ったり立ち上がったりするリハビリを開始します。特に腋の下のリンパ節郭清を行った場合は、肩や腕のリハビリ運動を早期に始めることが重要です。ドレーンが入っている場合はその管理に注意しながら動きます。この時期は無理をせず、痛みがある動作は避けつつ少しずつ日常動作を再開していきます。

退院するまで

乳がん手術後の入院期間は、手術内容や体調によりますが、数日から1週間程度が一般的です。入院中は創部の経過観察やドレーンの排液量チェックが行われ、問題がなければドレーンは数日で抜去されます。傷口の痛みは次第に和らぎ、身の回りのことは退院前までに自分でできるようになるケースがほとんどです。

退院後

退院後は基本的に大きな生活制限はありません。普段の家事や仕事も、体調に合わせて少しずつ再開できます。ただし、術後間もないうちは傷の痛みや出血を避けるために激しい動作や運動は控えて、無理のない範囲で過ごしましょう。飲酒も傷の治癒に影響する可能性があるため、痛みや出血防止の観点から控えることが望ましいです。また、入浴はドレーンがない場合は退院当日から可能ですが、ドレーン留置があった場合は抜去後時間を開けてシャワーや入浴ができます。このように細かい制限はありますので、何か心配な症状があれば、自己判断せず速やかに主治医に相談しましょう。

乳がん手術後に生じる身体の変化

乳がん手術後に生じる身体の変化

手術後、乳房や腕にいくつかの変化や後遺症が現れることがあります。代表的なものがリンパ浮腫と腕や肩の動かしにくさです。これらは特に腋窩リンパ節郭清を受けた場合に起こりやすいため、原因と対策を理解しておきましょう。

リンパ浮腫

リンパ浮腫とは、手術でリンパ節を切除したことなどによりリンパ液の流れが滞り、腕や手がむくんだりしびれたりする状態です。リンパ浮腫を予防・軽減するために、以下の点に気をつけましょう。

術後のリハビリ運動

術後翌日から入院中にリハビリテーションを開始し、退院後も肩や腕の運動を継続します。

腕を過度に使わない

リンパ節郭清を受けた腕では重い荷物を持たない、激しい腕の運動を避けるなど、過剰な負担をかけないようにします。

早期発見・対応

万一、腕にむくみやだるさ、皮膚の張り感などリンパ浮腫の兆候があれば、早めに主治医に相談してください。

リンパ浮腫は完全に予防する方法はありませんが、以上のような日常生活での注意やリハビリにより発症リスクを下げることができます。

腕や肩の動かしにくさ

手術後、特に腋窩リンパ節郭清を行った場合には、肩関節の可動域制限が生じることがあります。これは術後に傷がつっぱる感じや痛みを怖れて腕を動かさずにいると筋肉や関節が硬くなるためです。拘縮(こうしゅく)と呼ばれるこの状態を防ぐため、術後早期からの肩・腕のリハビリが重要になります。具体的には以下の対応をします。

リハビリの開始

ドレーン抜去後または術後翌日から、腕をゆっくり上げ下げしたり、部屋の壁に這わせて手を上げたりしていく運動などを行います。

日常で身体を動かす

入院中だけでなく退院後も、日常生活にリハビリ動作を取り入れることが大切です。

専門家への相談

もし肩のこわばりが強い場合は、リハビリ外来などで理学療法士による指導を受けることも検討してください。

配信元: Medical DOC

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