「顔を洗う瞬間」も危険?日常の動作で起こる「ぎっくり腰」の“症状”【医師監修】

「顔を洗う瞬間」も危険?日常の動作で起こる「ぎっくり腰」の“症状”【医師監修】

ぎっくり腰というと、重い荷物を持ち上げた瞬間に起こるイメージを持たれる方も多いかもしれません。しかし実際には、靴を履く、顔を洗う、床のペンを拾うといった日常的な動作がきっかけになることも少なくありません。腰の筋肉や靱帯に急激な負担がかかるメカニズムを理解することが、予防への第一歩になります。

松繁 治

監修医師:
松繁 治(医師)

経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医

ぎっくり腰になったときの対応と再発防止

このセクションでは、ぎっくり腰になってしまったときの適切な対応と、再発を防ぐための取り組みについて解説します。初期対応の誤りが症状を長引かせることもあるため、正しい知識を持つことが大切です。

急性期の正しい対処法

ぎっくり腰が起きた直後は、無理に動こうとせず、楽な姿勢で安静を保つことが基本です。痛みが強い場合は横向きに寝て、膝を軽く曲げた姿勢(側臥位・そくがい)をとると腰への負担が軽減されやすいとされています。仰向けで寝る場合は、膝の下にクッションや丸めたタオルを置くと腰の緊張が和らぐことがあります。

かつては「安静第一」とされていましたが、現在では長期間の安静は筋肉の衰えを招くため推奨されておらず、痛みの範囲内でなるべく通常の生活を続けることが望ましいとされています。痛みが許す範囲でゆっくりと歩くなど、軽い活動は回復を助けるとも考えられています。

冷やすべきか温めるべきかについては、一律に決まっているわけではありません。発症直後には、アイスパックなどで冷却することで痛みが和らぐ方もいます。一方で、温めることで症状が楽になる場合もあります。効果には個人差があるため、無理のない範囲で自分に合った方法を選ぶことが大切です。症状が強い場合や改善がみられない場合は、整形外科などの医療機関を受診して相談しましょう。

再発を防ぐために必要な習慣

ぎっくり腰は再発しやすい疾患のひとつです。一度経験した方が「また同じことになるかもしれない」と不安を抱えているケースも多く見受けられます。再発防止のためには、腰への負担を減らす日常的な習慣を積み重ねることが重要です。

まず取り組みたいのが、物を拾うときの動作の見直しです。膝を曲げてしゃがみ、身体を対象物に近づけてから持ち上げる「スクワット型」の姿勢を意識することで、腰への負担を軽減しやすくなります。こうした身体の使い方を日常生活に取り入れることは、腰への負担を減らし、ぎっくり腰の再発予防につながる可能性があります。

加えて、体幹(腹部・背部)の筋力を強化するトレーニングも効果的です。体幹の筋肉は腰椎を支えるコルセットのような役割を果たしており、筋力が高まるほど腰への衝撃を吸収する力が増します。腹横筋(ふくおうきん)を意識したドローイン(お腹を凹ませる運動)や、股関節周囲のストレッチなどを継続的に行うことが推奨されます。

まとめ

膝を伸ばしたまま物を拾う動作は、腰椎や椎間板への負担を増加させ、腰痛やぎっくり腰のリスクに関与する可能性があります。腰椎や椎間板への負荷の増加、筋肉や靱帯へのストレス、前屈みとひねりの組み合わせなどが重なることで、腰への負担が蓄積しやすくなります。腰への負担が少ない動作を習慣化するとともに、体幹や股関節周囲の筋力・柔軟性を維持し、日常的なセルフケアを心がけることが、腰の健康を守るうえで大切です。腰に痛みやしびれを感じている方は、早めに整形外科などへの相談をおすすめします。

参考文献

日本医療機能評価機構「腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)」

厚生労働省「腰痛予防対策」

日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」

日本整形外科学会「腰痛」

配信元: Medical DOC

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