
岡田将生というと、その圧倒的なビジュアルにまず引き寄せられる。182cmの長身でスタイルがよく、端正な顔立ち。画面に登場すれば、一気に華やぐ。ただ、俳優としてのポテンシャルは、ビジュアルだけにとどまらない。それを物語るのが、映画・ドラマ・舞台など役者として100本を超える出演作の数だ。そこで今回は、岡田がエンタメ界で求められ続ける、演技の魅力について探ってみたい。(以下、ネタバレを含みます)
■デビュー間もなく大きな脚光!映画賞の新人賞を総なめに
1989年8月15日生まれの岡田は、17歳だった2006年に芸能界入り。同年、オムニバス形式の「東京少女」(BS-i※現:BS-TBS)でドラマデビューし、2007年の「アヒルと鴨のコインロッカー」で映画デビューを果たした。
そこから破竹の勢いでキャリアを進める。2007年は、ドラマ「生徒諸君!」(テレビ朝日系)、「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス」(フジテレビ系)、映画「天然コケッコー」「ROBO☆ROCK」などに出演。当時はSNSの黎明期であり、Xの前身であるTwitterが本国アメリカでサービス開始して間もない頃で、“バズる”という概念も浸透していなかったが、それでも「あの美少年は誰?」とざわついたのを覚えている。
その注目がピークに達したのが2009年。映画初主演となった「ホノカアボーイ」に加え、「ハルフウェイ」「重力ピエロ」「僕の初恋をキミに捧ぐ」と、主役あるいはメインキャストに抜てき。この活躍で2009年度の報知映画賞、ブルーリボン賞など新人賞を総なめにした。
デビューわずか3年ほどの初期だが、多くのファンを今も引き付ける作品も多い。「天然コケッコー」は、人気漫画だった原作から抜け出したような、都会からのかっこいい転校生がぴったりで、まだ演技そのものは初々しかったが、等身大のみずみずしさがあった。
ハワイ島にあるホノカアという小さな日系移民の街を舞台にした「ホノカアボーイ」では、失恋したショックで大学を休学してやって来た青年役。住人たちと交流しながら、少しずつ成長していく様子を繊細に演じた。
伊坂幸太郎氏のベストセラー小説を映画化した「重力ピエロ」では、主人公の弟役。自分がピカソの生まれ変わりだと思っている青年という、ミステリアスな役どころで観客を引き付けた。
■2010年、嫌な感じのキャラクターで才能を輝かせる
ティーンエイジャーから20代に突入。出演を重ねるたびに、監督や先輩俳優たちから学び、ぐんぐんと吸収し、実力をつけていく。
2010年公開の映画「告白」と「悪人」は、両方とも出演時間がそれほど多くないのにもかかわらず、印象に残る役柄だった。「告白」では、生徒から疎んじられる空気が読めない熱血教師。「悪人」では、老舗旅館の御曹司だが性格が悪いヤツ。傲慢な一方で、みじめったらしいシーンも話題になった。
顔立ちは美しいのに、絶妙に嫌な感じのキャラクター。「こういうヤツ周りにいるかも」と思わせるリアルさ。イケメンぶりだけでない、俳優としての実力を一段深くし、確かなものとして世間に広く知らしめたともいえる。
■自ら挙げる代表作は「ゆとりですがなにか」
2012年の大河ドラマ「平清盛」(NHK総合ほか)で源頼朝役を務めるなど、変わらず走り続けていく岡田。そんな中、自ら「代表作」と断言するのが主演ドラマ「ゆとりですがなにか」(2016年、日本テレビ系)だ。
宮藤官九郎のオリジナル脚本で、松坂桃李、柳楽優弥という同世代の俳優と共演し、“ゆとり第一世代”といわれる青年たちが人生の岐路を迎え、葛藤する姿を描いた。岡田が演じたのは、酒蔵の次男で、食品メーカーに勤める営業マンだが、出向を命じられて系列の居酒屋の店長になる青年。2017年にはスペシャルドラマ化、2023年には映画化もされた。
脚本の宮藤とは、阿部サダヲ主演の映画「謝罪の王様」(2013年)以来のタッグ。“残念なイケメン”という、コミカルな役柄もこなせることを強く印象付けながら、宮藤が潜ませる人間ドラマを見せる繊細な表現で、視聴者の共感を得た。
映画化の際に行われた当メディアのインタビューで、岡田は「僕の代表作であることは間違いないと思います。悔いのないようにできたという意味でもそうですし、自分の中でもこの作品をやりきれたことは誇りになっているんです。これをやれたおかげで、僕はこの仕事を辞めずに済んだし、キャストさんやスタッフさんのおかげもあって、お芝居を好きにさせてくれた作品だった」と語っている。
■美しさが際立たせる悪役も進化
代表作と自信を持って言える作品を経て、続く俳優道。ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021年、フジテレビ系)では、走り方がダサくてひねくれものの弁護士、宮藤と三度目のタッグとなった映画「1秒先の彼」(2023年)の口が悪いけどなぜか愛おしい郵便局員と、残念なイケメン枠はもうお手のものとなっている。一方、ドラマ「昭和元禄落語心中」(2018年、NHK総合)での大人の色気がにじみ出る落語家は、残念なイケメンキャラとは程遠い、ゾクッとするほどに目が離せない役柄だった。
世界的に注目を浴びた映画「ドライブ・マイ・カー」(2021年)も外せない。第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞ほか4冠に輝き、第94回アカデミー賞では国際長編映画賞を受賞した秀作だ。同作で岡田は、西島秀俊が演じる舞台俳優・演出家の主人公が亡き妻に紹介された俳優役で、物語を大きく動かすキーパーソンを務めた。主人公の心を揺さぶる難役で、語りのシーンの声の演技は、岡田の表現力の深さが感じられる。
ここで紹介できたのは100本を超える出演作のごく一部だが、それだけでも紹介してきた作品で多彩な役をこなしてきたことはお分かりいただけるだろう。ビジュアルだけに頼ることなく、演技力も磨いてきた。また、ドラマや映画の記者会見やバラエティー番組などでは、天然ぶりや、共演者たちからいじられたりするところが見られる。素の岡田の愛されキャラもまた、ファンだけでなく共演者やスタッフを魅了し、一緒に仕事をしたいと思わせる要因なのかもしれない。
そんな中、これから注目したいのが、「告白」や「悪人」にも通じる、ヒールな役。2024年の映画「ゴールド・ボーイ」では、冷酷な殺人犯を演じた。岡田の美しい顔立ちがこうも生きようとは…という役だ。ドラマ「ちょっとだけエスパー」(2025年、テレビ朝日系)もつかみどころのないヴィラン的な立ち位置だった。
そして、7月22日からディズニープラス スターで独占配信スタートした韓国ドラマ「殺し屋たちの店 2」では、世界的な傭兵集団「バビロン」の東アジア支部傭兵共同チーム長・Jとして出演している。
同作は、大学生の主人公チョン・ジアン(キム・ヘジュン)が叔父チョン・ジンマン(イ・ドンウク)から託された“危険な遺産”インターネット上の武器販売店「マーダーヘルプ」を守るため、殺し屋たちを相手に“逃げ場ゼロ”の極限バトルを繰り広げるアクションサスペンスシリーズの続編。
これが韓国ドラマ初出演となる岡田は、初めて本格的なアクションにも挑んだそうで、本作の会見では「今回初めて本格的にアクションに挑戦したんですけれども、ドンウクさんはじめ皆さんに現場でアクションの面白さを教えていただきました。アクションって本当に“会話”なんだなということを皆さんに教えていただいて、非常に貴重な機会をいただけたと思います」と撮影を振り返っていた。
ここにきてまた新しい岡田将生に出会えそうだ。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

