遷延性意識障害の治療
遷延性意識障害の治療には「原因治療」「支持療法」「意識回復を促進する治療」の3つがあります。
治療可能な遷延性意識障害の場合、原因治療として、抗てんかん薬の投与(非痙攣性てんかん重積状態にはカルバマゼピンやフェニトインなど)、 抗ウイルス薬の投与(サイトメガロウイルスや単純ヘルペス脳炎ではガンシクロビル、アシクロビルなど)、水頭症には髄液シャント術、慢性硬膜下血腫には外科的ドレナージといった治療を検討します。
支持療法として、経管栄養や中心静脈栄養による栄養管理を行い、褥瘡・肺炎の予防、排尿・排便管理、理学療法・作業療法による廃用症候群予防を行います。
意識回復を促進する薬剤として、酒石酸プロチレリンが頭部外傷やくも膜下出血に伴う遷延性意識障害に対し、一部の症例で効果を示すという報告があり、アマンタジンは意識レベルの改善に効果があるという報告もあります。 その他、ブロモクリプチン、シチコリン、L-dopaなどが意識障害を改善したという報告例がありますが、遷延性意識障害に安定して効果を発揮するような薬剤は今のところありません。
遷延性意識障害になりやすい人・予防の方法
遷延性意識障害になりやすい人としては、心肺停止を経験した人(低酸素状態)、 重度の脳外傷、脳出血、脳梗塞、高齢者(脳の予備能が低く、回復力が乏しい)、持病で脳血管疾患や糖尿病を持っている人などが挙げられます。
直接的な予防は困難ですが、リスクを減らす方法として、心臓が止まってしまったときに心肺蘇生を素早く適切に実施すること、頭部外傷予防(転倒防止、ヘルメット着用)、 高血圧・糖尿病などの生活習慣病を普段から適切にコントロールしておくこと、ワクチン接種(特に小児のウイルス性脳炎予防)などが挙げられます。
参考文献
The Multi-Society Task Force on PVS. Medical aspects of the persistent vegetative state. N Engl J Med 330:1499-1508, 1994
Report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology. Practice parameters;Assessment and management of patients in the persistent vegetative state. Neurology 45:1015-1018, 1995
Up to date:Hypoxic-ischemic brain injury in adults: Evaluation and prognosis

