
キクチ(@kkc_ayn)さんが描くコミックエッセイ「父が全裸で倒れてた。」は、母を看取って約2年後、病に倒れた父との日々をつづる作品である。母の介護経験があったからこそ冷静に対応できた一方、一人っ子として数々の決断を迫られる現実も描かれる。“親の老いと死”に向き合う日々を描く本作から、父が本格的なリンパ腫治療を始めるまでの出来事を紹介する。
■本格治療へ踏み出した父



父が新型コロナウイルスに感染してしばらくしたころ、担当医から呼び出されたキクチさん。抗がん剤治療が中断していた影響で腫瘍は大きくなっていたものの、コロナから回復しつつあり、いよいよ本格的なリンパ腫治療を始められるという説明を受けた。
父が倒れてから約2カ月、多くの困難を乗り越えてきた中で迎えた大きな節目だった。「腫瘍が大きくなっていると聞いた時は、やはり不安になりました。それでも幸いなことに、やっと本格的な治療ができると聞いて安堵しました」と振り返る。これまでは体力不足から抗がん剤を少量ずつ投与していたため、「本格的な治療ができるということは、父の体力も随分復活してきたということです。ここからがスタートラインだと感じました」と希望を語った。
■ビデオ通話で戻ってきた父らしさ
容態が落ち着き、スマートフォンで文字を打てるまで回復した父から、今度はビデオ通話がかかってきた。画面いっぱいに映った“顔つぶれすぎ”な姿に思わず笑ってしまったという。
「ビデオ通話を受けて映った画面が“コレ”だったので、本当に笑いました。いつもよりむくんだ顔が、余計につぶれた表情を誇張していましたし…」。コロナの症状もほとんどなく、体力も戻ってきたことで、「元気だった頃の父が戻ってきた印象でした」と話す。
■せん妄を覚えていた父の言葉
父は、せん妄だった頃のことを断片的に覚えており、「苦労かけてしまっただろうから申し訳ない」と謝罪したという。「せん妄は脳の意識障害なので、まさか覚えているとは思いませんでした。今思えば『意識がありながらあんなひどいことを言ってたんかい!(笑)』と、突っ込まずにはいられないですが、過ぎ去ったことなので責める気にはなりません。でもやっぱり謝ってもらえると、心が救われました」。
せん妄に苦しんだ父との時間は決して楽なものではなかったが、その一言が苦労を報われる出来事になったという。「せん妄を振り返って謝ってくれる人なんて稀なのではないでしょうか。すごく私は幸せ者だと思いました」と笑顔で語った。
■希望の先に待っていた新たな展開
コロナはほぼ回復し、本格治療へ進めることになった父。しかし、エピソードの最後には再び不穏な空気が漂う。厳しい現実を描きながらも、思わず笑ってしまう場面を織り交ぜ、家族の時間を丁寧に切り取るキクチさんの物語は、この先も目が離せない。
■取材協力:キクチ(@kkc_ayn)
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