命が助かった場合でも、脳幹の神経組織が損傷を受けることで、さまざまな後遺症が生じることがあります。麻痺や嚥下(えんげ)障害、言語障害など、どのような症状が残りやすいのかを整理します。また、回復に向けてリハビリテーションがどのような役割を果たすのかについても、あわせてご紹介します。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
脳幹出血の致死率と後遺症|生存後に残りやすい障害とは
脳幹出血では、命が助かった場合でも後遺症が残ることが少なくありません。このセクションでは、生存後に現れやすい後遺症と、その回復に向けたリハビリテーションについて解説します。
脳幹出血後に残りやすい後遺症の種類
脳幹出血から生還した場合でも、脳幹の神経組織が損傷を受けることで、さまざまな後遺症が残る可能性があります。代表的なものとして、以下のような症状が挙げられます。
運動障害(麻痺〈まひ〉)は、脳幹出血後に見られることが多い後遺症のひとつです。脳幹には全身の運動機能を伝える神経路が通っているため、出血の部位によっては四肢の麻痺が残ることがあります。また、顔面の半分と、その反対側の手足に麻痺が生じる「交叉性麻痺(こうさせいまひ)」と呼ばれる状態も、脳幹損傷に特徴的な所見です。
嚥下障害(えんげしょうがい)も、脳幹出血後によく見られる後遺症です。食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる状態で、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスクが高まります。言語障害(構音障害〈こうおんしょうがい〉)として、声がかすれたり言葉が聞き取りにくくなったりするケースも報告されています。さらに、めまい・複視(ものが二重に見える)・眼球運動障害なども、脳幹損傷に由来する症状として知られています。
後遺症に対するリハビリテーションの重要性
後遺症の回復には、リハビリテーションが重要な役割を担います。脳には「可塑性(かそせい)」と呼ばれる性質があり、損傷を受けた機能を別の神経回路が補うかたちで、ある程度の回復が期待できる場合があります。
リハビリテーションは、発症後できるだけ早期から開始することが推奨されています。理学療法(身体機能の回復)・作業療法(日常生活動作の改善)・言語聴覚療法(言語・嚥下機能の回復)を組み合わせた包括的なアプローチが基本です。回復の程度は個人差が大きく、全員が同じように改善するわけではありませんが、適切なリハビリテーションを継続することで生活の質(QOL)の向上につながるケースは少なくありません。
後遺症を抱えながら生活する場合には、家族・介護者のサポートや福祉サービスの利用が欠かせません。退院後も外来でのフォローアップを続け、状態の変化を医師と共有することが大切です。
まとめ
脳幹出血は、脳の中でも生命維持に直結する脳幹で起こる出血であり、致死率が高く後遺症も残りやすい病態です。前兆のサインを見逃さず、症状が現れたら迷わず救急搬送を求めることが予後を左右します。大人の方は高血圧・生活習慣病の管理を継続し、定期的な健診や医療機関の受診を習慣にしてください。少しでも不安を感じた場合は、神経内科や内科、脳神経外科へ早めの相談をおすすめします。
参考文献
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」厚生労働省「脳卒中・心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会報告書」 日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2025)」
日本脳卒中学会「脳卒中の予防・発症時の対応」 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025~改訂ポイント~」
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