
監修医師:
大坂 貴史(医師)
京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。
偽性副甲状腺機能低下症の概要
偽性副甲状腺機能低下症は、副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌されているにもかかわらず、骨や腎臓がその働きに反応できないために起こる病気です。I型とII型に分けられ、I型は「GNAS遺伝子」の異常による遺伝性疾患で、母親から受け継ぐ場合や突然変異で発症することがあります。II型では遺伝子そのものに異常はなく、細胞内の情報伝達の障害が原因と考えられています。
症状は乳幼児期から現れることが多く、血液中のカルシウム不足(低カルシウム血症)によって生じます。典型的なのは「テタニー」と呼ばれる筋肉のけいれんで、腕を圧迫すると手がすぼまるように縮む様子が見られます。また、頬を軽くたたくと口の周りの筋肉がぴくぴく動く症状がみられる場合もあります。他にも手足のしびれ、気分の変化、子どもの場合はけいれん発作などが見られます。
診断には血液検査で副甲状腺ホルモンやカルシウム、ビタミンD、マグネシウムを測定し、ホルモンが出ているのにカルシウムが低いことを確認します。さらにホルモン注射を行い反応をみる試験が診断に用いられることもあります。
治療の中心は活性型ビタミンD製剤で、腎臓でのカルシウム吸収を助けます。必要に応じてカルシウム製剤も併用され、定期的な血液・尿検査で調整が行われます。過度な治療は腎障害や尿路結石を招く可能性があるため注意が必要ですが、適切な管理で症状は抑えられます。
偽性副甲状腺機能低下症の原因
偽性副甲状腺機能低下症は、大きくI型とII型に分けられます。
I型は「GNAS遺伝子」という遺伝子の異常が原因で起こります。GNAS遺伝子は細胞の中で情報を伝えるために必要な「Gsタンパク」というタンパク質を作る役割を持っています。母親から遺伝子の異常を受け継ぐと発症しますが、家族に同じ異常がない場合でも突然変異によって起こることがあります。
II型ではGNAS遺伝子そのものには異常がありません。しかし、細胞内の情報伝達に関わる他の部分に問題があり、結果としてホルモンの働きに反応できなくなります。
どちらの型でも共通するのは、副甲状腺ホルモンが分泌されているにもかかわらず体がうまく反応できないという点です。

