●「ネットで見たから信じた」は免罪にならない
——もし迷惑行為とは関係のない「別人」だった場合にはどうなりますか。
この場合は、「真実である」という要件も満たさないことになるので、名誉毀損が成立することになります。
なお、「真実であると信じたことに相当の理由がある」という要件が満たされるには、信じるにつき「確実な資料、根拠」に基づくことが必要とされています。
「インターネットで見た」「人からそのように聞いた」程度では、確実な資料や根拠に基づくものとはいえず、真実であると信じた相当の理由があるという要件を満たしているとはいえないでしょう。
●軽い気持ちのクリックが人生を破壊する
──今回のケースについて、どのように見ていますか。
迷惑行為について、行為者の個人情報をインターネット上で拡散する行為は、いわゆる「さらし行為」であり、許されない私的制裁というべきでしょう。
また、最初に投稿した人だけでなく、シェアやリポストで拡散に加担した人も、それが行為者の社会的評価を低下させる以上は、原則として、名誉毀損が成立します。
「自分は最初に投稿していないから」という言い訳は通用しません。軽い気持ちのクリック一つが、無関係な個人の人生を壊しかねないことを、強く意識する必要があります。
【取材協力弁護士】
櫻町 直樹(さくらまち・なおき)弁護士
石川県金沢市出身。企業法務から一般民事事件まで幅広い分野・領域の事件を手がける。力を入れている分野は、ネット上の紛争解決(誹謗中傷、プライバシーを侵害する記事の削除、投稿者の特定)。
事務所名:内幸町国際総合法律事務所
事務所URL:https://uchisaiwai-law.com

