連続テレビ小説「風、薫る」W主演、上坂樹里を揺るがせた “直美と母”の再会シーン 「新しく複雑な感情が一気に湧き上がった」

連続テレビ小説「風、薫る」W主演、上坂樹里を揺るがせた “直美と母”の再会シーン 「新しく複雑な感情が一気に湧き上がった」

連続テレビ小説「風、薫る」で“直美”役を務める上坂樹里
連続テレビ小説「風、薫る」で“直美”役を務める上坂樹里 / 撮影=永田正雄

2026年4月より放送中の連続テレビ小説「風、薫る」。俳優、上坂樹里は激動の明治期に看護の世界で力強く生き抜く主人公・大家直美を瑞々しく演じる。

孤児というバックグラウンドを持ちながらも気丈に振る舞い、日々を生き抜いてきた直美(上坂)だが、7月20日週の放送で実の母親の文(内田慈)との対峙という、直美の運命を揺るがす展開が描かれた。

初の朝ドラでW主演を務める重圧をどう乗り越えたのか。クランクインか9カ月以上が経ち、今や現場は「大切な居場所」になったと微笑む上坂に“直美”として大きな山場を迎えた今だからこそ明かせる演技の裏側をはじめ、同志・見上愛との舞台裏、朝ドラ主演を通じて俳優として感じた成長についてなど胸の内をたっぷりと語ってもらった。

■直美とシンクロして悩んだ、大きな転換点

――第16週から第17週(7月20日週〜)にかけて、直美が実の母親である文さんを看護していくという非常に濃密なドラマが描かれました。改めて当時の撮影をどう振り返りますか?

この撮影期間中は、私自身も本当にたくさん悩んでいました。直美にとって「母」は、これまでの生き方にずっと大きな影響を与えてきた存在です。自分を捨てた母親に対して「もし会ったらどうなるんだろう」という思いは以前からありましたが、いざ実際に対峙してみると、内田慈さん演じる文さんの表情の変化に、お芝居の中で本当にたくさんの影響を受けました。

特に印象に残っているのが、直美が「母親ですか?」と問いかけるシーンです。それまですごく穏やかで優しく接してくれていた文さんが、その瞬間に急に冷たく突き放すような表情をされたんです。その顔を見た次の瞬間、文さんの顔を見られなくなってしまって……。これまで直美を演じてきた中では感じたことのない、新しくて複雑な感情が一気にブワッと湧き上がってきました。この長い作品の中で、直美という役の変化を自分自身でも強く実感した瞬間でした。

――お互いに戸惑いや葛藤がある、非常に繊細で難しいシーンが続きました。撮影にあたって、現場ではどのようなやりとりがありましたか?

最後に二人で神社に行くシーンでは、台本を超えたリアルな瞬間が生まれました。最初にお芝居の確認をする「段取り」の段階で、内田さんが感情を溢れさせて大号泣しながら歩き、セリフを繋いでくださったんです。それを見たとき、直美としてどう接したらいいのか、文さんからの「あなたなら大丈夫」という言葉をどう受け止めるべきか、私自身も本当に複雑な思いになり、悩み抜いて撮影に臨みました。

――この大きな出来事を経て、直美の中でも一つの区切りがついたように見えました

この出来事を経て、直美は自分が本当にしたかった「派出看護」の道に気づくことになります。文さんとのことがあったからこそ、お金がなくて病院に行けない人々への看護という、これまで出会った人たちとの関わりの中で積み上げてきた想いが確信に変わって行動に移せるようになるんです。

実の母親に会えたからといって、すべてが綺麗に解決したわけではなく、どこか一枚の壁があるような複雑さは残っています。それでも、自分の生まれのすべてを運命のせいにしていたこれまでの直美にとっては、ここからの人生を踏み出すために本当に大切な回だったと思います。
連続テレビ小説「風、薫る」で“直美”役を務める上坂樹里
連続テレビ小説「風、薫る」で“直美”役を務める上坂樹里 / 撮影=永田正雄


■「私の居場所」になった撮影現場と、背中を押してくれた監督の言葉

――クランクインから9カ月以上、直美を演じてこられました。長丁場の朝ドラという大きな舞台で、始まった当初と今とでは、ご自身の中でどのような心境の変化がありますか?

一番大きな変化は、最初の頃よりもずっと近い距離で、直美という人間を理解できるようになったことです。序盤は、台本に書かれている直美にどうやって自分を寄せていくか、一つひとつの言葉や行動の意味を頭で必死に考えていました。今でも見せ方に悩む瞬間はありますが、それ以上に、どんどん直美という役が愛おしくてたまらなくなってきたんです。
直美自身も、物語が始まった当初はただただ強くて不器用な女の子でした。でも、作中で色々な人と出会うことで、彼女も少しずつ変化していったんです。

そのグラデーションを、演じている私が一番近くで体感してきました。もし、演じている私自身がクランクイン当初の未熟なままであったら、直美として文さんとあんな風に(複雑な感情を抱えながら)接することはきっとできなかったはずです。周りの人との出会いが直美を変えてくれたんだなということを、演じながら身に染みて感じています。

――過酷なスケジュールの中、現場の環境や心の持ち方にも変化はありましたか?

今は完全に朝ドラが生活の軸になっているので、最近になって急に終わりが見えてきて、「撮影が終わったらどんな生活になるんだろう」と少しフワフワした不思議な気持ちです(笑)。でも、始まったばかりの頃はあんなに毎日緊張していた現場が、今では私にとっての「大切な居場所」の一つになっています。スタッフの皆さんとの間で築かれた安心感と信頼関係は本当に強くなったと実感しています。

――この歩みの中で、今でも大切にしている言葉があれば教えてください

本当にまだ撮影の序盤の頃に、監督からいただいた「直美を演じているのは上坂さんだから、本番で出てきた表情やそのお芝居が正解だと思う。だから今のカットをOKにしました」という言葉です。これをいただけたことで、自分が大家直美という役を演じることへの責任感がより強くなりましたし、「私が誰よりも一番、この直美を理解してあげたい」と思えるようになりました。今でもずっと私の心の支えになっている大切な言葉です。
連続テレビ小説「風、薫る」で“直美”役を務める上坂樹里
連続テレビ小説「風、薫る」で“直美”役を務める上坂樹里 / 撮影=永田正雄


■見上愛は、言葉を交わさずとも通じ合える心強い“お姉さん”

――劇中では、見上愛さん演じる“りん”との関係性も物語の大きな見どころとなっています。多くの時間を共演される見上さんとの信頼関係について、今どのように感じていますか?

本当に毎日ずっと一緒に撮影をしているので、今では隣にいるのが当たり前の存在になりました。お互いに「直美ならきっとこう動くだろうな」「りんならこう受け止めるだろうな」というビジョンが共有できているので、お芝居中も言葉を交わさずとも自然に通じ合えます。その信頼感はとても厚いですし、いつも本当にありがたいなと思っています。

――お二人の普段の関係性は、友達のような感覚ですか?それともやはりお姉さんのような関係ですか?

完全に頼れる「お姉さん」です!カメラが回ったら自然と直美とりんのスイッチが入るのですが、私、実はものすごく緊張しいで……。イベントの前などで私が直前にガチガチに緊張していると、見上さんが「いいよ、私についてきな!」って、ポンと手を繋いでくださるんです。本当にいつもたくさん甘えさせてもらって、引っ張っていただいています。

――前室(スタジオ前の控室)などでの、普段のふたりの空気感はいかがですか?

前室にはいつも二人の席を作っていただいていて、ずっと隣で。本当に他愛もない話で盛り上がったり。逆に、一緒にいる時間が長すぎるので、お互いに全然違うことをして静かに過ごしている時間もあって。本当に「一日を共にする家族」のような、気を遣わずに自然体でいられる空気感ですね。

私はシーンごとの重い感情をプライベートまで引きずってしまいがちで、撮影の順番が前後した時に切り替えに苦労することもあるのですが、そんな時も見上さんの圧倒的な切り替えの速さに引っ張ってもらいながら、スッと肩の力を抜いて次のシーンに挑めています。
連続テレビ小説「風、薫る」で“直美”役を務める上坂樹里
連続テレビ小説「風、薫る」で“直美”役を務める上坂樹里 / 撮影=永田正雄


■変化した顔つき、そして「俳優とは、生きること」

――長期間の撮影を経て、ご自身の中で「ここが一皮剥けた」と成長を実感する部分はありますか?

実務的な面で言うと、セリフを覚えるスピードが格段に早くなったのは一番実感しています(笑)。あとは、周りのスタッフの方々から「最初の頃の直美と比べて、顔つきが変わったね」と言っていただくことがすごく増えました。長い期間、直美として必死に生きていく中で、自分でも無意識のうちに変わっていった部分だと思うので、そう言われてすごく嬉しかったです。

――直美は劇中で「看護とは何か」という問いに向き合い続けていますが、この大きな作品を背負う今、上坂さんにとって「俳優とは何か」という問いにはどう答えますか?

ただ演じるというだけでなく、自分の体を使ってその役として生きる。そして、その瞬間を映像に切り取ってもらい、作品として視聴者の皆様にお届けすること。それこそが、私の俳優としての役目なのだと思っています。
連続テレビ小説「風、薫る」で“直美”役を務める上坂樹里
連続テレビ小説「風、薫る」で“直美”役を務める上坂樹里 / 撮影=永田正雄


取材・文=永田正雄

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