
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、2026年3月20日にX(旧Twitter)に投稿された『徴兵されなかった健康で元気な男はよその奥様方から大人気』をピックアップ。
本作は竹書房から書籍化されたコミックエッセイ『お義父さん、戦争ってどげんやった?年の差婚した私が聞いた「あの日」の記憶』の第3話にあたるエピソード。作者のゆる山まげよさんが本作がX(旧Twitter)に投稿されたところ、多くの「いいね」と共に多くの反響コメントが寄せられた。本記事では作者のゆる山まげよさんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
■兵役にいかないのに村八分にならないワケ

年の差婚で九州の片田舎で90代の義理の両親と暮らすことになったゆる山まげよさん。義父と昔の話をしていたとき、ふと義父の父親の“太蔵さん”も戦争に征ったのか聞いてみると、戦争には征っていないという…。しかも戦争に従軍しなかった太蔵さんは村八分にされるどころか「農家の奥さんから大人気だった」とか⁉
義父が語る昔話や戦争の話は、今まで彼女が聞いてきた話とは全く違い、戦争を生きる人々のリアルな生活が浮かび上がってくるものだった。読者からは「貴重な現代史」「人間臭くてほっこりする」などの感想はもちろん、家族が経験した実際の戦争話をシェアする読者がコメントを残すなど大きな反響が寄せられている。
■「事実を描くことを徹底し、「答え」を描きませんでした。」

――『お義父さん、戦争ってどげんやった? 』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
年の差結婚を決意して始まった新婚生活は、なんと…現代っ子ならみんな嫌がる!?義父母と暮らす同居生活でした。最初はイヤイヤ、しぶしぶ始まった同居生活だったんです。いくら愛する夫の親とは言え、「あなたのことは愛してるけど、もしご両親に介護が必要になっても私は看れない」と夫には言っていました…。
しかし、思いのほか、義理の両親は優しくて優しくて大好きになってしまいました。なんなら夫よりも笑
そんな生活の中で、良き義父マキオさんから聞く昭和初期の日本人の習慣や生活を聞いて、現代人の目から見ると「信じられない、想像できない!」って感想ばかりで笑
例えば、小学5年生のマキオ少年が山にワナを仕掛けて小鳥を捕ってたとか…自分で羽をむしって、七輪で焼いて、小骨も丸ごと食べて!?シャキシャキしておいしかったとか!!
ちなみに小鳥は捕れた後、山で羽をむしって帰るそうなんですが、むしった羽をそのまま置いておくと、散らばった羽を見て、他の小鳥が「仲間に何かあった(察し)」となってその場所で小鳥が捕れなくなるから離れたところで羽をむしってたとか!!
そもそも論ですが、小学生がそんなサバイバルな罠を仕掛けられるのがすごい。しかしこの技は当時の少年たちみんなができるわけじゃなくて、小学校5年生の中でも数人程しかそのワナを仕掛けることはできなかったそうです。普段全く偉ぶったりしない見栄を張ったりしない謙虚な?マキオさんの唯一の自慢話だった気がします笑
そんなアレコレ昔話の延長線上で、お父さんが少年時代生きていた時代は、戦争の時代だと言うことを知りまして…。
戦争を知っている生の声を聞けるこの同居生活がとんでもない貴重なものに感じてしまって、この記憶を私が独り占めしとくのはもったいないし、他の人々にも知って欲しいと思ったからです。
――市井の人の生活を描くことで戦争がより身近によりリアルに感じられます。“戦争”を描くうえでこだわった点や注意した点があればお教えください。
絶対に勝手な想像やイメージで、当時の小物や情景を描かないように気をつけていました。
例えば、川で魚をモリ突きした、と聞いたならば、そのモリはどんな形状だったのか?え、手作りなの!?モリの材料は!?え?リヤカーの大きな車輪のスポークを使う!?スポークって何!?竹の中に仕込んでゴムで弾く!?どゆこと!?みたいな感じで芋づる式にいくらでも質問って湧いてくるんです。言葉で聞いても理解できなかったので、絵で描いてもらうこともありました。
ちなみに家で鶏を飼って卵を作っていたそうなんですが、有精卵だから蛇がそれを狙って、家にニョロニョロしてるのも普通だったそうで!いや怖いでしょ!?って聞いたら怖くないよ〜と言ってました笑
当たり前の光景過ぎたんですね。ヒェッ
※現在のスーパーに売られている卵は無精卵なので、蛇は狙ってこないと言っておりました。
とにかく現代と環境や常識、感覚が何かも違いすぎるので、一つ一つ聞き取りや資料を確認しながら描きました。とにかくインタビューしまくりましたね。本当にマキオさんと同じ屋根の下で暮らしてなければ、こんな詳細に描けなかったから、同居したおかげ、マキオさんのおかげでした。
あと、もう一つ気をつけていた大事な事は、現在の主観を入れないことです。戦争=過去の人がした過ち、愚行、といった目で見られがちかと思います。もちろんそれはそうなんです。戦争の結末を知ってる私たちからすれば。
私も戦争について勉強すればするほど悲しくて悔しくてなんでこれほど愚かなことをしたのだ馬鹿野郎と気持ちが入り込んでしまって、漫画を通して批判するメッセージを込めてしまったことがありました。しかし、担当さんに言われたのが「まげよさんは批判したいわけではないですよね?」という言葉でした。
そう、私が伝えたい事は、今は遠くなってしまった過去の戦争が、漫画やドラマや映画の中でしか見ることができない戦争が、その時代に「在った」こと、そこに生きていた人たちが「在った」こと。
その時代を生きていない私が、戦争を知らない私が「決して当時を生きた人々の声を知ったかぶりをして代弁するなどおこがましくてできない」と思いました。それから私はあくまで事実を描くことを徹底し、「答え」を描きませんでした。
――本作の中で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
食べ物が出る全てのシーンですね!当時の人々の常識(大人も子供も「戦事」に従事)はもちろん今の私たちには全く共感する事はできない壁だと思っています。
しかし、当時の人々と今の私たちで1番共通していることっておいしいものを食べることは「嬉しい!」という気持ちだと思うわけです。
特に当時はそもそも食べるのに困った時代だったので、「食べること」が貴重で嬉しい瞬間だったんだろうとはマキオさんの話を聞いてとても感じました。その価値観はなんとしても伝えたかったです。
このこだわりは私が食べることが大好きだって言うこともあるのですが…。
イモムシ、イナゴの串焼き、白米のおにぎり、砂糖の代用にカボチャの煮出し汁!?を使った代用あんこ、村にやってきた兵隊さん達のコウリャン飯(の川流れ!?)、兵隊さんのカンパン、米兵の缶詰コーヒーと干し柿…
いろんな食べ物に関連したエピソードをたくさんねじ込みましたので、ぜひぜひ読んでいただきたいですね!!
――竹書房コミックエッセイ大賞を受賞したときは、どんなお気持ちでしたか?
受賞!?しかも大賞!?1番!?出版!?紙と電子両方!?私がその権利を!?お義父さんの戦争の記憶を!?うわあああ!!
天に昇る、とはまさにこのこと。宝くじに当たる人ってこんな気持ちなのかなぁって…。
19才の頃、シャーペンとボールペンとマジックでA4用紙に描いた自分のエッセイ漫画を初めてコミックエッセイの賞に応募し掠りもせず…それから何度かチャレンジしても、本当に1度も何にもつながらず…
気づけば世はSNSマンガ時代…?
SNS漫画から書籍化している漫画家さんもいるから「SNSで漫画を出せば、私も見つけてもらえる…!」と思い至り。どうやら時代はアナログよりデジタルの方が便利だと言うことで夫に背中を押されiPad Proを買ってもらって、無料お絵描きアプリで漫画を書くようになったのですが、SNSはフォロワーさんも増えず、どこからもお仕事に繋がるお声がかからず… iPad Proの持ち腐れでした。
でもマキオさんの戦争の記憶はあまりにも興味深くて、とにかく私1人が独り占めしてるのがあまりにももったいないので、こたつで赤子を左手に抱きながら、右手はペンを…マキオさんの隣で都度質問しながらマキオさんの記憶をそのまま描きました。
クオリティーは後回しにして、とにかく内容を伝えることに一点集中し、読んでもらって選んでもらえれば…!?
担当編集さんとやらがついて、漫画の描き方もレクチャーしてもらえて出版できる…!?と言う下心バリバリで描き上げました。
その勢いで完成させた漫画を賞に応募して、受賞させていただき、戦後80年の年に世に出すことができたことは本当に感無量です。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
私はこの漫画に「答え」を込めませんでした。
読者さまが感じたことこそが答えになると信じています。
私の大好きな義父マキオさんの無邪気な少年時代を覗いて、その横に常に「在った」戦争を一緒に見てくださいませ。

