ノンアルとソフドリの境界線

ノンアルとソフドリの境界線

ノンアルコール知識の深まりは
日本の飲食シーンを引き上げる





ノンアルコールとソフトドリンクの間には、明確な境界線があるのでしょうか? ジュースやお茶は、のどを潤したり、水分補給をするなど目的がドリンク単体にあり、シンプルです。一方で、ノンアルコールはもう少し余白のある存在に思います。「その場の空気と一緒に味わうことで、輪郭が立ち上がって深みを感じることができます」そう話すのは、ノンアルコールジン「NEMA」開発者の北條智之さん。

「製造方法もソフトドリンクとはまるっきり違います。例えば一般的なノンアルコールビールは、“脱アルコール”という作業を挟むので、通常のビールの製造より工程が増えるんです」バーテンダーとして業界の最前線を走ってきた北條さんは、なぜあえて工数の多いノンアルコールジンを手がけたのでしょう。

根本にはいつも「誰にでも分け隔てなく飲めるドリンクを作りたいという想いがありました」。転機は2014年、日本アロマセラピー学会での講師依頼を受けたことでした。この出来事を入口に、北條さんは植物由来のドリンクの可能性を独学で探求するようになります。「植物の力をどう引き出すのか。それは、素材の持ち味を活かすバーテンダーの仕事と、思いがけず重なるところがありました」





ジンには、原料のバラやジュニパーベリーなどを蒸留して、ボタニカルの香りを抽出する過程があります。この工程こそ、ジンが“香りのお酒”と称される所以。そしてそれは植物から、アロマセラピーに使用する精油を作る工程と似ています。違うのは香りの移る先がアルコールか水か。「ジンの製造過程でアルコールを水に置き換えれば、より多くの人に楽しんでもらえるのではないか。講師の仕事を通してウェルネスへの関心も高まり、ノンアルコールの世界にのめり込んでいきました」

ボタニカルを無農薬で自家栽培して、保存料もゼロにして…。健康状態を問わず、気兼ねなく飲めるドリンクを作ることへの意欲も、どんどん膨らんでいったと言います。「紐解いてみると江戸時代から、この方法で精製した『芳香蒸留水』が化粧水として使われていたようです。蒸留に用いた『蘭引蒸留器』なるものがあると知り、調べたところオークションで発見。すぐに購入しました」

蘭引蒸留器は陶器製のため、金属と違って加熱時に温度がゆっくりと広がっていきます。「温度差が付きすぎず、ピュアな蒸留ができそう」と狙いを定めた北條さんは、4年で300種以上のボタニカルによる芳香蒸留水のサンプル作りに没頭し、ここでまた別の奥深さに出会います。「アルコールが約80℃で揮発するのに対し、水は圧力によって沸点が変わります。通常は約100℃の沸点を60~120℃までコントロールすることができました。蒸留器を分け、温度帯を変えて、ボタニカルごとにベストな状態を保てるのです」と楽しげに話す北條さん。この細部まで気を配った過程そのものがNEMAの魅力になっていると感じます。





「このように蒸留の世界を知れば知るほど1杯の見え方は変わり、それだけでわくわくして気持ちが満たされる気がしませんか? ノンアルコールがアルコールと同等の価値観でレストランやバーに並べられ、ポジティブに選ばれる存在になったとき、日本の飲食シーンはもっとおもしろくなるはずです」

ノンアルコールはまだまだ選択肢として狭い領域にいます。ソフトドリンク同様、飲食店のドリンクメニューでは端の方に置かれていることがほとんど。けれどもその奥深いクラフト性はひとつのカルチャーとして愛され、豊かに育っていく価値があると、確かに教えられました。



Cocktail Bar Nemanja

カクテルバー ネマニャ
TEL.045-664-7305
住所/神奈川県横浜市中区相生町1-2-1 リバティー相生町ビル 6F 



この記事の詳細データや読者のコメントはこちら

配信元: OZmall

提供元

プロフィール画像

OZmall

会員数300万人の女性向けWEBメディア。OZmall [オズモール] は東京&首都圏の女性に向けた情報誌 OZmagazine [オズマガジン] のWEB版です。「心ときめく“おでかけ体験”を一緒に」をテーマに、東京の感度の高い女性に向けた最新トレンド情報を紹介しています。