「サレ妻」で離婚した上司
「おばあちゃんは、子どもにとって『母親』とは、また少しちがうよね…。家事育児に関心のない旦那さんの元に、マモルを置いていった…その罪はやっぱり、いつまでもついてくると思うよ。けど、里子には、おなかの子への責任があるからね」
「千花さん」
「親権はなくとも、里子はマモルの母親だよ。いつか、マモルが里子の罪ごと受入れてくれる日がくるかもしれない…。その時に、誇れる人であってほしい」
千花さんの言葉は、私の心に深く突き刺さった。私は、自分のしたことの重さに、改めて気づかされた。
その夜、千花さんの言葉が、頭の中で何度も繰り返されていた。
私に母親になる資格なんてあるのだろうか…。 私は、マモルからは『母親』を、これから生まれてくる子からは、『父親』をうばってしまったのに…。この子を、本当にしあわせにできるのだろうか。
産んであげたいけど…。産むことすら、私のエゴなのではないか。私がしてしまった過ちは、一生かけて背負っていかなければならず、それを生まれてくる子にも背負わせてしまうのではないか。
翌朝、離婚の報告と産休の相談をするため、上司の杏さんに声をかけた。 離婚に産休…目まぐるしい状態の私に、杏さんはおどろいたような顔をしたが、すぐに優しく笑いかけてくれた。
「前沢さん、ランチでも行かない?」
杏さんは離婚経験者で、いわゆる「サレ妻」だったということを知っていた。
自分の不倫のせいで、マモルの親権をうしなったことを打ち明けるのは、怖かった。 でも、杏さんの優しいまなざしに、私はすべてを話してしまいたくなった。
あとがき:当事者の気持ち
大学の先輩に、不倫や離婚、妊娠のことを打ち明けた、里子…。里子は、最悪の事態になるまで、自分の悩みを誰にも相談できず、一人で抱え込んでいた様子ですね。そんな里子に、先輩は優しく寄り添いながら、自分も両親が離婚した「当事者」であった過去を語るのでした。
そんな先輩の言葉は、説得力と共に、里子に大切な気づきを与えます。マモルにとっては、唯一無二の『母親』であるという事実…。そして、そんなマモルにとって、これからは「誇れる人間」であってほしいという、先輩の願いが伝わってきます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: hoi
(配信元: ママリ)

