
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、社会不安症を抱える青年の心情の変化を描いた『人の目が怖くて出れない』をピックアップ。
本作は、作者・浦部はいむさんによる漫画『生きづらいまま笑えたなら』に収録されている読切作品。自身の過去の実体験を元に描かれていて、浦部さんが2026年3月1日に本作をX(旧Twitter)に投稿すると、1,170件以上のいいねが寄せられるなど反響を呼んだ。この記事では浦部はいむさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
■ただ普通に生きたい…友人の存在に救われ、少しずつ前へ進もうとする青年の物語

中学時代より他人からの視線に強い不安を感じるようになった、つかさ。何とか卒業し高校へ進学するものの、強い緊張による体調不良で不登校となった末に部屋へ引きこもるようになってしまう。
教師に勧められて訪れた心療内科で告げられた診断は「社会不安症」。ただ普通に生きたいと願うも心が追いつかず、自らを社会不適合者だと感じるつかさは、部屋から一歩も出ることができずにいた。
そんなある日、部屋で音楽を聴きながら中学時代にとあるアーティストの音楽をきっかけに仲を深めた友人・律の存在を思い出す。律もまた周囲の人物からつかさが高校に行けていないことを耳にし、そのアーティストのライブのチケットを持ってつかさの元を訪れるが…。
「みんなと同じになりたいだけ」。そんなささやかな願いさえ叶わない現実に戸惑い苦しみながらも、友人の存在に助けられ、少しずつ前へ進もうとする青年の心情の変化を丁寧に描く本作。読者からは「素晴らしかった」「誠実で丁寧で、優しい漫画」「小さなきっかけでも救われる人がいるんだなぁって思えた」「自分の中の生きづらさを見つめ直す良い機会になった」など反響の声が多く寄せられ、話題となっている。
■「生きづらさを思い出して描けるのは今しかない」浦部はいむさんが語る創作の背景とこだわり

――「人の目が怖くて出れない」はどのようにして生まれたのでしょうか?きっかけや理由がありましたら教えてください。
自分が学校行けなくなって、引きこもっていた頃の事をいつか漫画にしたいなと思っていました。自分の過ごした時間をキャラ達に演じてもらったような作品です。中学の頃から電車すら怖くて乗れない、道を歩いていても通行人がみんな悪口が言ってるような…そんな症状が出て15歳の頃引きこもりました。
周りが学校行け!っていう中で、何も学校の事は触れずに、とある友人が私が好きなバンドのライブチケット持ってきてくれて連れて行ってくれて。ライブ中も外に出れない状態に結構パニックになりかけてたんですけど、回数重ねていくことに、徐々に平気になっていきました。電車も1人で乗れるようになったし…。
現在苦しんでる自分くらいの年齢の子達、身内に引きこもった人がいるご家族の方の気持ちに少しでも寄り添えたり、なにかきっかけになったらいいなと思って描きました。
自分も漫画やドラマを見て、進んだ道があります。30歳になって「自分の生きづらさを漫画で伝えたい!」みたいな気持ちが少なくなってきていて、作品として見ていて楽しいキャラ、楽しい漫画を作りたい、となってきていました。そこで、生きづらさを思いだして描けるのは今しかないかなと思って描きました。
――主人公・“つかさ”のキャラクターを作り上げるうえで意識した点やこだわった点はありますか?
最初は女子同士にしようかと思ったんですけど、自分が主人公を男の子を描く方が気持ちが乗りそうだったので、男の子にしました。
前髪を切ったら、可愛い目をしているというのも見せたかったですね。自分では自信ないつかさですが、思ってるより、可愛い表情とかしてる!みたいな感じです。
――本作では、同級生の律との出会いによってつかさが少しずつ変わっていく繊細な感情描写が印象的でした。浦部はいむさんが作画の際に特に意識している点や「ここを見てほしい」というこだわりはありますか?
人との関わり合いで変化していく、殻を破っていく姿を見たり描くのが好きです。登場人物の髪型をコロコロ変えるのが好きなんですが、気持ちの変化が髪型に現れてるように描いたのでそこを絵的に楽しんでいただけたら嬉しいです。
――X(旧Twitter)で本作を公開後、“生きにくさ”を描いた率直な物語に読者から共感が集まっています。本作に込めた想いをお聞かせいただけますか。
この読み切りを読んで「友達に救われた事がある」とコメントしてくれた方が何人か居ました。読んだ後に人に優しくしよう、みたいな気持ちになったら嬉しいなと思いながら描いています。
――本作の中で特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば教えてください。
つかさと律が30歳になって居酒屋で飲んでるシーンがありまして、そこの台詞はリアルの友人と交わした会話を元に使っています。
私が友人に「あの頃引きこもっていた私をライブ誘ってくれて感謝してる、私の10代を救ってくれた」的な事を言った事がありまして、そうしたら友人が「アルバム貸してくれたらバンドしれて、ライブ行けたから楽しい10代を過ごせたよ、ありがとう」返してくれたんですよね。
友人には直接的に言われてませんが、きっと引きこもっていた私を心配してくれ、そんな自分に寄り添ってくれたんだと今なら分かります。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
読んでいただくことで自分の創作物が誰かの記憶に残ったり、漫画を買ってくれたり、感想を書いたりしてくれる人達に恩返しできるのは、ずっとどんな形でも作品を発表する事かな、と思っています。なので、浦部はいむ作品を思い出してくれたり、新作描いてる!と読んでくれたら嬉しいです。

