
蒼井優が主演する金曜ドラマ「Tシャツが乾くまで」(毎週金曜夜10:00-10:54、TBS系)の第3話が7月24日に放送された。事故で行方不明になった夫を待つ咲子(蒼井)。捜索する警察から新事実がもたらされたが、ラストではその驚きをはるかに上回る衝撃が待っていた。(以下、ネタバレを含みます)
■二組の夫婦の喪失から始まる“愛”と“秘密”の物語
本作は、「silent」(2022年、フジテレビ系)などの脚本家・生方美久氏が、とある事故に巻き込まれた二組の夫婦の“愛”と“秘密”を描くオリジナルストーリー。
地上波連続ドラマ18年ぶりの出演となる蒼井が演じる主人公・咲子(さきこ)は、出版社で結婚情報誌の編集担当として働く40歳。優秀で仕事はできるが、私生活では面倒くさがりで少し抜けている部分も。何事も真っすぐ純粋に受け取るタイプで、愛する夫と幸せな結婚生活を送っていた。
だが、ある夏の日、夫が事故に巻き込まれ、幸せな日常が崩れ去る。さらに、その事故が暴いたのは、愛する人の“第3金曜日の秘密”だった。
物語の軸となるのは、咲子を含む5人の男女。製菓メーカーに勤務する生真面目で不器用な“ちょっと残念な男”園田樹生役を中島歩、バスが橋から転落した事故で行方不明になった咲子の夫・瀬尾充役を松山ケンイチ、樹生の妻で充と同じバス事故で亡くなったあずさ役を夏帆、充がオーナーを務める喫茶店「ひこうき」の従業員で、一見社交的だが人とは深く関わらないドライな性格の矢野直人役を高橋文哉が務める。
■行方不明の夫に関する情報が警察からもたらされる
たばこの匂いと、ちょうど同じ背の高さ。記憶に残る愛する人を樹生に重ねて感傷的になってしまった咲子だったが、ちょうどそのとき、充を捜索している長野県警から連絡が入った。それにしても本作は、“ちょうど”という言葉がたびたび登場し、何かが起きるタイミングも“ちょうど”だったりして、この先も“ちょうど”に揺さぶられていくのだろうか。
警察から告げられたのは、事故現場での捜索が中止になること。バスに取り付けられた防犯カメラに、サービスエリアで一度戻ってきた充が再び降りたあと、そのままバスが出発した様子が映っていたのだ。
浮かび上がる充が自ら失踪した可能性。そうであれば、警察も積極的な捜索はしないという。
長野県まで同行した樹生とともに充が降りたサービスエリアに行ってみる咲子。レンタカーの車内でペラペラしゃべるのは、思考停止してしまうとどうにかなりそうだから。愛する人が自分から逃げたかもしれないのだ。
「それでも充を信じています」と咲子。樹生が「信じるってどっちですか。不倫してないってこと?逃げたワケじゃないってこと?」と問うと、咲子は「どっちもです」と言う。「だって私にプロポーズしてくれたんですよ」と明かした理由が、深くて切な過ぎる。
■咲子が知る、充の足跡
サービスエリアに到着すると、咲子はかつて充と一緒に来たことがある場所だと思い出した。そして防犯カメラに映っていた充が買い物をしたカレーパン専門店のカボチャ入りカレーパンも一緒に食べたことがあった。
咲子はカボチャが好きだが、充は好きではない。カボチャが入っていると分かって騒いだ思い出。それなのに、なぜ充はまた2つも買ったのか。樹生によると、あずさもカボチャが好きだったという。自分より他人のことを考える、愛する人の面影に胸がギュッとなる。
帰り道、空想の充との会話。1人でこっそりと残り物のカレーにカボチャを入れて食べたことを告白すると、穏やかに充は笑ってくれた。それは「悪いことじゃないけれど隠そうと思った」こと。咲子は「あずささんと毎月会ってたのも、そんな気持ちだった?」と問い掛けると、充の姿は消えた。空想の充が答えを出してくれることはないのだ。
■「充はもう帰ってこない」、咲子が悲し過ぎる直感にいたったワケ
充がお気に入りだったジャケットのポケットにあった花火大会のカップルシートのチケット。咲子は花火大会が苦手だったから、自分と行くために用意したものではない。
秘密が分かるたびに、突き付けられる現実。ただ、事故現場から見つかった充のスマホの暗証番号は、互いの誕生日でも結婚記念日でもなかったが、自分と結婚式を挙げた日にちだった。
それでも、咲子は「充はたぶん帰ってこない」「充はもう帰ってこない」と思っていた。“たぶん”と“もう”で心が揺れているようでもある咲子が、それを悟ったのは、スマホの暗証番号が分かった日よりも前のこと。充が営む喫茶店の後片付けを手伝っていた咲子は、かかってきた電話をとった。最初に描かれたときは、「あれ?切れちゃった」と直人に告げ、直人も「たまにあるんです、いたずら電話」と返した。
しかし本当は違った。ラストで明らかになったのは、電話をかけてきた相手の声は充で、「ごめんね」と一言だけ言って切れたのだ。最初のシーンでは、電話について報告したあとの咲子はすぐにテーブルの拭き掃除で直人に背中を向けた。ラストで映し出された直人に背を向けた咲子の表情は、帰ってこないことを悟った悲しくてつらいものだった。先のシーンで、振り返った咲子が、うっすらと涙目のように見えた理由が一気につながった。
電話のシーンにこれほど重大な秘密があったとは思いもよらなかった。咲子が電話をとったときに直人が「あっ」と動揺したようでもあったのは確かに少し気になった。それでも取るに足りないことだと思っていた。しかし、咲子が夫は帰ってこないのだと思いをはせているころ、直人は充と電話で会話をしていた。その内容から、直人はこれまでも充と電話で話していることが分かった。
充はやっぱり生きている。そのかすかな希望がふくらみながら、もう自分のもとには帰ってこないのだとどん底に突き落とされる。咲子が揺さぶられる新事実と悟りに、見ているこちらも揺さぶられる。そして、なぜ充が姿を消したのかという疑惑も深まった。
本話でもさらに実感した演出の巧みさと、蒼井をはじめとするキャスト陣の演技の細やかさ。1シーンたりとも見逃せない、見応えのある展開に引き付けられる。
SNSでは「蒼井優の静かな絶望の演技、凄すぎる」「電話で充がごめんね、と言ってたとは。そして、咲子が誰にも言わずに過ごしていたとは」「充と直人は何を隠してる?」「考察好きだけど、ひさびさに難しいドラマ」「まさかの展開で全然先が読めない」など、さまざまな投稿で盛り上がった。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

