
「あの子と遊ぶと母親から電話かかってくるの知ってる?」「うちの子を不良にする気なの!って」…そういう噂が教室内で飛び交い、主人公・相原葉子に話しかけるクラスメイトはいなくなっていた。彼女の親は、いわゆる過干渉の“教育ママ”だ。高校受験を控えた中学3年になると、その毒親っぷりはエスカレートし、進路についても本人の意向は聞かず母親が希望校を決めていた。



自分を取り巻くすべての状況をあきらめていた葉子だったが、2学期の席替えで、クラスで唯一の不良・伊藤尚と隣の席になる。決して交わることのない“ガリ勉ちゃん”と“不良くん”の組み合わせに、化学反応が起こる。ある日、彼が小テスト用紙を折って作った“紙飛行機”を窓から飛ばした。風に乗って自由に空を飛んでいく紙飛行機に、葉子は一瞬目を奪われる。それは、彼女の心に本人も意識しないほど小さな、でもフワッと広がっていくような新しい風が吹き込まれた瞬間だった。
■飛ばない紙飛行機と“不良くん”との縮まる距離
その日の帰り道、葉子は家に帰るのをためらっていた。土手に座り、進路希望調査の用紙をため息交じりに眺める。母親にそれを見せるのが憂鬱だった。彼女は紙飛行機を折って飛ばしてみたが、風を切ることも宙を舞うこともなく、全く飛ばない。それは、空が小さく息苦しく、自由に飛び立つことができない葉子の現状を表しているようだった。
そこに現れたのは伊藤だった。真逆のレッテルを貼られた2人の距離は次第に縮まっていくが、このあと、青春ならではのあらゆる障害によって引き離されていく。果たして2人は一体どうなってしまうのか。
この作品を描いたのは、「貧女ハウスへようこそ」(小学館)や「実録怪談 本当にあった怪奇村/新犬鳴トンネル」(竹書房)などの代表作を持つ三ノ輪ブン子(@minowabunko)さん。最近は主にホラー漫画を描いているが、派手な絶叫シーンだけでなく、静かな恐怖や登場人物の細やかな心理描写にも長けた漫画家だ。
■実は作者の実体験!? 読者を惹きつける人間ドラマ
本作について三ノ輪さんに話を聞くと、実は自身の中学時代の思い出に着想を得ているという。当時、席替えで隣になったヤンキーがよく話しかけてきたそうで、「たぶん彼は出席日数のために学校に来ていたけど授業がつまらなくて、隣の席にいた私が唯一話しかけられる存在だったようで…!でも受験シーズンだったのでこちらはなかなか迷惑でした(笑)」と振り返る。モデルとなった彼も伊藤のように穏やかな性格で、怒っているところは見たことがなかったそうだ。
本作を読んだ読者からは、「ホラー漫画がおもしろくて読ませてもらっていたんですけど、こういうのも描けるんですか…!!すごくおもしろかったです!」といった声や、「ストーリーがいい!」という感想が届いている。作中で喜怒哀楽の感情を描くのを得意とする三ノ輪さんは現在、電子雑誌「comicタント」(ぶんか社)にて、都市伝説系漫画「ただのうわさです」(原案:飯倉義之)を掲載中。ホラー漫画家として知られる三ノ輪さんの真骨頂も、ぜひチェックしてみてほしい。
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