
監修医師:
大坂 貴史(医師)
京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。
コレラの概要
コレラは、人類の歴史の中でも繰り返し大流行を起こしてきた代表的な感染症のひとつです。原因となるのはコレラ菌という細菌で、特にO1型とO139型のコレラ菌が産生するコレラ毒素が病気を起こします。コレラ菌に汚染された水や食べ物を口にすると、胃酸で殺菌されずに残った菌が小腸にたどり着いて増え、毒素を出すことで強い下痢や嘔吐を引き起こします。軽い症状で済む場合もありますが、重症になると短時間で大量の水分と塩分を失い、命に関わる危険があります。治療は経口補水液による水分と電解質の補給が重要となります。抗菌薬を用いることもあります。効果的なワクチンはまだ開発されていないため、コレラを予防するためには衛生的な水と食べ物を確保することが大切です。
コレラの原因
コレラの原因はコレラ菌です。コレラ菌には200種類以上の型がありますが、人間に典型的な症状を起こすのは O1型とO139型の2種類に限られます。さらに、この2種類の中でもコレラの原因となるコレラ毒素を産生するのは一部です。
感染の多くは、汚れた水や食べ物を通じて起こります。特に上下水道が整っていない地域や、衛生状態が悪い場所での感染が多く報告されています。魚介類が原因になることもあります。日本での感染例はほとんどが海外で感染して持ち帰った輸入感染症です。
口から入ったコレラ菌が胃酸で殺菌されないまま小腸に到達すると、小腸の粘膜に付着して増殖します。そして産生されたコレラ毒素が小腸の粘膜細胞を刺激して電解質と水の大量分泌を促すため、強い下痢を起こします。慢性的に胃炎を起こしている人や胃を切除している人は胃酸が少ないもしくはないため、より重症化しやすいと言われています。

