私がパンを好きな理由|カレー沢薫

私がパンを好きな理由|カレー沢薫

先日、推しのぬいぐるみを持ち歩き飲食店などで撮影を行う「ぬい活」を店側は迷惑がっているという話が議論になっていたが、これはラブホでの女子会をラブホ側は迷惑がっていると言われた時と同じである。

まず、主張している人は飲食店やラブホ関係者ではなさそうという点が共通しており、あと主語がでかくなっているところも同じだ。

確かに迷惑がっている店もあるだろうし、禁止をしている店もある。だが女子会プランを出したラブホがあるように、逆にぬい活を歓迎している飲食店もある。

施設側もぬいブームを商機と捉え、ぬいとの旅行ブランを出すホテルなども出始めているそうだ。

推し活ブームは基本的にオタクにとって追い風である。「総T.M.レボリューション状態」と言おうとしたが、調べたところあれは向かい風だそうだ。

しかし、私は性格上物を大事にできないのでグッズ類は極力持たないようにしているし、特にぬいぐるみなどの布製品は厳しい。

私がぬいと外出したら、帰宅時にはぬいの彩度が2段階ぐらい下がっていると思うし、最悪「なくす」が想定される。

最終的に「飲食店のテーブルに出してはいけないもの」と化し、ぬい活禁止店舗を増やすだけだろう。ちなみに旅行プランなども外出が地雷の私には無関係だ。

せっかくの推し活ブームなのに提供サービスを利用できない、むしろ何ならできるんだという感じだが、私は基本的に「デジタル推し活」をしている。

グッズを汚すか壊すかなくすかしかできない哀しきモンスターなのだとしたら、モンスターが触れないようにすればいいのだ。

私は、ソシャゲには金を惜しまない方である。ここなどに書いているのは氷山の一角であり、人間でいえば乳頭の先だ、実際は書けないレベルの金を使っている。

いくら金をかけても所詮データと言われるが、むしろ手に入れられるものがデータだからこそ私は遠慮なく金を出せると言っていい。

もしガチャで得られるものが物理だったら、それが自分の手で汚れたり壊れたりすることを考えて躊躇してしまうが、私の汚手(よごれて)が届かないとわかっているものなら安心して課金できる。

実際はスマホの画面がバキバキなど、完全に無傷とはいかないのだが、そのものが汚れているわけではないのでセーフだ。

そして最近、デジタル推し活をも超える「概念推し活」も生まれているらしい。

瞑想によって生まれた宇宙空間に推しの顔をオーバーラップさせる推し活を想像してしまうが、実は普通の推し活よりも手軽といえるのが「概念推し活」である。

グッズを買ったり、イベントに参加するなどの直接的推し活ではなく、日常生活の中に推しのエッセンスを取り入れるのが概念推し活だ。

例えば、推しをイメージしたメイクや香水、アクセサリーなどを身につけたりするのがそれだ。

公式が販売している推しのコラボ香水をつけるという意味ではなく、セザンヌでも推しをイメージした色使いをしているならそれは概念推し活なのである。

つまり、昨今のオタクが米津玄師の曲を推しカプのイメソンにしがちなように、推しと直接関係はなくても、推しが感じられればそれは総じて概念推し活なのである。

つまり私が沢庵を食っていたら、それは沢庵が好物だった土方歳三をイメージした概念推し活だし、岩下の新生姜を買うのも推しのメンカラを意識した概念推し活である。

もし推しが生物であれば「呼吸」すら「推しとおソロの行動」として推し活になってくる、推しが踊っていたダンスを踊るのと大差ない。

「俺が推し活と言っているのだから誰が何と言おうが推し活」という強い意志だけを必要とする推し活であり、ついに何が推し活かは自分が決める時代の到来ということだ。

物を大事にできない人間にとっては、愛でて大切にする以外用途がないグッズより、食べ物など生きていく上で絶対必要な行動の延長戦でできる推し活の方が助かるので、概念推し活は広めていきたいと思う。

実際、スーパーで買い物をするときは、推しがCMをしている商品を積極的に買うようにしている。

パッケージ自体に推しの姿があるわけではないので、これも概念推し活と言えるのかもしれない。

このように生活のついでにできる推し活は非常に助かるので、推しはどんどんCMに出たり、軽率にコンビニなんかとコラボしてほしい。

ただ、CMと言っても「車」とかになると安易に手を出せないのに、推しにはパンのCMやパンとのコラボを積極的にやってほしいと思う。

私はパンが好きなのだ。

配信元: 幻冬舎plus

提供元

プロフィール画像

幻冬舎plus

自分サイズが見つかる進化系ライフマガジン。作家・著名人が執筆するコラム連載、インタビュー、対談を毎日無料公開中! さまざまな生き方、価値観を少しでも多く伝えることで、それぞれの“自分サイズ”を考え、見つける助けになることを目指しています。併設のストアでは幻冬舎の電子書籍がすぐに立ち読み・購入できます。ここでしか買えないサイン本やグッズ、イベントチケットも。