誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに、そんな「待つ時間」をテーマにして選曲&言葉を綴っていただきます。
夜は光ではなく気配によって明るくなるとか、君は物知り顔で新しい感覚を見つけると、僕にさりげなく問いかけて
濡れた舗道に散る記憶の残像は、花ではなく永遠に発見されない鉱石のように冷たい
間延びした人影は互いを避けながら、ひとつの潮流をつくり、きっと誰も立ち止まらないのに
不思議な静寂を湛()えて、僕は君との夏を手招き
音は風にならない、炎にもならないけれど
微かに震えた胸の奥深くで、名もない星はひとつ灯るだけ
その淡い輝きは、世界を照らすためではなく闇を消すためでもない
ただ、君と僕という果てしなく曖昧な存在を、かろうじてこの夜へ結び留めるための光なのかと
スクランブル交差点に集まる熱狂は、まるで夢の廃墟のようで、君と僕は遠回りをする約束をした
無数の憧れが積み重なり、無数の孤独が磨き上げた水晶のような場所
乾いた表面を歩くたび、僕は少しずつ自我の輪郭を失い、代わりに見えない羽根の重さだけを憶えてゆく
美しいものだけは沈黙して
朝焼けのひとつ手前の群青
ガラスに滲む雨の痕跡
誰にも届かなかった眼差し
希望という言葉は口にせず、ただ鼓動の深さだけを信じて、静かに透明になって
感情は言葉を脱ぎ捨てて、光だけが血液のように身体を巡り始める
やがて曲は終わる
でも夜は終わらない
それは希望ではなく、美しさでもない
世界がどれほど無関心であっても、内側にある情熱の火だけは消さずに歩いてゆく
誰にも知られない、ひとつの品位なのだから
見えない灯火だけを胸に抱いた君と僕の行き先は問わず、そっと美しく通り過ぎさせて

Hana Hope『Hearts Glow』(2026年、ソニー・ミュージックレーベルズ)

