糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの働きが不足することで、血液中のブドウ糖が慢性的に高くなる病気です。初期にははっきりした症状が出にくく、健康診断や人間ドックの血液検査で初めて気付く方も少なくありません。一方で、高血糖が続くと、網膜症や腎症、神経障害といった合併症だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化に関わる病気につながることがあります。糖尿病の診療においては、血糖値やHbA1cを確認し、必要に応じて追加の検査を行いながら、今の状態を正しく見きわめていくことが大切です。診断の基準に達していなくても、将来の発症リスクが高い段階があるため、早めに生活習慣を見直すことが大切です。
この記事では、糖尿病と関係する血液検査の項目やそれぞれの数値の見方を解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「糖尿病」は「血液検査」のどの項目を見て診断されるかご存知ですか?【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター
糖尿病と血液検査の関係

血液検査のどの項目が糖尿病に関係していますか?
糖尿病の診断や状態の確認で中心になる項目は、血糖値とHbA1cです。血糖値は、採血時点の血液中のブドウ糖の濃さを示します。空腹時血糖や随時血糖、必要に応じて行う75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値が、診断の判定に使われます。HbA1cは、過去1〜2ヶ月ほどの平均的な血糖の状態をみる指標で、健康診断でもよく測定されます。あわせて、脂質や腎機能、肝機能、電解質、血算、尿検査なども確認し、糖尿病による影響や合併症の手がかりがないかをみていきます。
HbA1cの数値で何がわかりますか?
HbA1cは、ここ1〜2ヶ月ほどの平均的な血糖の状態をみるための検査です。血糖値は食事や運動、採血した時間帯などで変わりますが、HbA1cはそうしたその場の変動に左右されにくいため、ふだんの血糖が高めなのかをつかむのに役立ちます。糖尿病の診断においては、HbA1c 6.5%以上が一つの目安です。ただし、HbA1cだけを繰り返して糖尿病と決めることはできず、空腹時血糖や随時血糖などの血糖値とあわせて判断します。また、鉄欠乏や溶血、肝硬変、透析中などで、実際の血糖の状態とずれることがあります。
血糖とは何ですか?
血糖とは、血液中に含まれるブドウ糖のことです。ブドウ糖は、身体を動かすための大切なエネルギー源で、特に脳にとって欠かせません。健康な状態においては、膵臓から分泌されるインスリンの働きによって、血糖は一定の範囲に保たれています。ところが、インスリンの分泌が足りなかったり、うまく働きにくくなったりすると、血液中にブドウ糖がたまり、高血糖が続きます。この状態が慢性化したものが糖尿病です。
空腹時血糖と血糖の違いを教えてください
血糖とは、血液中にあるブドウ糖のことで、空腹時血糖は、10時間以上食事をとらない空腹の状態で測った血糖を指します。食事の影響を受けにくいため、食後の上昇が加わっていない状態の血糖をみるときに使われます。これに対して、食後血糖は食事の後に測る血糖で、食後にどのくらい血糖が上がるかをみるときに使われます。随時血糖は、食事の時間に関係なく、その時点で測った血糖です。このように、血糖は測るタイミングによって意味が変わるため、検査結果を見るときは、空腹時なのか、食後なのか、随時なのかも併せて確認することが大切です。
編集部まとめ

糖尿病は、初期には自覚症状が出にくい一方で、高血糖が続くと目や腎臓、神経、心臓、脳など全身に影響が及ぶことがあります。そのため、健康診断で血糖やHbA1cを指摘されたときは、症状がない場合でも結果をそのままにせず、今の状態を正しく確認することが大切です。
糖尿病の診断は、血糖とHbA1cを組み合わせて判断し、必要に応じて追加の検査も行います。また、診断基準に達していない段階でも、血糖が少し高めであれば、将来の糖尿病や動脈硬化につながることがあります。早い段階で食事や運動の習慣を見直すことは、発症予防や重症化予防に役立ちます。
参考文献
『糖尿病診断の指針』(日本糖尿病学会)
『糖尿病標準診療マニュアル2025』(日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会)
- 「痛風の治療法」はご存知ですか?治療期間や通院頻度についても解説!【医師監修】
──────────── - 「膵臓がんは早期発見」できる?なりやすい人と生存率を高める6つの検査を医師が解説!
──────────── - 糖尿病の『1型』と『2型』の違いはご存じですか? 進行早い“劇症1型”も医師が解説
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