風邪をひいて「扁桃腺が腫れている」というのは、よく聞く症状です。
これは扁桃腺が炎症を起こす扁桃炎という病気ですが、扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)とは違うのでしょうか。ここでは扁桃周囲膿瘍と扁桃炎の違いを解説します。
扁桃周囲膿瘍は、激しい痛みを伴い、ときには命に関わるリスクもある病気です。扁桃周囲膿瘍の原因・治療法を紹介します。
※この記事はメディカルドックにて『「扁桃周囲膿瘍の治療」は手術が必要?原因や治療について医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
和佐野 浩一郎(医師)
慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。2018年より独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター聴覚・平衡覚研究部室長。日本耳鼻咽喉科学会専門医・指導医・補聴器相談医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、日本耳科学会耳科手術暫定指導医、頭頸部がん専門医・指導医、日本がん治療認定医機構日本がん治療認定医、日本気管食道科学会気管食道科専門医。
扁桃周囲膿瘍の原因と治療法

扁桃周囲膿瘍の原因はなんですか?
原因は、インフルエンザウィルス・レンサ菌・ブドウ球菌などの細菌に感染することです。
扁桃炎とは違い、両側にある扁桃の左右どちらか一方に炎症が集中するのが特徴です。
診断はどのように行われるのですか?
喉の奥を見ることで、診断します。左右どちらかの扁桃が赤黒く腫れていて、表面に白い膜がついていると扁桃周囲膿瘍と診断されます。目視で膿瘍が確認できないときには、CT検査で膿瘍の確認が可能です。
扁桃周囲膿瘍の場合は、原因となる菌やウィルスの種類を判別する必要があります。これには、針を刺して膿瘍の1部や粘膜を採取して調べることとなります。
また、病状の程度を確認するためは、血液検査が有効です。
薬物投与のみで治療できますか?
膿瘍がない扁桃炎や扁桃周囲炎ならば、抗菌薬の投与のみで治療が可能です。炎症の度合いが高く食事摂取も難しい場合は、入院して抗生剤の投与や点滴を行います。
しかし、扁桃周囲膿瘍の場合は、溜まった膿を出さなければなりません。注射針を刺して溜まった膿を吸引する処置を行いますが、1回の吸引だけで膿を取りきれないことも少なくありません。
この場合は2~3回と吸引することもありますが、切開手術が一般的です。切開手術を行って再び膿が溜まらないために、術後に数日は通院が必要となります。また、入院が必要となることもあります。
手術後の飲食はいつごろから可能ですか?
手術後の痛みが和らげば、飲食が可能になります。
手術後は刺激物や硬いものは避け、粥などの柔らかい食事を摂るようにしてください。症状が重く飲食が難しい場合は、入院して点滴で栄養を補充します。食事ができるようになれば、病院では粥食が提供されます。
普通の食事が摂れるようになれば退院です。通常、入院期間は3日~1週間程度です。
編集部まとめ

喉の奥の片側だけに痛みがある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。もしかすると扁桃周囲膿瘍かもしれません。
悪化すると食事が摂れなくなり、回復が遅れてしまいます。早めの受診が重症化を防いでくれます。
また、扁桃周囲膿瘍は再発のリスクの高い病気です。症状が治まったからといって、通院をやめることはしないでください。
医師の診断のもと、きちんと完治させることが大切です。
幼少期において、扁桃はウィルスや細菌から身体をまもってくれる器官です。しかし、大人にとっては扁桃はさほど重要な器官ではなくなります。
扁桃炎や扁桃周囲膿瘍になった場合は、扁桃線の摘出手術も検討しましょう。
参考文献
扁桃周囲炎と扁桃周囲膿瘍|MSDマニュアル家庭版
当科における扁桃周囲膿瘍再発例の検討|東京女子医科大学附属第二病院 耳鼻咽喉科
口蓋扁桃摘出術|順天堂大学医学部附属順天堂医院 耳鼻咽喉・頭頸科

