2026年7月28日 半導体ショック|辛酸なめ子

2026年7月28日 半導体ショック|辛酸なめ子

東京都現代美術館で開催された、「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」に最終日に行くことができました。グラフィックデザイナー出身で、アメリカを代表する絵本作家であるエリック・カールの回顧展。穴あけパンチに着想を得て、あおむしが食べて穴があいた表現を思いついたようです。絵も、色を塗った紙をコラージュしていて、手順が凝っていました。1929年から2021年まで生きたので相当長生きです。80代の時に描いた絵本も、センスや感覚が衰えていませんでした。青虫はうっすら毛が生えていて、毛虫と青虫のハイブリッドのようです。子どもの時たくさん絵本を買い与えられたり図書館で借りてきたりしていましたが、不思議に「はらぺこあおむし」はノーチェックでした。多分私が芋虫系が苦手だったので親がこの絵本はスルーしたのかもしれません。でも、このあおむしもさなぎの時期を経て、蝶になって綺麗な羽で羽ばたいていくのでしょう。

 

エリック・カールの制作道具。色を塗った紙を切り貼りしていて独特の風合いが出ているようです。この使われている色もエリック・カールの作品を連想させます。

2015年の絵本「ありえない」より「ネズミよ ありえない だろ?」のページ。ネズミがネコのリードを引っ張っています。撮影可能エリアにあって猫好きとしてうれしいです。

絵本に逃避したくなるのは、最近買った株が次々下がりまくっているから……。半導体ショックでメンタルを保つのが大変です。
含み損がエグいです。毎日Xなどで半導体株について情報収集していて、半導体で頭がいっぱいです。

まず、最近アメリカや日本の半導体、特にメモリ株が急落した原因について。

・中国のAIスタートアップ「Moonshot AI」が高性能な新型モデル「Kimi K3」を発表。低コストかつ高性能な中国製AIの登場で、アメリカのAIモデルやAI投資の規模、半導体の価値が揺らいだ、というのがまずありました。

・モルガン・スタンレーの最新レポートでメモリブームが「転換点に近づいている」と警告。でも記事全文をよく読むとそこまで悲観的ではないという説が。そして少し前には、モルガン・スタンレーの別のアナリストが、今のメモリ株はむしろ買い場、という記事を出していました。影響力のあるメディアなので、ブレない記事を出してほしいです。

・中国CXMTが、株を上場したとたんに急騰し世界4位のDRAMメーカーに浮上。DRAMとは電源を切ったら記憶が消える揮発性のメモリでパソコンの作業用に使われます。中国の勢力の台頭で、Samsung・SK hynix・Micronなどが脅かされて株が下がってしまいました。強気のCXMTはアップルとの価格交渉で高額な価格を提示。勢いがすごいです。

・中国で上海拠点の国有系企業が国産DUV露光装置の製造を開始したと報じられ、これまでメインに作ってきたオランダのASMLの株が急落。DUVとは「液浸型深紫外線」の略で、波長200~350nm程度の光でシリコンウエハーに微細な回路を焼き付ける(露光する)技術のようです。ペンとかで絵や文字を書いている自分が石器時代に思えてきます。

といっても、 ASMLの技術はまだ中国が追随できないほどすごいです。半導体の回路を作る機械は位置を1秒間に2万回も確認。超高速なのに原子1個分もズレないとか。

 

中国の台頭によって日米のAIや半導体業界の先行きが不安になって、株が売られすぎてしまっているようです。CXMTの株価の急騰ぶりや期待値はすごいですが、露光装置の台数は少なく、技術も少し前のものだと、ゴールドマン・サックスが分析していました。半導体業界の株価下落は、「CXMT上場・DUV量産」に対する心理的過剰判断だそうです。中国を過剰に意識しすぎて、投資家たちが正気を失いかけているのでしょう。落ち着いてください! と言っても届かないと思いますが……。心に翻弄されない修行の機会だと思って、耐えようと思います。

それにしても半導体業界のハイレベルでスケールが大きすぎる戦いは、神話の世界のようです。損しながらも、少しでも体験できたのは貴重なことかもしれません。

配信元: 幻冬舎plus

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