発がん性リスクがあるとされる加工肉も、食べる量や頻度によってリスクの考え方は変わります。「まったく食べてはいけない」ということではなく、日常的にどのくらい食べているか、どのような食べ方をしているかが大切です。少し意識を変えるだけで、健康への影響を考慮した食べ方に近づけます。ここでは、摂取量の目安と食べ方の工夫について解説します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
加工肉(ハム・ソーセージ)の発がん性リスクと腸内環境の関係
発がん性リスクを考えるうえで、腸内環境との関係も重要なポイントです。腸内環境の乱れは、有害物質の影響を受けやすくする要因になるとされています。このセクションでは、腸内環境と加工肉の関係について解説します。
加工肉が腸内環境に与える影響
加工肉を多く食べる食生活は、腸内細菌のバランスに影響を与える可能性があるとされています。腸内には数百種類・数百兆個以上ともいわれる細菌が存在しており、これらは「腸内フローラ(腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の多様性)」と呼ばれます。腸内フローラのバランスが乱れると、免疫機能や代謝に影響を及ぼす可能性があることが知られています。
加工肉に含まれる動物性脂肪や添加物は、腸内環境との関連が研究されています。特に、加工肉を多く食べる一方で食物繊維の摂取が少ない食生活では、腸内細菌叢の多様性が低下する、つまり腸内フローラのバランスが崩れる可能性があると考えられています。
また、腸内環境は食事内容全体の影響を受けます。加工肉だけが問題になるわけではなく、野菜や果物、全粒穀物などの摂取量が少ない場合にも、腸内フローラのバランスが変化する可能性があります。そのため、加工肉の摂取量だけでなく、食生活全体を見直すことが重要です。
さらに、腸内で産生される二次胆汁酸(脂肪の消化を助ける液が、腸内細菌によって変化した物質)が、腸粘膜に対して影響を及ぼす可能性も指摘されています。加工肉に含まれる動物性脂肪の摂取量が増えると、胆汁酸の分泌量が増加し、その一部が腸内細菌によって二次胆汁酸へ変換されます。二次胆汁酸と大腸がんとの関連を示唆する研究も報告されていますが、その仕組みについては現在も研究が続けられています。
腸内環境を守るための食生活の考え方
腸内環境を健全に保つためには、加工肉の摂取を適度に抑えつつ、腸内フローラを整える食品を意識的に取り入れることが大切です。
発酵食品(ヨーグルト、納豆、キムチ、みそなど)は、腸内細菌叢のバランスを整える一助となる可能性があるとされています。また、食物繊維(野菜、豆類、玄米、海藻など)は腸内細菌の栄養源となり、健康的な腸内環境の維持に役立つと考えられています。
オリゴ糖(玉ねぎ、ごぼう、バナナなどに含まれる)も、腸内細菌の栄養源となる成分として知られています。こうした食品を日常的に取り入れることで、腸内環境を良好に保つことにつながる可能性があります。
また、水分を十分に摂取することや、適度な運動を習慣化することも腸の健康維持に重要です。運動不足や不規則な生活習慣は便通の乱れにつながることがあるため、食事以外の生活習慣にも目を向ける必要があります。
繰り返しになりますが、加工肉を食べる場合には、サラダや野菜スープ、海藻類などを組み合わせることで、食物繊維を補いやすくなります。加工肉を完全に避けるのではなく、腸内環境を意識した食品をあわせて取り入れることが、現実的な食生活の工夫といえるでしょう。
まとめ
加工肉(ハム・ソーセージ)には発がん性リスクと関連する物質が含まれており、IARCによってグループ1に分類されていることは事実です。しかし、少量を時々食べる程度であれば過度に心配する必要はなく、大切なのは「食べ過ぎないこと」と「食べ方を工夫すること」です。添加物については、食品表示ラベルを活用して選ぶことで、摂取量を抑えることができます。また、身体にはもともと解毒の仕組みが備わっており、食事・運動・睡眠といった日常の生活習慣を整えることでサポートすることが可能です。加工肉に関して血便や便潜血陽性、排便習慣の変化、原因不明の体重減少、貧血などの症状がある方や、40歳以上で大腸がん検診を一度も受けたことがない、家族に大腸がんの既住がある方は消化器内科などの医療機関に相談されることをおすすめします。
参考文献
消費者庁「食品表示基準について」
国立がん研究センター「赤肉・加工肉のがんリスクについて」
国立がん研究センター「最新がん統計」
- 『大腸ポリープ』ができやすい人の特徴 「がん」のリスクや治療の流れも医師が解説
──────────── - “毎日の飲酒習慣”がどれだけ「大腸がんの発症リスク」を高めるかご存じですか?【医師監修】
──────────── - 便潜血検査は「陰性」なのに見つかった『大腸がん』… 医師が語る“見逃し”の現実
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