「放射線治療の副作用」となる症状はご存知ですか?医師が徹底解説!

「放射線治療の副作用」となる症状はご存知ですか?医師が徹底解説!

放射線治療は、手術と薬物治療とともにがん治療において3つの柱となる治療法です。しかし、放射線治療の際には病変の周りの正常な組織にもその影響が現れます。今回の記事では、放射線治療の急性期・晩期の反応を解説し、その対応も述べていきます。ぜひ参考にしてみてください。

※この記事はメディカルドックにて『「放射線治療の後遺症」は何がある?副作用を含め対処法を解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

木村 香菜

監修医師:
木村 香菜(医師)

名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

放射線治療の急性期反応

放射線治療中から終了直後の期間に現れる副作用のことを、急性期反応と呼びます。
この急性期反応は、照射部位や治療内容によって異なります。
放射線治療による急性期反応は、全身的な副作用と、局所的なものに分けられます。

全身的な急性期反応

疲労感や倦怠感などの症状が現れることがあります。
放射線治療を開始してから2、3日で、一時的に吐き気や食欲低下、身体がだるいといった症状が現れることがあります。この症状を放射線宿酔(しゅくすい)といいます。しかし、放射線治療に身体が慣れてくると、1週間程度でこうした症状は改善していきます。

また、骨盤や胸骨、椎体などの広い範囲に放射線が照射されると、骨髄機能が低下し、白血球や赤血球、血小板が減少する場合があります。しかし、放射線治療のみの場合には、治療を中断しなければならないほどになることは少ないです。

局所的な急性期反応

放射線治療の対象となる部位によっては、以下のような急性期反応が出ることがあります。ここでは、代表的なものを取り上げます。

放射線性皮膚炎

放射線があたる部位に一致して、放射線治療中に皮膚炎が生じることがあります。皮膚の乾燥や赤みがみられ、かゆみや軽度の痛みなどが症状となります。重度の皮膚炎の場合は皮膚のただれ(びらん)などがみられることもあります。放射線治療中には、皮膚の保湿を心がけることと、強くこするなどといった刺激は避けることが大切です。

口腔粘膜炎

首や口のあたりのがん(頭頸部がん)に対する放射線治療を行う場合、口や喉の粘膜に影響が現れます。軽症の方もいますが、粘膜に潰瘍ができてしまい、食事を変更する必要が出てくる場合もあります。症状の悪化を予防する方法として、口の中を清潔に保つことがあります。症状を和らげるために鎮痛薬を使用したり、食事量低下を補うために栄養補助ドリンクを飲んだりすることもよいでしょう。

下痢

腹部に放射線治療をする場合、治療から2週間で下痢や吐き気、嘔吐、食欲低下などの症状が出現します。前立腺がんや子宮頸がんの治療の際には、特に直腸が影響を受けることはほぼ必須です。

放射線治療の晩期反応

放射線治療の晩期反応は、急性反応が改善してから2ヶ月〜数ヶ月経って出現するものです。放射線治療の晩期反応としては、以下のようなものがあります。

放射線肺臓炎

乳がんや肺がん、食道がんなどの治療では、肺に放射線が照射され、放射線肺臓炎が起こることがあります。抗がん剤と放射線治療を同時に併用した場合や、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺線維症などの方では、特に放射線肺臓炎を発症する可能性が高まります。

しかしながら、CTなどの画像所見で肺炎が疑われるものの、症状はほとんどないことも多いです。一方で、特に放射線が照射された範囲が広い場合には症状が現れることもあります。例えば、咳や息切れ、胸の不快感、呼吸のしづらさといったものです。重症の場合には酸素投与が必要となる場合もあります。
治療法は、ステロイド投与や酸素投与などです。気管切開や気管内挿管を要することもまれにあります。

放射線脊髄症

放射線が脊髄に照射されると、脱力感が生じたり感覚が鈍くなるという脊髄炎症状が現れることがあります。

なお、放射線治療終了後 1〜6ヶ月後の亜急性期に、一過性放射線脊髄症(レルミット徴候)が生じることもあります。これは、頸部を曲げた際に、電撃が走るような痛みが手足に広がる症状のことです。この症状は自然軽快するので、特に治療の必要はないと言われていますが、ステロイド治療が有効なこともあります。

しかしながら、晩期に放射線脊髄症は放射線治療によって起こる障害のなかでも重いものの一つで、いったん発症すると回復する見込みは少ないです。
放射線脊髄症を防ぐために、脊髄にあたる放射線の量を制限した治療計画が立てられています。

唾液腺照射による口腔内乾燥

頭頸部がんの放射線治療では、耳下腺などの唾液腺への照射がほぼ避けられません。
唾液腺は唾液を分泌している組織なので、放射線治療によって特に晩期に口腔内乾燥が問題となることがあります。

どれくらい唾液腺がダメージを受けるかは、放射線がどの程度照射されたかや、個人差もあります。唾液腺への照射線量を低下させるために、強度変調放射線治療(IMRT)などの技術が取り入れられています。

口腔内乾燥が起こると、唾液が出づらいために食事意欲が低下したり、むし歯になりやすくなったりするという問題が起こります。口の中を清潔に保つことや、定期的な歯科チェックなどがすすめられます。また、ピロカルピン塩酸塩(サラジェン®️)が処方されることもあります。

その他にも、晩期有害事象として、皮膚の潰瘍が残ったり、骨の壊死や骨折、骨や軟骨組織の成長・発達異常、脊椎の側弯症、関節の拘縮、リンパ浮腫などもあります。
また、動脈硬化の原因になったり、甲状腺機能低下症がみられる場合もあります。

配信元: Medical DOC

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