「痛気持ちいいマッサージ」は危険? 翌日に現れる“揉み返し”の原因【医師監修】

「痛気持ちいいマッサージ」は危険? 翌日に現れる“揉み返し”の原因【医師監修】

筋繊維の損傷は、施術直後に強い痛みとして現れるとは限りません。そのため「問題なかった」と感じやすい一方で、身体の内部では変化が静かに進んでいることがあります。このセクションでは、損傷が繰り返されることで生じる「線維化」や慢性的な炎症、さらに深部組織への影響と日常生活への波及について解説します。

松繁 治

監修医師:
松繁 治(医師)

経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医

強い力でのマッサージと揉み返しの罠:そのメカニズムと症状

マッサージを受けた直後は身体が軽くなったように感じたにもかかわらず、翌日になると施術を受けた部位がズキズキと痛んだり、重だるさが強くなったりした経験がある方も多いのではないでしょうか。「しっかり効いた証拠」「悪いものが出ているから大丈夫」と説明されることもありますが、実際には身体の組織への過度な刺激や炎症反応が関与している可能性があります。

特に、痛みを我慢しながら受けるような強いマッサージや、「痛いほど効く」と考えられている施術では、筋肉や周辺組織に過剰な負担がかかることがあります。その結果として「揉み返し」のような症状が現れることがあります。

揉み返しは単なる不快感ではなく、身体が発している重要な警告サインのひとつです。適切に理解せずに放置したり、「もっと強くほぐせば改善する」と考えて繰り返し強い刺激を受けたりすると、かえって症状を長引かせる原因になることもあります。

このセクションでは、揉み返しの正体と発生メカニズム、そして混同されやすい「好転反応」との違いについて詳しく解説します。

揉み返しの正体:炎症反応と筋繊維のダメージ

揉み返しとは、マッサージ後に施術部位の痛みやだるさ、圧痛(押したときの痛み)、熱感、腫れなどが現れる状態を指します。多くの場合、施術当日よりも翌日から翌々日にかけて症状が強くなり、「かえって悪化したように感じる」と訴える方も少なくありません。

この現象の背景には、筋肉や筋膜、結合組織などへの過度な物理的刺激が関与していると考えられています。強い圧迫が加わることで、微細な組織損傷や炎症反応が生じる場合があり、それが痛みやだるさの一因になる可能性があります。

イメージとしては、運動不足の状態で急に激しい運動を行った翌日に筋肉痛が起こる状態に近いものです。しかし、運動による筋肉への刺激は身体が自ら発生させた力によるものであるのに対し、揉み返しは外部から強制的に加えられた圧力によって生じる点が異なります。

損傷した組織では修復のために炎症反応が始まります。炎症が起こると、血管が拡張して血流が増加し、免疫細胞が集まります。この過程で炎症性物質が放出されるため、痛みや熱感が生じるのです。

施術中には血流の増加や神経への刺激によって一時的に気持ち良さを感じることがあります。また、アドレナリンなどの作用によって痛みが感じにくくなっている場合もあります。しかし施術終了後に身体が落ち着くと、損傷した組織の炎症反応が徐々に表面化し、翌日以降に痛みとして認識されるようになります。

揉み返しの症状としては、以下のようなものがみられることがあります。

・施術部位を押したときの強い痛み
・筋肉を動かした際の違和感や痛み
・重だるさや疲労感
・局所的な熱感や腫れ
・肩や首、腰などの動かしにくさ
・筋肉の張り感やこわばり

症状の程度には個人差がありますが、通常は24〜48時間程度でピークを迎え、その後数日かけて改善していくことが多いとされています。

ただし、強い圧迫によって組織への負担が大きかった場合、痛みが長引くこともあります。特に高齢の方や筋肉量が少ない方、慢性的な疲労が蓄積している方では、組織の回復に時間がかかる傾向があります。

また、「毎回揉み返しが来るくらい強くないと効いた気がしない」と感じている方もいますが、これは身体が施術に慣れているのではなく、繰り返し組織にダメージを受けている可能性も考えられます。強い痛みを伴う施術が必ずしも効果的とは限らないことを理解しておくことが重要です。

「好転反応」との違いと見分け方

揉み返しとよく混同される言葉に「好転反応」があります。施術後に体調の変化が現れた際、「身体が良くなる過程だから大丈夫」と説明されることがありますが、この考え方には注意が必要です。

好転反応とは、代替医療や一部の施術分野で用いられる概念であり、「身体が回復する過程で一時的に不調が現れる状態」と説明されることがあります。しかし、この概念については医学的に統一された定義がなく、科学的根拠も十分には確立されていません。

一方で、一般に揉み返しと呼ばれる症状は、筋肉や周囲組織への過度な刺激や、それに伴う炎症反応などが関与している可能性があると考えられています。身体に加わった負担を示すサインのひとつと捉えることができます。

そのため、施術後に強い痛みや熱感が出ているにもかかわらず、「これは好転反応だから問題ない」と自己判断してしまうことは避けるべきです。場合によっては組織損傷を悪化させる恐れもあります。

見分ける際のひとつの目安としては、症状の内容と程度が挙げられます。

施術後に軽い眠気や脱力感、リラックスした感覚が現れることは比較的よくみられる反応です。また、身体が温まったように感じたり、一時的な疲労感を覚えたりすることもあります。

一方で、以下のような症状がみられる場合は揉み返しを疑う必要があります。

・施術部位を触ると強く痛む
・筋肉を動かすだけで痛みが走る
・赤みや熱感がある
・腫れや圧痛が続いている
・症状が日ごとに悪化している
・しびれや感覚異常を伴う

特に、痛みが数日以上続く場合や、しびれ・脱力感・可動域制限などがみられる場合には、単なる揉み返しではなく神経や筋組織へのダメージが関与している可能性もあります。

また、揉み返しが起きている最中に再び強いマッサージを受けることは、傷ついた組織にさらなる負担をかけることになります。炎症が治まる前に刺激を重ねることで、症状の慢性化や筋組織の線維化につながる恐れもあるため注意が必要です。

マッサージは本来、身体を整えたりリラックスしたりするための手段です。施術後に「楽になった」ではなく「痛みが増した」「動かしづらくなった」という状態であれば、それは身体が休息や回復を求めているサインかもしれません。違和感を軽視せず、自分の身体の反応を正しく見極めることが、健康的にマッサージを活用するための重要なポイントといえるでしょう。

まとめ

強い力でのマッサージは、一見すると効果が高いように感じられますが、筋繊維の破壊や揉み返し、さらにまれではありますが、横紋筋融解症や神経・血管の障害などの重篤な合併症が報告されることもあります。身体のこりや疲れを感じたときこそ、過剰な刺激を避け、ストレッチや温浴、適度な運動を取り入れた安全なケアを心がけることが大切です。症状が続く場合や施術後に強い痛みを感じた場合は、早めに整形外科などの医療機関を受診してください。

参考文献

厚生労働省「医業類似行為に対する取扱いについて」

厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」

厚生労働省「慢性疼痛対策」

医薬品医療機器総合機構「重篤副作用疾患別対応マニュアル」

配信元: Medical DOC

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