スマートフォンを使う際は、部屋をある程度明るく保つこと、画面の輝度を調整すること、20分ごとに遠くを眺める「20-20-20ルール」を取り入れることなど、すぐに始められる対策があります。暗闇でのスマホ操作を控えるとともに、40歳以降は定期的な眼科受診も心がけましょう。焦らず、着実に目にやさしい習慣を取り入れていただければと思います。

監修医師:
柳 靖雄(医師)
東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。
暗闇でのスマホ操作を控えるべき理由|今日から始められる眼の健康習慣
眼の健康を守るためには、日常的な習慣の積み重ねが大切です。このセクションでは、暗闇でのスマホ操作を控えることに加えて、今日から実践できる眼の健康習慣と、症状が気になるときの相談先について解説します。
眼の健康を守るための日常習慣
スマートフォンを使う際は、画面と眼の距離を30cm以上保つことが推奨されています。近すぎる距離は毛様体筋への負担を高めるため、少し遠ざけて見る意識を持つだけでも眼への負担を軽減することができます。
「20-20-20ルール」という考え方があります。これは、20分ごとに20フィート(約6m)離れた場所を20秒間眺めるという習慣で、眼の調節機能を定期的にリセットするためのものです。スマホや画面作業が続くときにぜひ取り入れてほしい方法のひとつです。
意識的なまばたきも効果的です。スマホを操作しているとき、人は無意識のうちにまばたきの回数が減っています。意識的に目をパチパチとまばたきすることで、眼の表面を潤し、ドライアイの予防につながります。また、目を温める「眼温熱療法」は、眼の周囲の血行をよくして疲れを和らげる効果があるとされており、市販の温熱アイマスクなどを活用することも一つの選択肢です。
食事面では、眼の健康に関わるとされるルテインやビタミン類(特にビタミンA、C、E)を含む食品をバランスよく摂取することも大切です。ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、魚類などが該当します。特定の食品が緑内障を治すということではありませんが、眼の健康を全体として支える生活習慣の一部として取り入れることが望まれます。
症状が気になるときは眼科への相談を
日常的に目の疲れや痛みを感じている方、視力の変化が気になる方、あるいは暗闇でのスマホ操作の習慣が長い方は、一度眼科で相談されることをおすすめします。特に前述のリスク要因(遠視、40代以降、女性、家族に緑内障の方がいるなど)に当てはまる方は、症状がなくても定期的な眼科受診が重要です。
眼科では、眼圧測定や隅角検査、視野検査、眼底検査などを通じて、緑内障のリスクや現在の眼の状態を確認することができます。隅角が狭いことが判明した場合は、予防的な治療(レーザー手術など)が選択肢となることもあります。いずれの場合も、担当の眼科医とよく相談したうえで、自分に合った対応策を検討することが大切です。
急性緑内障発作が疑われる症状(激しい目の痛み、頭痛、吐き気、急激な視力低下)が現れた場合は、時間を問わず眼科を受診することが必要です。「少し休んでいれば症状が落ち着くかもしれない」などと自己判断して様子を見ることは絶対に避け、 緊急の受診を優先してください。眼の健康は、日常のちょっとした習慣と定期的なケアによって守ることができます。今日から一歩ずつ、目にやさしい生活習慣を始めていただけたらと思います。
まとめ
暗闇でスマートフォンを長時間操作する習慣は、目への負担(眼精疲労・調節緊張・ドライアイ)を増やす可能性があります。すべての方が急性緑内障を起こすわけではありませんが、もともと隅角が狭い方、遠視の方、40代以降の方、女性で家族に緑内障の方がいる方などでは、暗所での散瞳や就寝前のうつむき姿勢が、急性緑内障発作の誘因になり得る点に注意が必要です。
激しい眼痛・頭痛・虹視・急な視力低下が出た場合は、時間を問わず眼科(可能なら救急対応)を受診してください。症状がないうちからの定期検診で、自分の隅角の状態を把握しておくことが、将来の視力を守るうえで重要です。部屋を適度に明るくする、就寝前のスマホ使用を控える、画面の明るさを調整するなど、今日からできる環境改善から始めていただければと思います。
本記事で述べている「暗闇・うつむき姿勢と眼圧・散瞳」は、緑内障リスクのある方にとって注意すべき要素です。一方で、消灯後のスマホ使用と急性緑内障発症を直接結びつけた大規模研究はまだ限られており、スマホを使うすべての方が失明するわけではありません。不安がある方は、症状の有無にかかわらず眼科で隅角検査を受けることをおすすめします。
参考文献
日本緑内障学会「緑内障診療ガイドライン(第5版)」
東京大学医学部附属病院「眼科」
日本眼科学会「目の病気(緑内障)」
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