
教育家の小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えしてきた『小川大介先生の子育てよろず相談室』。その中から、特に反響の大きかったお悩みを漫画でご紹介します!
Aさんのお悩み








今年中学生になる娘の母親です。私の仕事が忙しかったこともあり、受験モードになれないまま娘は6年生に。当然ながら地元の公立中学に通うことになるのですが、最近久々に幼稚園時代のママ友に会ったら、知り合いのママの家庭はほぼ全員中学受験組という事実が判明しました。あるママに「中学受験させなかったんだー」というような発言もされ、私が仕事をしていて忙しかったせいで、「子どもにチャレンジさせてあげられなかった」と後悔の念に苛まれています。子どもはいたってのんびりしていますが、自分の「後悔している」気持ちや焦る気持ちを整理するためのアドバイスをいただきたいです。(Aさん・43歳)
■中学受験のために仕事を後回しにせねばと思い込むのはナンセンス
中学受験に関して、親が自分を責めてしまう悩みはとても多いです。相談者さんのように「自分のせいで受験させてあげられなかった」というのもあれば、受験させたけど「もっとうまくやれたのでは?」と悔やむケースもよく聞きます。これらは特にワーキングマザーが陥りがちな悩みで、「仕事が忙しいために子どものことが後回しになってしまった」と自責の念にかられてしまうようなのですが、これは全く悩む必要のないことです。なぜなら仕事をするというのは、家庭を維持する上でも必要だし、親である自分自身の自己実現としてもとても重要なこと。子どもの受験を理由に、親が自己実現を後回しにしなきゃいけないなんて全くナンセンスな話だからです。
受験学習に伴走することが可能かどうかは、家庭の事情によって違うため、そこはないものねだりしても仕方ないこと。家族との相談の結果、受験のために仕事を辞めるかたもいらっしゃいますが、それはそのご家庭の選択であって、中学受験がそういうもの、ということではありません。親の人生と子どもの人生はそれぞれが大切なのであり、他人と同じような環境に無理矢理合わせる必要なんてありません。
■仕事をしていたからこそ渡せた価値に目を向ける
仕事で忙しくて、受験の伴走はできなかったかもしれません。でも、「自分自身が忙しく仕事をしている」ということは、その仕事を通して親である自分が成長して学んでいることがたくさんあるということ。日々成長している姿を子どもに見せていること自体が、子どもにとっては掛け替えのない教育なのではないでしょうか。そこで渡せているものに、もっと自信を持っていいと思います。
また、仕事が忙しいということは、子どもが自分だけで過ごしている時間が長かったはず。自分のことは自分でやる機会に恵まれただろうし、マイペースで自分の好きなことをさせてあげられたことにも繋がります。これは仕事と受験を両立させようと奮闘していたら、絶対に得られなかった貴重な時間。仕事をしているせいで渡せなかったものではなく、仕事をがんばったからこそ渡せたものに目を向けましょう。
■マウントの取り合いとは無縁な小学校生活を過ごせたのは大きなメリット
中学受験はただの選択であり、どちらが良いとか悪いとかではありません。子どもによって向き不向きもあるし、それぞれにメリットデメリットもあります。
例えば中学受験のデメリットのひとつとして、マウントの取り合いに巻き込まれやすいというのがあります。毎週のようにテストに追われ、点数と順位と偏差値が出る環境に親子が置かれるため、「上のクラスのほうが偉い」とか「クラスが下がったらダメ」など、ものごとを一面でしか見られなくなる思考に染まる可能性が高いのです。実際、そういった一面的な思考でマウントを取りたがる残念な親子も存在し、そういった考え方に巻き込まれて傷つけられるリスクも多々。でも公立中学を選択したことで、そういったこととは無縁に、のんびりと小学6年間の時間を渡してあげられたはずです。そのことにまず安心していいと思います。
■成長に応じた適切な学習に取り組めるのも魅力
また、小学生にとっては難し過ぎて、かつ膨大な量の学習を強いられる中学受験では、学習に対して嫌悪感を覚えたり、自分に対して自信を失った状態で中学を迎えるということが一定の割合で起きてしまいます。対して公立中学進学組は、成長に応じた適切な学習をすることができるため、無理なく取り組める点も大きなメリットです。そして14~15歳まで育っていくなかで高校受験に向き合えるため、進学先を自分で判断して選択していくこともできます。
中学受験を選ばなかったことで不安になる気持ちもわかりますが、公立中学を選んだことで得られる価値も、間違いなくあることを忘れないでください。
■親が子どもの未来を作れるなんて大いなる勘違い
中学受験をしないと、大学進学や将来の仕事の選択肢が狭まるんじゃないかと不安がる人もいますが、そこに因果関係は全くありません。実際、東大をはじめとした難関大学と言われるところに進学している子どもたちの内訳は圧倒的に公立。私立でなければ不利になるなんていうのは幻想です。
そもそも受験を通して人生を進んでいくのは子どもであって、子どものキャリアを親が与えられるなんて思うこと自体がおこがましいのです。親ができることは所詮入口を用意することだけで、その後どんな中高生活を送るかは子どもが決めていくものです。子どもの人生は12歳以降のほうが圧倒的に長いわけで、それを中学受験の一時点だけを見て道が分かれたかのように考えるなんてナンセンス。受験をさせなかったことが、子どもの将来のチャンスを失わせたんじゃないかなんて思うのは的外れであり、そう思わせるような言葉を投げかけてくる中学受験組のママ友がいたとしたら、華麗に距離をおけばいいだけです。
子どもの未来は子ども自身が作っていくもの。親は所詮それを見守ることしかできないということは忘れないでください。
小川先生からの「大丈夫!」フレーズ
『仕事をがんばったから渡せたものもたくさんある』
娘さんが今、のんびりと楽しそうに過ごせていること。それだけ取っても十分価値ある時間を渡せてあげたと自信を持っていいと思います。子どもは自分で未来を切り開いていくもの。中学受験で将来が決まるなんてあり得ないので、受験しなかったことを悔やんだり焦ったりすることも無用です。
回答者Profile
小川大介先生
教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。
京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。著書多数。
漫画=きたがわなつみ/文=酒詰明子

