夫・和也は義母に騒動を報告しました。義母は「さおりは昔からああなのよ」とみつきを気遣ってくれました。一方、さおりは和也の「卑怯だ」という言葉に自己嫌悪に陥っていたのです―――。
義母の気遣いにも罪悪感が募る
翌朝、和也は義母に電話をかけて一連の騒動を説明してくれました。義母は、いつもと変わらない、優しくて温かい声で私を気遣ってくれました。
「困ったわね。さおりはいつもそうだから」
義母はそう言ってくれましたが、私は義実家を騒がせてしまった罪悪感が残りました。
【さおり視点】私が屈辱感でいっぱいになってしまった理由
私はさおり。あの日の翌日、都心の高層ビルにある自席で、キーボードに手を置いたまま、動けずにいました。兄・和也との言い争いが、耳の中で繰り返されます。
「匿名の誹謗中傷するなんて卑怯」
卑怯。その言葉が、私の胸を鋭く突き刺しました。 キャリアには自信があったし、何より仕事で成功したいと思いずっと全力で走り抜けてきました。そしてあの資格試験…。昨年、全力で勉強したのに落ちた。そして今年、私はなんとか合格で、育児の合間なんかで勉強した義姉は一発合格。
仕事に集中できる環境にある私が、育児に追われる彼女に負けたように思って、私の心は屈辱感でいっぱいになってしまったんです。
適当なフリーメールアドレスで勢いで作ったアカウントからコメントした時、一瞬、胸がスッとしたけれど、すぐに自己嫌悪が押し寄せた。こんな手段でしか、自分のプライドを保てない?そんな自分自身に、一番疲れているのは私だった。
どうして、素直に「おめでとう」「お互いにやったね!」って言えないんだろう。自分が持つ強烈な嫉妬心に、自分でもあきれていた。

