今の仕事を選んだのはなぜ?どんなルーツを辿ったの?学生時代の学びは今の職業にどう活かされている?今回は作家でもある、出版社・読書日和代表の福島憲太さんにお伺いしました。

「いつか作家に?」から本当に作家に! 作家になるまでを支えた「学び」とは?
風疹が大流行した翌年に生まれ、うまれつき視覚に障害があります。障害があると夢をつかみ取るチャンスは少ないと思われるかもしれません。そんな中で作家になるチャンスをつかみ取るために、私が行っていた学びとは?
ほめられる原体験
私は見た目で障害があることが分かりやすく、物心がついた頃から、周囲との関わりに悩むことが多くありました。そんな中でも、作文だけはときどきほめてもらえることがあり、自分に少し自信を持てるきっかけになりました。
特に印象的だったのが、帰省についてつづった作文を小学校6年生の担任の先生に「まるで旅番組のようだ」とほめられたとき。事実を淡々と伝える書きぶりが、よかったのだと思います。調べ学習で自衛隊について発表し、クラスメイトから好評を得たのも同じ時期でした。今では視覚に障害があっても実にさまざまな仕事で活躍されている方がおられますが、そのころは自身がほかの仕事で活躍するイメージは持てず、なんとなく将来は作家になりたいと夢を見ていました。
文法の力、磨いた小論文指導
文章力を大きく伸ばすきっかけになったのが、高校で受けた小論文指導でした。国語の先生からテーマを出していただき、小論文を書いて添削を受ける中で、原稿用紙の使い方や句読点の打ち方など、文章を書くための基本を一つひとつ身につけていきました。
幸いなことに、中学生の頃から英文法は得意で、文法のルールを理解し覚えることにはあまり苦労しませんでした。そうした積み重ねもあって、小論文と面接の試験を経て、当時、臨床心理学を学べることで人気のあった大学に合格することができました。
小説を執筆、最後のカギは?
大学卒業後、10年間会社員として働いたのち、作家に転身しました。転身のきっかけは、生涯をかけて取り組みたいテーマが見つかったからです。デビュー作は風疹について取材・執筆したノンフィクションで、このテーマの大切さを伝え続けたいという思いは、今も変わっていません。
私はノンフィクション、絵本、児童書、小説など、さまざまなジャンルを手がける作家ですが、小説を書くために作家養成スクールへ通いました。
そこでの学びを深める助けになったのが、それまでに見てきたアニメ作品です。スクールでは、読者の興味を引くための構成や、魅力的なキャラクターの生み出し方などを学びました。そのたびに、「自分が見てきたあの作品には、こんな工夫が施されていたのか」と、それまでに鑑賞してきた作品を思い返しながら学ぶことで、物語づくりへの理解をより深めることができました。
本が好きじゃないと作家にはなれない?
私は読書も好きですが、たくさん本を読むタイプかと言われると、そうでもありません。本は、必要だと感じたときに読めばいいと考えています。
作家の中には、漫画やアニメ、映画鑑賞が好きな人もいれば、古典芸能や絵画鑑賞を好む人もいます。また、私自身の印象では、理系分野への興味を作品づくりに生かし、独自性のある作品を生み出している作家も少なくありません。
子どもの頃に夢中になったものや、好きという気持ちは、将来どこで役に立つか分からないものです。もしかしたら、お子さんが今夢中になっているものや好きなことが、将来、作家への道につながっているかもしれませんね。
最後に
最後に中高生のみなさんにアドバイスするとしたら、進路に悩んでいる方にかぎりませんが、大切なのは心身の健康だと考えます。学校検診では皮膚科や整形外科、知的発達症などの検診がじゅうぶんでないため、これらの領域の病気や障害は見逃されやすい。私もとある病気の発見が遅れ、長く苦しんだことがありました。中高生になったら、病状を説明できます。気になる症状があれば、自分から病院に行きたいと伝えることも大切だと思います。
やりたいことが定まらなければ新聞を読んでみるのは、どうでしょう。新聞には政治、経済、スポーツ、エンタメなどいろいろな話題が載っていますね。そうした記事の中に興味をひかれる話題、驚いた話題、なんだか気になる話題はありませんか? そうした話題の中に、今後の進路へのヒントがあるかもしれません。
複数の選択肢で、迷っていたら、小さいころから興味があったもの、得意だったことの方が、成果が出やすい可能性があります。やりたいことをやるためには何が必要か、まず自分で調べてみるのもいいかもしれませんね。
執筆者

福島憲太
出版社・読書日和代表
1983年福井県武生市(現在の越前市)生まれ、京都市育ち。
うまれつき視力が弱くて目が見えにくい弱視だが、文章を書く人になりたいという昔からの夢を諦められず、佛教大学教育学部臨床心理学科を卒業後、一般企業等での勤務を経て2018年6月に読書日和を起業。
金子あつしというペンネームで執筆を続けるフリーライターという一面もあり、これまでに『風疹をめぐる旅~消される「子ども」・「笑われる」国~』『ひかりあれ!~二分の一成人式の前に家族について調べてみた~』『今日もゲームの世界にいます』(すべて読書日和刊)など5冊の本を発行している。
全ての出版物にテキストデータを用意して音声読み上げを可能にしたり、読み手に優しいフォントを使用したりと、視覚障害があるからこそできる「誰しもが読みやすい本づくり」を常に目指し、日々取り組んでいる。

