一日一冊読んでいるという“本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選んでレビュー。さらに“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作るコーナー。
今月のオススメはこちらです!
また、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長が新刊の中からセレクトする、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」もあわせてお楽しみください!
【元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリスト
アルパカ内田さんが今、売りたい本】
第58回 寺地はるな『きよくしぶとくやかましく』
ここはどこにでもある田舎町、白日町。老若男女が幸せに暮らしている─はずだった。ある夜、大きな物音を聞いた江南は隣の校長先生の家を訪れるが、そこには明らかに死体が! ところが町内会婦人部の面々が次々と集まり何故かお茶会が始まるのだった。「誰にだって、秘密を持つ権利があるんだよ」。平凡だからこそ人生は苦難に満ち、だからこそ皆笑っている。愛と笑いと秘密が渦巻く、寺地ワールド真骨頂の人間絵巻!
皆さん、こんにちは。どんな時も「はるな」忘れそ。アルパカ内田です。
喜怒哀楽に艱難辛苦。人間の営みを完全凝縮させ、読めば読むほど味わい深くなる物語だ。理不尽な社会、窮屈な日常には、いったい幾つの謎と秘密が隠されているのだろうか。言葉では説明のつかない感情の揺らめきを見事に言語化している筆力にまずは唸らされた。
舞台は平凡な田舎町。狭いコミュニティだからこそ、暗黙のルールという束縛が人を苦しめる。生きづらさの根幹にある、難易度の高い人間関係を、「町内会」という面倒な組織を軸に、大胆かつ繊細に描き切っている。ごく普通と思える日常にも、意外なドラマがある。どんな人間にも表と裏の顔があって、綺麗事に見える話にも、毒や棘が隠されているから、まったく油断ならない。
特筆すべきは構成の素晴らしさだ。無駄のないプロローグに始まって、ラストの余韻まで。海亀、たぬき、おおかみ、蛇、こひつじといった動物たちもストーリーに絡む点も可笑しい。受け継がれるおとぎ話から、現代の都市伝説のような空気を感じさせて、絵巻物を広げるように楽しめた。
この世を生き延びるためには、自然体がいちばん。笑い飛ばすことのできないブラックユーモアと、突き抜ける人間臭さが最高。不器用でも、ひたむきに生きる登場人物たちの姿が、僕らの実生活と重なって、抱きしめたくなるほど愛おしい。共感必至。寺地はるな文学の到達点であり、世代を超えて読まれるべき作品であることに間違いない。

アルパカ内田さんの手描きPOP。ご自由に使っていただけます。その際、こちらにご連絡いただけると幸いです

