本読みのアルパカ内田さんと、幻冬舎作品を誰より愛する営業部のコグマ部長。
2人が、幻冬舎の新刊の中からお気に入りを選んで、おススメしあう、本コーナー!
今月のコグマ部長のおすすめはこちら。
(あわせて、アルパカさんがコグマさんにおススメした作品についても、お楽しみください)
【幻冬舎営業部 コグマ部長から、
アルパカ内田さんへオススメ返し】
吉本ばなな『短いこの人生でいちばん大事なもの』
同じ女性と付き合っていた祐樹とエム。彼女が去った後、二人は奇妙な順序で急速に接近し─。「人にやさしく」他3編。人生の岐路に訪れる小さな怪異と奇跡を描く中編集。
一方こちらは、4つの中編からなる小説集。物語の名手による最新作だ。
「束の間」は、塾講師の僕・円が高熱を出した叔父の代わりに軽井沢まで別荘じまいに行く話。円はカミングアウトこそしていないが、叔父に恋をしている。軽井沢の別荘は、叔母が心臓発作で倒れた場所。そして叔父が悲しみを癒すためにしばらく滞在した場所でもあった。一緒に行くのは、円が日課のように通うダイナーで働く七という女友達。別荘で夜、七がふと言った。「この会話を何かがまだ聞いてる気がする」と。そして、その夜円は叔母の夢を見る。翌日、叔母が残した手紙も見つかり……。
4編ともに通じるのは、若い主人公がそれぞれの日常を過ごしながら、人生の岐路(あとからそれだと気づくのだが)に立ち、また互いの道を進んでいくというところ。読者は彼ら彼女らの日々を俯瞰して見ながら、人生の主人公は自分だという当たり前のことを幾度も思い知らされる。明日からもまた、日々は続く。眠りにつくときには、嫌だったこと、辛かったことを思い出してため息をつくのではなく、よかったことを思い出したい、そう思えてくる。
本作を読み終えたとき、「短いこの人生でいちばん大事なもの」という題名こそが、もっともふさわしいコピーであることがしみじみと伝わってくる。それぞれの「大事なもの」を守りながら生きていこう。

