
黒木メイサが主演を務めるHuluオリジナルドラマ「八神瑛子 -上野中央署 組織犯罪対策課-」(Huluにて毎週金曜最新話配信/全5話)。第3話では殺し屋・グラニソ(小島健)の襲撃によって、瑛子たちが激しい戦闘に巻き込まれる。家族を奪われたルイス・キタハラが胸に秘めていた覚悟、そして現場に現れた川上修平(池内博之)の不可解な行動…。真相へ近づくほど敵と味方の境界が揺らいでいく第3話を振り返る。
■それぞれの思惑が交錯し、最悪の事態へ
亡き夫・雅也(毎熊克哉)の死の真相を追う八神瑛子(黒木)は、「東京同盟マニラ」の違法薬物工場から逃亡してきたキタハラと接触する。キタハラは家族を奪った殺し屋・グラニソを排除することと引き換えに、瑛子が求めている情報を渡すと持ちかけていた。雅也の死と巨大犯罪組織「東京同盟」のつながりを探る瑛子にとって、キタハラは真相へ近づくための重要な人物と言える。
しかし秘匿されていたはずのキタハラの潜伏場所が「東京同盟」に漏れ、事態は急変。グラニソの襲撃によって、現場では千波組を巻き込んだ激しい戦闘が始まる。想定より早く危険が迫ったことから瑛子たちはキタハラを別の場所へ移そうとするが、なぜか本人がそれを拒否。瑛子が「私と一緒に行動して」と促しても、キタハラは「私はどこにも行かない」と譲らない。
それどころか自ら爆薬を身に着け、最悪の場合には命を捨てる覚悟まで決めていた。「どういうこと?」と問い詰める瑛子に、キタハラは「グラニソは私が殺す。邪魔するつもりなら撃つ」と告げる。キタハラが千波組へ近づいた目的は、身の安全を確保するためだけではなかった。彼は最初から、自らの手でグラニソへ復讐する機会を狙っていたのだ。
瑛子が「最初からそのつもりで、復讐のために千波組を利用してたってこと?」と問うと、キタハラは「あなたも同じでしょう。あなたの旦那の復讐のため、警察や千波組を利用してる」と返す。キタハラの言葉は、瑛子がこれまで取ってきた行動の本質を突くものだった。

■復讐の果てに瑛子を待つものとは…
第3話で印象的なのは、キタハラが単なる情報提供者ではなく、瑛子と“よく似た”人物として描かれている点だ。キタハラは家族を殺したグラニソへの復讐を果たすため、自分を守ろうとする人々さえ利用しようとする。一方の瑛子も、雅也の死を追うために警察の規律を破り、暴力団や情報屋、中国系マフィアと危険な取引を重ねてきた。立場は違っても愛する家族を奪われ、その真相と復讐だけを支えに生きているという点で2人は重なって見える。
だからこそ、キタハラから「あなたも同じでしょう」と指摘された瑛子は簡単に言葉を返せない。彼を“身勝手だ”と責めることは、そのまま自分自身に返ってくるからだ。これまでの瑛子は周囲からどれだけ疑われ、制止されても真相へ突き進んできた。
しかし自分と同じかそれ以上になりふり構わず復讐へ身を投じるキタハラを目の当たりにしたことで、初めて自身の行動を客観的に見ることになったのではないだろうか。
復讐を果たすことができれば、本当に失ったものへの思いは報われるのか。あるいは目的を果たした瞬間に、生きる理由そのものを失ってしまうのか。本作は犯罪組織の正体を追うサスペンスであると同時に、深い喪失を抱えた者が何をよりどころに生きるのかを描く物語でもある。
キタハラが命を懸けてグラニソと対峙する姿は、瑛子がこのまま復讐だけを求め続けた先に待つ未来を暗示しているようにも感じられる。彼との出会いが瑛子の行動を変えるのか、それともさらなる覚悟を固めるきっかけになるのかが今後の注目点だ。
■警察内部にも、瑛子の“敵”がいる
グラニソの襲撃を受け、現場には警察の応援も駆け付ける。その中で瑛子の上司である川上が取った行動が、新たな疑惑を生むことになる。川上は瑛子を救うためだったと主張するものの、その対応は敵を制圧することとは別の目的を感じさせた。むしろ“ボスの正体を隠す”ためだったのでは…と猜疑心を覚えずにはいられない。
新宿南署の五条隆文(高良健吾)も同じ疑問を感じたのか、川上を問いただすシーンがある。当然、川上の説明を五条は納得できない。グラニソは「東京同盟」のボスへつながる情報を持つ可能性がある重要人物であり、本来ならば身柄を確保して取り調べる価値があったはずだからだ。
川上が本当に瑛子を守ろうとしただけなのか、それともグラニソに語られると困る事情があったのか…。これまで川上が雅也の死の再捜査を認めず、瑛子の行動を厳しく抑えようとしてきたことにも別の意味が見え始める。
気になるのは、グラニソが戦いの最中に漏らした「ジョスコ」という言葉。思い当たるのは、キタハラがグラニソを誘いだすために自身の居場所を送った相手の名前が「Joshu」だった。川上の行動、ジョスコという言葉の意味、影のボスの正体…謎はまだ深まるばかりだ。
瑛子はこのまま孤独に復讐の道を歩むのか、信じられる仲間は見つかるのか。真実を求めるほど身近な人物への疑念が深まり、孤立していく展開が本作の緊張感を高めている。
裏社会だけでなく帰るべき場所だった警察さえ敵かもしれない状況で、瑛子が次にどのような一手を打つのか。第3話は、物語がさらに大きな闇へ踏み込んでいく転換点となっている。


