
ほんの数分、娘から目を離しただけだった。その短い時間が、家族の人生を大きく変えてしまう――。鳩ヶ森さんによる「犯人を予想する漫画『仮門』」は、10年前に起きた幼女失踪事件を軸に展開する本格ミステリーである。誰もが犯人に見え、誰もが何かを隠しているように映る緊迫したストーリーが、読者を静かな恐怖へと引き込んでいく——。
■たった数分で消えた幼い娘



物語は、穏やかな一家の日常から始まる。4歳の常見七海は、家の中に入り込んだテントウムシを逃がそうと庭へ出る。しかし、その直後に鳴った携帯電話の着信で母親が目を離したわずかな時間に、七海は跡形もなく姿を消してしまった。神隠しのような不可解な失踪事件は解決しないまま時が流れ、常見家だけが10年前で止まったかのような日々を送り続けていた。
10年後、七海の幼なじみだった徳原砂羽と白井圭樹が、幼稚園時代に埋めたタイムカプセルを手に常見家を訪れたことで、止まっていた時間が再び動き始める。不穏な空気の中、事件の真相へとつながる糸が少しずつ姿を見せていく。
■誰もが疑わしく見えてくる!?
本作を手掛けた鳩ヶ森さんは、2023年に「第2回朝日ホラーコミック大賞」漫画部門で大賞を受賞した実力派漫画家である。ストーリー作りで意識していることについて、「読者はもちろん、作中のキャラクターまでもが『え?そうなるの?』と驚くようなストーリー展開になるよう心がけています。自分で描くキャラクターすら騙してやろうという気持ちです」と語る。
その狙いどおり、登場人物の何気ない表情や言動が疑念を呼び、ページをめくるたびに新たな違和感が積み重なっていく。
■ホラー漫画家が挑んだ初ミステリー!その転機は?
ホラー作品で知られる鳩ヶ森さんだが、本格ミステリーに挑戦するのは本作が初めてだという。「子どものころから推理小説が大好きで、自分でも描いてみたいとずっと思っていたんです。でもその一方で、ミステリーは難しいですから、私には無理だろうとあきらめてもいました」と振り返る。
転機となったのは、大賞受賞後に編集者から漫画制作の基礎を学び直したことだった。「チャレンジしてみようという気持ちになれました。それがきっかけです」と、新たな挑戦への思いを明かした。
■日常の隣に潜む狂気
物語はまだ序盤ながら、すでに怪しい人物が次々と姿を現し、それぞれが秘密を抱えているような不穏さを漂わせる。その闇は事件と関係しているのか、それとも読者を惑わせるための罠なのか。鳩ヶ森さんが一貫して描いてきたテーマは「日常に潜む狂気」である。平穏な風景のすぐ隣に息を潜める恐怖を丁寧に積み重ね、読後に静かな戦慄を残していく。10年前、あの夜に何が起きたのか。そして犯人は誰なのか——。ページをめくる手が止まらなくなる一作だ。
■取材協力:鳩ヶ森(@hatogamori)
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