えっ!ハイヒールがアウトレットから消える!?
2020年代に入り、ファッションの主役は「コンフォート(快適さ)」へと大きくシフトしています。この大きな潮流を象徴する衝撃的な投稿が、X(旧Twitter)上で拡散され、女性を中心に大きな話題を呼んでいます。
老舗婦人靴ブランドのアウトレット店員から、「今シーズンからハイヒール(高ヒール)は定番品しか作らず、アウトレットに出回らなくなる」と聞いたというユーザーの投稿が、瞬く間に100万ビューを超える大反響となったのです。
この「ハイヒール消滅」とも受け取れる方針変更は、公式な発表ではないものの、「みんな本当にヒールの靴履かなくなったよね」という投稿者の実感に、多くのユーザーから共感が殺到しました。パンデミック以降の在宅ワーク増加、足の健康意識の高まり、そして職場での「ヒール強制」への批判といった社会的な背景が、この「ヒール離れ」を加速させていることは間違いありません。
グローバル市場のリアル:成長の裏で「高ヒール」は特別な存在に
では、本当にハイヒール市場は縮小しているのでしょうか。
グローバル市場で見ると、ハイヒールシューズ市場自体は2024年に436億米ドル規模と推定されており、今後も年平均成長率(CAGR)3.1%で成長を続けるという予測があります(Business Research Insights)。
しかし、この市場成長をけん引しているのは、従来の細いスティレットなどの高ヒールではありません。市場データの分析では、2024年現在、消費者の約60%がデザインとともに「快適さ」を優先しており、低ヒール(3~5cm)やブロックヒール、プラットフォームヒールといった安定感のあるシューズが主流となっているのです。実際、カネマツの新作コレクションも、ローヒールやフラットシューズが中心のラインナップとなっている傾向が見受けられます。
この背景には、国内の動向も影響しています。日本の高級履物市場は2024年に18.7億米ドル規模と推計されますが、今後成長する中(2033年には27.1億米ドル予測)、シェアを拡大しているのは、高ヒールよりも履き心地のいいスニーカーやフラットシューズ、あるいはサステナブル素材を採用した機能性シューズです。
老舗ブランドが「定番品のみ生産」にかじを切るのは、売れ残る非定番の高ヒールを削減し、在庫効率を高めようという、業界全体の「快適性シフト」への適応策と言えます。アウトレット店員の話は、まさにその変化を象徴しているのではないでしょうか。

