写真提供:PIXTA
「最近、昔より暑い気がする」と感じたことはないでしょうか。それは気のせいではなく、昔に比べ実際に気温が上がっています。特に近年、気温がどんどん上昇しているため、熱中症対策が必要です。この記事では、現在と過去との気温差や、熱中症対策のポイントについて紹介します。
日本の気温推移
日本の気温は昔に比べて上がっています。下の画像は日本における1991年~2020年の平均気温に対する差を表しています。
・黒線:平均気温に対する偏差
・青線(5年移動平均):長期的な動きを見やすくするため、その年を中心とした前後5年間の平均値を繋いだもの
・赤線:長期変化傾向
出典:気象庁「日本の年平均気温偏差の経年変化(1898〜2025年)」
気温の統計には「偏差」が用いられています。偏差とは、その年の平均気温と、ベースとなる1991年~2020年の30年平均気温の差です。例えば、偏差が+0.5℃だった場合、1991年~2020年の平均気温よりも0.5℃高かったことになります。
図を見ると年によって平均気温は大きく異なるものの、長期的に見ると気温は確実に上昇しているのがわかります。特に1990年以降の気温の上がり方が大きく、2019年以降偏差が0.5℃を上回っています。
さらに、2023年は+1.29℃と過去の記録を大幅に更新し、続く2024年は+1.48℃、2025年+1.23℃を記録しました。これらは統計開始以来の歴代上位を占める極端な高温であり、近年の気温上昇が一段と顕著になっていることを裏付けています。
確実に暑くなった日本の夏
次に、日本の夏平均気温偏差(6月~8月)を表す下の画像をご覧ください。
出典:気象庁「日本の夏(6〜8月)平均気温偏差の経年変化(1898〜2025年)」
1898年~1990年の間で偏差が+0.0℃を超えたのは8回だけでした。しかし、1990年以降は多くの年で偏差が+0.0℃を超えており、さらに2010年以降は+0.5℃を超える年が多くなり、特に偏差が大きかった2010年は、偏差が+1.0を超えています。
さらに近年の推移を見ると、夏の高温化は一段と顕著になっています。2023年には偏差が+1.76℃となり、続く2024年も+1.76℃、さらに2025年は+2.36℃となるなど、これまでの記録を大幅に塗り替える猛暑となりました。
また、日本近海の海面水温も気温と同様に上昇しています。
出典:気象庁「日本近海の全海域平均海面水温(年平均)の平年差の推移」
日本を囲む海面の水温が上昇していることで気温が下がりにくくなり、気温を底上げさせる原因となっています。統計データからも日本の夏は確実に暑くなっていることがわかります。
過去に比べて熱中症のリスクが上がっている
昔に比べ気温は上がっているため、熱中症のリスクも高まります。下のグラフをご覧ください。
出典:厚生労働省「熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和6年)」「熱中症の死亡数の年次推移-平成6年~平成25年」を基に筆者作成
1994年から2024年までの熱中症による死者数の推移によると、昔に比べ熱中症による死者数は増加していることがわかります。近年は、2023年や2024年といった気象庁の気温観測統計開始以来の記録的な猛暑に伴い、高い水準で推移しています。また、夏の平均気温が平年に比べて著しく高い年は、熱中症による死亡者数も増加するという相関関係があります。
また、熱中症による死者の多くは65歳以上の高齢者です。今後も高齢化と気温上昇によって、さらに熱中症の被害は深刻になることが想定されます。
熱帯夜も増加し、夜中の熱中症リスクも高まっている
近年は夜間の気温が下がりにくくなる「熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上の日)」の年間日数も増加しており、夜中や室内における熱中症への警戒が一段と重要になっています。
出典:気象庁「全国(13地点平均)の熱帯夜の年間日数」
※ここで用いられている地点は、都市化によるヒートアイランド現象の影響が少なく、長期の観測体制が整っている全国13地点(網走、根室、寿都、山形、石巻、伏木、銚子、境、浜田、彦根、多度津、名瀬、石垣島)。棒グラフ(緑)は各年の年間日数(13地点における平均で1地点あたりの値)、折れ線(青)は5年移動平均値、直線(赤)は長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)を示す。
グラフを見ると年ごとの変動はあるものの、長期的には100年あたり約21日の割合で増加しています。特に近年の増加傾向は著しく、2024年と2025年は年間40日以上を記録するなど、過去に比べて夜間の暑さが厳しさを増しているのがわかります。
日中の熱中症対策はもちろん、夜間の熱中症にも注意しなければなりません。
熱中症の症状は…
熱中症は、高温多湿の環境下にいることで体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調整がうまく働かなくなり体内に熱がこもる症状です。屋外だけでなく室内でも発症します。熱中症になると下記のような症状が現れます。
・めまい
・立ちくらみ
・生あくび
・大量の発汗
・筋肉痛
・筋肉がけいれんする
さらに状態が悪化すると下記のような症状が現れます。
・頭痛
・嘔吐
・集中力低下
・判断力低下
・倦怠感
・虚脱感
病状が進むと死に至ることもあるため、熱中症にかからないためには早めの対策が必要です。
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熱中症対策のポイント
熱中症に備えるためには正しい知識を身につけることが大切です。ここでは、熱中症対策のポイントを下記の順番で解説します。
・熱中症が発生しやすい時期を知る
・熱中症予報の活用
・日常生活で意識したい熱中症対策
熱中症が多いのは7~8月
熱中症に備えるためにも、まずは起こりやすい時期を知りましょう。下の資料をご覧ください。
引用:総務省「熱中症による救急搬送状況の概要」
グラフは、2008年から2025年までの5月~9月における熱中症による救急搬送状況です。例年7月(灰色)から8月(黄色)にかけて搬送人員がピークを迎えており、真夏に熱中症の発生が集中する傾向にあります。
また、梅雨時期にあたる6月(オレンジ色)についても、梅雨の晴れ間に気温が急上昇することがあるため注意が必要な時期です。さらに、この時期はまだ身体が暑さに慣れていないため、体温調節がうまく働かず、発汗による熱の放出が十分にできないことが原因で熱中症のリスクを高めます。
熱中症のリスクを減らすためにも、真夏を迎える前の初夏の段階から、段階的に身体を暑さに慣らしていく暑熱順化が重要です。
「熱中症予報」を活用しよう
熱中症に備えるため熱中症予報を活用しましょう。熱中症予報は、天気予報会社、気象庁、環境省など、さまざまな機関や会社が情報提供しています。
例えば、環境省では熱中症予防情報サイトで暑さ指数や熱中症警戒アラートを発表しています。環境省の「暑さ指数の予報」では、黄色のエリアが熱中症に警戒、オレンジ色のエリアが熱中症に厳重警戒、赤色のエリアが運動原則中止となります。黄色やオレンジ色になっている場合は熱中症に注意し、赤色になっている場合は屋外での行動を避けるなどの判断ができます。
「熱中症警戒アラート」時は屋外での行動控えて
また、特に熱中症のリスクが高い気温や湿度が予想されるときは熱中症警戒アラート・熱中症特別警戒アラートが発表されます。これらのアラートが発表されたときは、熱中症の危険性が極めて高い状況であるため、屋外での行動を控えたり、水分補給や暑さ対策をしっかりとおこないましょう。
日常生活で意識したい熱中症対策
下の表は、日常生活で意識したい熱中症対策をまとめています。
| 屋内 | 屋外 | 屋内と屋外共通 |
| ・扇風機やエアコンを使って温度調整をおこなう | ・日傘や帽子を使って直射日光を避ける | ・こまめな水分補給 |
| ・遮光カーテン、すだれ、打ち水を利用する | ・できるだけ日陰に入る | ・通気性のいい吸湿性・速乾性のある衣服を着用 |
| ・室温をこまかくチェックする | ・こまめに休憩する | ・暑いと感じるときは保冷剤、氷、冷たいタオルで体を冷やす |
表:筆者作成
近年における日本の夏は、統計的にもかつてない厳しい暑さへと変化しています。今後も、これまでにない暑さを経験する可能性もあります。熱中症で命を落とさないためにも、熱中症のリスクを理解ししっかり対策をおこないましょう。
※2023年6月26日作成、2026年8月3日更新。
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〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
気象防災アドバイザー(国土交通大臣委嘱)
田頭気象予報士事務所代表。愛媛の気象予報士・防災士。防災や気象関連の記事執筆をはじめ、テレビ番組の監修、防災教材開発などを行う。BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。
