アルコール性肝障害は、「脂肪肝→肝炎→肝硬変」という3つの段階を経て進行します。初期の脂肪肝は自覚症状がほぼなく、断酒によって回復が見込める時期です。中期の肝炎では発熱や黄疸が現れ、末期の肝硬変では肝臓の組織が硬く変化して元に戻らなくなります。それぞれの段階でとれる対応が異なるため、早めの気づきが大切です。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
アルコール性肝障害の主な症状と見逃せないサイン
アルコール性肝障害は「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓の病気であるため、初期段階では症状がほとんど現れません。このセクションでは、段階ごとに現れやすい症状と、見逃してはいけないサインについて具体的に説明します。
初期から中期にかけて現れる症状
アルコール性脂肪肝の段階では、多くの場合に自覚症状はほとんどありません。そのため健診や血液検査で肝機能の数値(AST・ALT・γ-GTPなど)の異常を指摘されて初めて気づく、というケースが少なくないのが実情です。ただし、なんとなく身体がだるい、食欲が落ちた、疲れやすくなった、といったぼんやりした不調が出ることもあります。
アルコール性肝炎に進行すると、より明確な症状が現れてきます。代表的なものとして以下が挙げられます。
右わき腹から背中にかけての痛みや違和感
38度前後の発熱が続く
吐き気・嘔吐・食欲不振
黄疸(白目や皮膚が黄色みを帯びる)
全身のだるさや疲労感
これらの症状が複数重なって現れた場合は、アルコール性肝炎が疑われます。すぐに医療機関を受診することが大切です。
肝硬変・重症化で現れるサイン
アルコール性肝障害が肝硬変まで進行すると、肝臓本来の機能が大きく損なわれるため、より深刻な症状が生じます。腹水(おなかに水がたまる状態)、浮腫(足がむくむ)、意識障害や言動の変化(肝性脳症)、食道・胃の静脈が瘤のようにふくらむ食道静脈瘤、皮膚に赤い模様が出るクモ状血管腫、手のひらが赤くなる手掌紅斑などが知られています。
また、血を固める機能も低下するため、歯茎や皮膚から出血しやすくなることもあります。肝硬変の段階では、肝がんへの移行リスクも考慮する必要があり、定期的な画像検査(腹部超音波検査やCTなど)と腫瘍マーカーの確認が推奨されます。
こうした重症化のサインを見逃さないためにも、習慣的な飲酒がある人は、自覚症状がない時期から定期的に健康診断や血液検査を受けることが、肝臓の状態を早期に把握するうえでとても重要です。
まとめ
アルコール性肝障害は、初期段階では自覚症状がなく気づきにくい反面、飲酒習慣を見直すことで回復が期待できる病気でもあります。毎日の飲酒量を把握し、適正量を守り、休肝日を設けることが予防の基本です。症状が現れていなくても、習慣的な飲酒がある人は定期的な血液検査を受けて肝機能を確認することをおすすめします。気になる症状がある人や肝機能の異常を指摘された人は、早めに消化器内科や内科を受診し、専門の医師に相談してみてください。
参考文献
厚生労働省「アルコールと肝臓病」
厚生労働省「飲酒に関するガイドライン」
日本消化器病学会「患者さんとご家族のための肝硬変ガイドブック2023」
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